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歪みの対処任務1-4

 ここら一帯の植物たちは沈黙に徹していた。


 アレッタがどれだけ語り掛けても、一輪の花も応えてくれない。


 事情を知らないフォークスとカレッジは、アレッタの行為が理解できず、互いに顔を合わせては哀れむような視線を向けた。このままでは彼女の名誉に関わるので、柊が簡単な事情を説明した。流石に直ぐには信じられないのは当然だが、フォークスは直ぐに顔色を変えて、興味深く、アレッタを観察し始めた。


「あれも魔術の成せる神秘の一端か?」

「魔術によるものであるならば、僕が欲しいくらいですよ。残念ですけど、植物と話せるのはアレッタくらいです」

「だが、返事は芳しくはないようだ」


 何度も何度も問いかける。


 行く先々で花や草、木にも、先程の現象について聞いて回るが、やはり返答は得られない。ただ闇雲に探し回っていては埒が開かない。歪みに近付けば、経験豊富な柊やカレッジが直ぐに中心点を見つけ出せる。そこまでの道案内としてなんとしても力になりたいアレッタは、挫けずに根気強く話しかけていく。


「きっと、きっと答えてくれます。ただ、この子たちの色、みんな暗い青をしてます」

「さっき話してくれた、植物の感情が分かるというやつか」

「青系統は確か」

「はい。恐怖や悲しみの色です。私と会話をしてくれないのも、これが理由かもしれません」


 カレッジも柊も足を一度止めて考えるそぶりを見せた。


 フォークスは相変わらず好奇心が抑えられないといったようで、アレッタをまじまじと観察している。観察されているアレッタはフォークスの視線も気付かづに語り掛け続ける。


「この達みんな、という辺りが引っ掛かる」

「歪みの存在に怯えている、ということかな」


 周囲の異界化による常識の歪曲。


 歪みが現世にもたらす影響を考えれば、植物達がそれを悟っていてもおかしくはない。そこで柊は一つ、試す価値のある考えを思いついた。


「アレッタ。花達の感情は、たしか色の濃さによっても変わってくるんだよね?」

「えっ、あ、はい。そうです。暗い色が濃くなればマイナスに、明るく鮮やかであれば、よりプラスに」

「じゃあ、周囲を見渡してみてくれるかな」


 柊に言われるまま周囲の花たちを見渡した。


「より暗い色をしてるのは、どの方角」

「あっちです!」


 アレッタが柊の意図を読み取ったのと同じくガレッジも勝機の笑みを浮かべた。


「歪みに近付くにつれて、花達は恐怖の色合いを濃くしていくと思ったんだけど、どうやら読みが正しかったようで良かったよ」


 アレッタは柊の発想を素直に受け止め、喜んだ。


 色の濃度が見えていたにもかかわらず見落としていた自分。この場の誰もが良き案が浮かばない状況で、柊はアレッタの能力を活かす提案を示した。やはり彼は素晴らしい人だ。一見弱弱しい印象を受けるが、実際にはよく考えている。そんな彼をただ一人、先生と呼び慕う自分が誇らしくもあり、自分と彼の唯一の関係性が特別に思える。


「アレッタどうしたの? なんだか顔が赤いよ。表情もむず痒そうだし」

「ふふ、なんでもありません。それより、急ぎましょう。歪みがどんどん成長してしまうんですよね?」


 アレッタが先導し、他三名は一層の警戒に励む。


 次第に花の纏う色は青から黒に変色していった。実際の花弁はとても美しく咲いている。ただ、実際の命は失われていた。こんな姿の花達をアレッタは初めて見た。


 これが歪みの成す異界化。


「近い、です」

「だろうな。ここまで来れば、案内無くとも居場所が特定できる」

「うん。大規模……とまではいかないけど、強大だね。これ以上の成長は本当に手が出せなくなる」


 柊とカレッジが同時にアレッタの脇を走り抜けた。


 置いて行かれたフォーカスと共に、彼等の背を見失わないよう、生い茂る草を押し退けて走る。


 肌を草で斬ってむず痒いが、それは無視して、二人に追いついた先は視界が開けた場所。


「どういう事だ」

「おかしい」


 朽ちた民家が点々と並び、そのなかの一軒だけが木っ端みじんに崩落していた。


「ここって、元居た場所じゃないですか! つまり、最初から歪みは此処に在ったってことですか、先輩」

「そうなる。だが、柊殿が言ったようにおかしい。なぜ最初、元居た場所に歪みが発生しているのにもかかわらず、誰一人として気が付かなかったのか、だ」

「すでに、僕等は異界化の中心点に居た。歪み周囲は全ての常識が歪められる。つまり」

「ああ、なるほど。そういうことか」


 柊達が歪みを探知できるのは、異界化の外から空気の流れの変化を感じとった場合。最初から異界化の中心点に居れば、そこは多少の違和感を覚えても、まだ外側だと認識してしまう。森を彷徨っていたので、中心地から外れたお陰で異界化の中心地を探れた。


「ごめいとう。流石は優秀な魔術師と執行会だ」


 気怠い拍手の先に視線が向けられた。


「そこの銀髪の子は久しぶりだね。稲神の彼女は元気かい?」


 その男に見覚えがあった。

こんばんは、上月です



次回は17日の21時を予定しております!

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