聖羅と探求する失踪事件の謎1-12
一つの白い球形状の発行体が暗闇に浮かんでいた。
あれは一体、誰なのだろう。
球形の発光体を見て、それを人だと認識した自分の脳はどうかしてしまったのだろうか。
球形はその場にプカプカと浮かぶだけでこれといった動きを見せない。アレッタはその球へと手を伸ばした。伸ばしたが届かない。自分とソレの距離が開きすぎている。それでも懸命に掴み取ろうと必死に伸ばしていると、笑い声が聞こえた。
「そんなに私とお話がしたいんだ」
聞いたことある声だった。
「その声は、アニエさん、ですか?」
「ご名答! 本来の私と会うのは初めてだよね。初めまして、私はアニエ・コリンズ……っていちいち自己紹介しなくても知っていたか」
「いえ、ありがとうございます。私はアレッタ・フォルトバインです。えっと、本当にアニエさん、なんですよね?」
「そうだよ。悪魔に食べらた残留思念だけで生き長らえている……いや、死んでるけど。うん。意識だけはちょっとだけ残っちゃってる感じ。分かる?」
正直分からない。
分からないのは理屈であって、彼女の言っている事は理解している。今のアニエは、魂の食べ滓なのだ。言葉は悪いがそれが一番しっくりとくる喩え。次期に消滅するだけの結末。そのことをアニエは知っているのだろうか。
「迷惑をかけちゃった。他の生徒やアレッタちゃん達にも。迷惑を掛けた身としては頼みにくいんだけど、先生、アランママンをどうか助けて欲しい。先生は悪い奴に唆されたの。もう歯止めが利かなくなってきてるから、早めに止めさせないと、本当に後戻りが出来なくなる」
「悪い奴、ですか?」
「アレッタちゃんと同じ魔術師」
この事件の根幹に潜んでいるのが魔術師だと聞いて胸が痛んだ。
魔術師は自分と世界の折り合いを見つける為に、世界真理を探究する学者だ。それなのにどうしてこんな酷い事が出来るのか。本来の魔術の遣いから逸脱した外道。きっと、シェルシェール・ラ・メゾンの情報網を使えば、ソイツは直ぐに見つかる。
「どんな方、ですか? その、魔術師は」
アニエは返答しない。
沈黙だけがアレッタの鼓動を急かす。
「黒い闇。底なしの奈落。生への虚無。私にはそういった印象を受けたよ。印象ばかりが強くて外見が思い出せないの。ただ、あの人は常軌じゃないって直感で分かった」
「ありがとうございます。正体はこちらで調べてみます。その前に、ここは何処ですか?」
今更な疑問を口にすると、白い発光体は笑っている様に上下に動く。
「死に掛けが来る世界だったり? 私もいつかはこの闇に溶けて消失するんだ。アレッタちゃんは、まだこっちに来ちゃだめだよ。先生の仇を取って欲しいからね!」
「必ず、必ず、アニエさんとアランさんを巻き込んだ張本人に罪を償わせます。だから」
「うん、それだけで大丈夫。よろしくね。アレッタちゃん」
球形が放つ光が増していく。
闇を逆に光が呑み込んでいく。真っ白に眩くて温かな光。自分が帰るべき道を照らす光を歩き出す。帰らなければいけない。意識を失う寸前に叫んだ聖羅が気になる。聖羅のことだからまだきっと生き長らえているに違いない。
今回の任務はまだ自分達には早すぎたのかもしれない。
本来は失踪事件の原因究明が内容だったはずだ。それが、どうしてこんな事が大きく膨れあがっているのか。
「待っていてくださいね、聖羅」
未熟な自分を悔やむのは全てが片付いてからだ。自信家の聖羅も今回の件は堪えているはずだ。唯我独尊を貫く破綻した天才が、思うように事態を勧められなかったのだから。
アレッタの意識は光に溶けた。
こんばんは、上月です
次回の投稿は21日の21時を予定しております




