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贈るは鈴蘭の花1-5

 柊は昼に全員を居間に集めた。


 集合してもらった理由はもちろん、柊が言った、良い事、の件だ。


 アレッタさえも知らされていない柊からのサプライズ。いったい何が起こるのか。集まった四人はただジッと目の前でニコニコとしている青年を見つめる。


「うん。全員集まった所で」


 そう言って、柊はアレッタに一瞬だけ視線を向けて続けた。


「キミ達は仲がいいね。凄く良い感じだと僕は思ってる」

「おい、面倒な遠回しはいい。さっさと要件を完結的に言え」


 余計な個所を省きたがる聖羅に、苦笑ひとつしてしょうがないと言った風に話を一度着る。


「四人には極秘任務に就いてもらおうか、と統括者三人で意見を交わしていてね。だけど、三者とも意見が分かれてしまっている。クラウス伯は是非やってみてもいいと言っているんだけど、ヨゼフィーネ殿はまだ時期尚早だと押し留めようとしている。キミ達の日々の成長を見てクラウス伯にも頷けるし、やはりまだ早いかな、っていうヨゼフィーネ殿の意見にも頷ける」

「つまりは、どっちつかずだから、私達の意思決定に委ねようとしているわけか。クク、優柔不断は嫌われてしまうぞ」

「私は嫌いません!」


 聖羅の発言に即時反応したのはアレッタだった。


 何があっても柊を慕うつもりだ。この先も彼と肩を並べて世界真理探究に邁進すると決めている。


「話がそれちゃってる。聖羅、駄目だよ。今は柊さんが真面目な話をしているんだ。しっかり聞かなきゃ」

「さっすが、幹君。偉いぞ~」


 ヨシヨシと背伸びして幹久の頭を撫でる香織。彼は彼でまんざらでもないのはいいのだが、段々と収拾がつかなくなる状況に、また苦笑を浮かべてどうどう、と一人一人を窘める。


「えっと、まあ、任務内容は少々危険が伴ってね。もしかすると、執行会、もしくは飢えた狼と交戦する可能性がある。随伴させるならアレッタと聖羅だけで良いと思うんだけど、クラウス伯がせっかくだから魔術四家を向かわせた方が、他の魔術師達の宣伝効果になるって。そこは僕的には賛同できないんだけど、一応、意思決定に委ねる事で話がまとまったから、ね。津ケ原君も久世さんも戦闘に向かない魔術理論だから、僕個人的な意見では二人に残って欲しいんだ」


 柊の言葉に疑問を抱いた聖羅がまた口を開いた。


「随伴と言ったが、誰に随伴するんだ?」

「クラウス伯と僕の随伴。本来この任務は僕とクラウス伯の共同任務なんだけど……うん。そこでクラウス伯がね」


 どうせなら魔術四家を連れて行こうと言い出したわけだ。


 AAランクの任務にAランクの魔術師が同行するわけだから、それは命が幾つあっても足りないかもしれない。アレッタは申し訳なさそうに小さく挙手をした。


「柊先生、申し訳ありません。私は行きたく……ありません。聖羅や津ケ原さん久世さんも同行させたくありません」


 大好きな人達を死地に向かわせたくはない。


 聖羅が実力で皆を守るなら、自分は死地へ足を向けそうな彼等を引っ張って押し留める。


 アレッタの言葉を聞いた柊は安堵したように頷く。


「その方がいいかも」

「まあ、待て。私は行くぞ。飢えた狼は謎が多い。ならば識る事が魔術師としての私の生き方だ」


 貪欲に知識を欲する聖羅の瞳に熱がこもる。


 説得の言葉を模索して聖羅の前に立つ。


「死んじゃったら、世界も知らない事も、識れなくなります! AAランクの任務は私達には荷が重すぎます。忘れてはいないはずです。半年前の学院での任務を」


 聖羅もアレッタも危うく死にかけた。


 自分たちはまだまだ未熟だ。せめて数年の下積みを経てからでも遅くはないはずだ。幹久と香織は柊が先程言ったように戦闘に適してはいない魔術師だ。自分たちはまだ自己防衛の術を備えているが、彼等は魔術式だけが頼りとなる。


 必死の説得。


「……ああ、覚えている。だが、あれからの半年。私は実戦を想定した魔術訓練を積んだ。この誘いはな、アレッタ。私からしてみれば成長確認なんだよ」

「まだ、まだです! まだ聖羅は成長します。中途半端は貴女の主義ではないはずです! なぜ、そうまでして……昨夜もそう」

「――アレッタ!」


 聖羅の一喝だけで言葉が喉につっかえる。


「私は中途半端で死んでやるつもりは無いんだよ。世界真理を識る。識った先に何があるのかを見たいんだ。大丈夫だ。私はお前よりかは強いよ」

「わかりました。では、私を倒してください。聖羅が本当に死なないほどに強いか試します」


 場の空気が変わった。


 睨み合う二人。残った三人は固唾を飲む空気と化した。


「聖羅。私を殺す気で、本気でぶつかって来てください。中途半端では死にますよ」

「ほぅ。いいだろう。私を止めたいのであれば、お前も殺す気で来い。さもなくば、私はお前を踏みつけてでも先に進むぞ」


 互いの魔力が流出を始める。


 一方は冷風を思わせる鋭利な魔力。


 一方は穏やかな流れに任せる春風の魔力。



「あ、うん。いいかな。間違っても庭園や屋敷内では始めないでね。それと、棄権だと判断したら僕が全力で止めるから。その際に、怪我をさせてしまうかもしれないけど、死なれるよりかはいい」


 柊が釘をさすが、にらみを利かせ、魔力を反発させる二人の耳に届いているかは分からない。


「明後日、シェルシェール・ラ・メゾンの中庭でどうだ」

「そうですね。あそこなら私も全力を出しやすいです」


 とんだ流れに話が進み始めたな、と柊は頭を掻いた。

こんばんは、上月です



次回の投稿は来週の日曜の同じ時間を予定しております!

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