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歪みの対処任務1-10

 こいつは何を言っているんだ、という聖羅の顔は面白かった。


 普段では拝めない貴重な表情だが、周囲の空気の違和感に柊を見上げてみると、笑いを堪えるように口角がプルプルと震えている。クラウスは歯を見せて笑い、執行会の二人は口を半開きにしている。


「お前は、どこかで頭をぶつけたのか?」

「ぶつけてはいないと思います。私の質問に答えてはくれないのですか、聖羅」

「い、いや……。まあ、美人ではあるな。私と同じくらいには」


 茶化す事さえ忘れた聖羅はそうとうに動揺している。


 これが香織の発言であれば、皮肉を交えて弄っていたが、馬鹿が付くほどの真面目なアレッタの発言ともなれば別だ。まさか、彼女が自分は可愛いか、なんて質問を真顔でしてくるとは思わなかった。流石の聖羅も急な対応に面白味も無い素直に返してしまったのだ。


 アレッタは「そうですか。ありがとうございます」と礼を述べて、柊に抱えられたまま何かを考え始めた。


 柊は考え事をしている相手には話しかけない主義なので、アレッタの真意に興味を抱きつつも黙って足を運ぶ。


 聖羅は聖羅で珍しく心配そうな視線を時折アレッタに向けている。


「柊。アレッタは普段はこんなことをいう奴だったか?」

「いや、言わなかったよ。初めてだ。でも、うん。年頃の女の子なのかな? 聖羅は自分で美人だと言うくらいだし」

「馬鹿者! 私のは冗談で言っている。それくらい察しろ。このくそ真面目なアレッタの言葉だから問題なんだ」

「冗談だったの? 誰が見ても稲神さんは綺麗だと思うけどね」

「クク、そういう言葉はアレッタに言ってやれ」


 腕の中の少女は恥ずかしさも忘れるくらいに思考に埋没している。教え子の微笑ましい成長と姿に誇らしくなり、先生と呼ばれる立場の自分ももう少しそれらしくあらねば、と意気込む。


「ああ、そうだ。おい、執行会。その魔法使いはどうするんだ」

「尋問してあの場に居た理由を聞きだす。後に魔法使いの役目や諸々も吐き出させるつもりだが。それが何か?」

「いいや。ソイツには返していない借りがあったんだが、どうしたものかと思ってな」

「諦めろ。コイツが生きて神殿から出る事は無い」

「クク、最後には殺すのか。神様ってのは随分と慈悲もないんだなァ」

「悪に慈悲は必要ない。お前等にもな」


 カレッジは四人の魔術師へ視線を順々に。


「緊急時の協定の効果が無くなったのかね?」


 クラウスの言葉にカレッジは首肯した。


「歪みは消失した。神殿本部には魔術師の活躍によるもの、と報告はしておく。だが、それで魔術師狩りが減るわけではない。あくまでも緊急時の共闘。友情意識なんか芽生えられても迷惑だ」

「せっかく仲良くなれたんですよ、先輩。もうちょっと優しい言葉とかあってもいいじゃないですか。特にアレッタちゃんはお友達です。稲神は死ねばいいですけどね!」

「クク、私の顔が見たくないなら、逆に死んだらどうだ? 神様の下へ行けるんだ。道中の手助けならしてやる。なんなら、大好きな先輩とやらもまとめて送りつけてやろうか?」


 聖羅の挑発に乗っかるフォークスの富頭上に拳を落としたのはカレッジ。涙目で猛抗議をするが、軽くあしらう。鬱陶しそうに。そんな聖職者二人のやり取りはコスプレをした漫才師のようにも見える。


 聖羅もクラウスから程々にしておくようくぎを刺されるが、素直に頷く性分じゃない。


 麓の村に出るまでに時間はかかった。


 既に日は暮れていて、消耗しきっている全員にとって、村の明りに駆けだしたい思いだった。

こんばんは、上月です



次回の投稿は6日の21時を予定しております

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