表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/186

脅威に抗う為の脅威1-4

 神とはいつ、誰が、どうして作りあげたのだろうか。


 日本の学生は受験期になると神社に手を合わせる。志望校合格を神様にお願いしたりもする。もちろん神という存在は日本だけでなく、海外にも信仰の数だけ存在している。


 これはひょっとして、神様という存在は、人の深層心理に宿っているのかもしれない。


 アレッタは神の存在を容認してはいない。


 神が存在しているのであれば、どうして自分はあんな仕打ちを受けて来たのか。


 フォルトバイン家で過ごした幼少期は苦痛に押しつぶされそうになる毎日で、生まれてきた事さえ後悔していたくらいだ。もしかすると神様というのは性格が曲がっているのかもしれない。もしそうだとするならば、稲神聖羅よりも質が悪い。


「概念、だと……」


 信仰者全員を敵に回す発言を柊は臆せず口にした。


 それも、信仰会の中でも狂信的な暗部の面々を前にして。


「僕は姿を見たことが無いんだ。神様というのは、恥ずかしがり屋なのかな?」

「下界の人間共に姿を見せるはずがない。絶対的な頂きに位置する者が下位の生物を直接管理はしない」

「管理はしない? 見ているだけ? キミ達は努力もせずに祀り上げられる者の為に、同種である僕等を殺して回っていると?」

「頂に神を据えるのであれば、下位はそれに見合った治世を敷くべきだとは思わんか? 柊春成」

「下界には下界の治世がある。それは、僕等人間が長い年月を経て築き上げた治世だよ。それを無理やり壊せば人は無法に晒されて品位と尊厳を失うとは考えない?」

「柊、お前は言ったよな。人間は不完全であると。ならば絶対的な神の治世を敷いてやることこそが救済だと、考えに至らんか?」

「至らないよ、僕はね。僕はこうも言ったよね。神とは、不完全な人間が作り出した概念だって。不完全な人が生み出した、より不完全な存在が生み出した治世は、人の理に劣っていると思うんだけどなぁ」


 柊らしからぬ泥の掛け合いだ。


 理性的でない。相手の意見を真っ向から否定する彼の姿勢にはやはり違和感しか抱けない。


 一見して普段通りの穏やかな彼ではあるが、長い年月を共にした二人の統括者と、他人に怯えてご機嫌伺いをしていたアレッタには、その機微な違和感の正体を突き止めるのに時間はかからなかった。


「柊殿、それくらいでいいんじゃないか。話が進まない。儂たちは神の存在否定をするために集まったわけではないだろう。キミの同胞を悼む気持ちも、怒りも、しっかりと伝わっているよ。だから、あとは儂に任せてくれないか」


 クラウスが柊を遮った。


「……ええ、すいません。熱くなってしまいました。そうですね、冷静を欠いた僕ではだめですね。よろしくお願いします、クラウス殿」

「よろしくされました。さて、そちらのエラブル殿もよろしいかな。ここからは、統括者代表の儂と口を交わしてもらうよ」

「誰が相手だろうと、我等は方針を変えるつもりは無い」

「そうだろう、そうだろう。簡単に方針を変えられては、その程度の意志によって同胞が殺されたとは思いたくないからね。だからこそ、じっくりと時間を掛けたいと思っている」

「貴方も人の話を聞いていない人だね。我々には無駄にする時間は無いと先程、確かに伝えたと思いますが?」

「ああ、これはいかんな。許されよ、エラブル殿」


 豪快に笑うクラウスも話を進める気があるのか、と信仰会側からは非難の視線を受けるも気にした素振りは見せない。


「では、単刀直入に。これ以上、魔術師狩りが盛んに行われる場合ですがね、此方も黙って指を咥えてみているつもりは無い、とだけ言っておこうか」

「では、信仰会の人間を殺すか?」

「それではキミ達と同レベルになってしまう。儂はただ、何かをするつもりでいるがね。その手段を口にすれば対策を講じられてしまうから言う気はないなぁ」


 いったいどんな策なのか。


 事前の打ち合わせでは何も聞かされていない魔術師側も、眉根を寄せて首を傾げる。


 統括者二人さえも共有されていない手段に、信仰会側は警戒心を植え付けられた。


 現在、魔術師の中で敵に回してはいけない人物こそがクラウスなのだ。何をしでかすのか全く予想がつかず、十数年前にも執行会から数十人が纏めて信仰会側が運営する病院に搬送された。彼の魔術がもたらす奇跡も報告がバラバラで、魔術理論さえも確固とした有力な情報を得てはいない。ただ、相手にしてはいけない。未知数な実力が彼の言葉に重みが増していた。


「まあ、一つ言えることは、裏社会の勢力全体が大きな損失を被るといったところかな」


 裏社会の勢力全体とは、魔術師、信仰会、飢えた狼、魔法使いを差す。


 本格的に何をしでかすか分からなくなった。その規模も。


 アレッタには、今のクラウスが破裂寸前の水風船に見えていた。


 破裂すれば水が至る箇所にぶちまけれられる。水であれば大した問題は無いが、魔術という神秘がたらふく詰まった風船であればそれは脅威だ。


 ヨゼフィーネや柊でもクラウスの魔術の神秘を詳しくは知らない。


 普段は魔術式に頼って生活をしているから、彼の魔術をお目にかかる機会が無いのだ。

こんばんは、上月です



体調不良の為、6日の21時に変更します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ