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聖羅と探求する失踪事件の謎1-7

 ふてぶてしい顔をした聖羅が悪態をぶつぶつと呟いていた。


 アレッタは深く頭を下げて己の不甲斐なさを素直に認めている。


 対照的な二人に学校責任者であるアランは深刻そうに口を真一文字に結んでいた。それはそうだ。昨夜、新たな行方不明者を出してしまったのだから。学校側としては親からの監督責任等々を問われ、教育委員会を始めとした政界関係者から非難を覚悟しなければならないからだ。


 新たな失踪者は、タリア・ヒュートン。


 聖羅に失踪事件の情報を握らせた少女だ。彼女の成績は下の下だったという。ある共通点を見出した。失踪した女学生に深い繋がりは無くとも、成績が非常によろしくないという共通点。


「起きてしまった事は致し方ありません、と片付けられたらいいのすけどね。私達、教職員も各方面への対応でもはや授業どころではありません。私もこれから委員会へと顔を出さなければならないでしょう。きっと、今の職を解かれます」


 アレッタは深く頭を下げた。


 目の前で起きた失踪。裏社会に精通している魔術師が二人もいて原因不明の行方不明では話にならない。自分たちの派遣には決して少なくない額が支払われているはずだ。相応の働きをしなければならないはずだった。結果は何も得られなかった。


 そんな無能に誰が継続を頼むだろうか。


「子供にこのようなお話はすべきではありませんが、正直言わせていただくとね、ガッカリしました。魔術師あなたたちならきっと解決してくれる。これ以上の被害を出すことなく、この学校に平穏をもたらしてくれる。そう思っていたのですが……本当に残念でなりません」

「申し訳……ありません。私が不甲斐ないばかりで」

「あれは変だ。魔術でも奇跡でもない、異形や悪魔の気配も感じなかった。草の青臭さが私は嫌いだよ」

「稲神さん! お願いです。頭を下げてください! これは私達の失態です。仕事にはきっちりプロとして従事してください。お願い……稲神さん」


 顔を上げたアレッタは涙で表情はグズグズだった。


 自分が追う責任の重さを自覚しろ。


 アレッタの眼はそう強く訴えていた。聖羅は長い溜息を吐いて、机越しに此方を睨み付ける普段が穏やかな女性を睨み付け返す。


「いいか、こっちは手探り状態だった。敵の正体も知らない、手段も不明、この学校全体をたったの二人だけで対処しろだと? 無理に決まってるだろうが。お前は何か策を講じたか? 大事な生徒が犠牲にならない為の思考を働かせたのか?」

「策はあなた達よ」

「クク、三流だな。一流の回答じゃあない」

「では、お聞かせ願える?」


 元が穏やかな作りの顔付きであるアランは、そろそろ本当に不機嫌そうに姿勢を前のめりにして食いつく。聖羅はせせら笑って口角を大きく歪めてみせる。


「カメラを回せ、人員を配せ、教職員自らが深夜巡回をしろ。不用な部屋には徹底した施錠。まさか、この学校に当直の教員はいないのかぁ? このうら若き未成年の少女が暮らす校内に? クク、こいつぁ滑稽だ。その程度の思考しか働かない奴が教職員だと? 笑わせてくれるなよ」

「カメラの設置は人権問題にかかわります。警備課の人間も配してしいました……」

「ほぅ、何人だ?」

「…………」

「クク、答えられないよなぁ。私だったら恥ずかしくて二人だけなんて言えないぞ。昨日の調査で色々調べたが、警備人数と巡回ルートにも欠陥だらけだ。外部の人間は忍び放題ってわけだ。これは全て、お前の指示だと聞いたが?」


 聖羅は徹底した攻勢でアランを捲し立てる。


「なぜ、警備のプロに巡回ルートを任せない。まぁ、任せたところで二人だけじゃこの広大な敷地内を見渡せないがね。まるで、外部の人間に入ってくれと言っているようではないか」

「私が外部から犯人を招き入れたと言いたいのですか!」

「そうカッカするなよ。血圧が上がって、これからの大事な委員会とやらに支障をきたすぞ。私は睨んでいるんだよ。どうして今回の被害者がタリアだったのかを、ね」


 アランは逃れるようにチラリと壁掛け時計を一瞥した。


「そろそろ時間ですので、一度お引き取りを。続きは明日にでもしましょう。今日は警備課と警察機関。教職員の半分を学校に残します。これであなたの言う欠陥は補えるでしょう? あとは、貴女たちの働きに掛かっています」


 そこで形相を崩す。


 アランは疲れたような、それでも包み込もうとする慈母のような表情を作る。


「本当に宜しくお願いします。私達には貴方達二人が最大の切り札なの。私はもう、きっと、この子達の学ぶ姿勢を見れなくなりますが、それでも、責任者として最後には学校を平和にしたいと願っています。どうか、稲神さん、フォルトバインさん。学校と生徒たちをお願いしますね」


 深く頭を下げたアランに二人はぽかんとする。


 そのまま二人を抜けて校長室から出て行ってしまった。残された二人は見つめ合う。アレッタは何としてでも彼女の意志に応えたかったし、聖羅は自分の知らない理論を許せる性分でもない。


「アレッタ、よく聞け。ここからはお互いの協力が必要だ。いつ、またどこで失踪者が出るか分からん。出せる情報は隠さず吐き出せ。私も最大の知恵を絞って対策を講じる」

「はい。わかりました。ですが、また……」

「また、はよせ。そうなる前に必ず解決する」


 凄く真面目な顔つきでしっかりとアレッタの紫色の瞳を見据える。赤茶色の強い意思が窺える色をとても強く魅力的だと思った。吸い込まれそうな程純粋な目的遂行に滾る熱情が澄んで見えた。


「そうですね。稲神さん、今更ですがよろしくお願いします」

「それとだ。稲神さんは止めろ。まるで家柄で評価されているみたいで好きじゃない」

「えっ、じゃあ」

「聖羅でいい。敬称も不要だ。いいな?」

「はい!」


 聖羅は満足したように喉を鳴らして頷く。


「よし、では探求するとしよう。事件解明への道を、な」


 これではどちらが先輩か分かったものじゃない。


 行動力も知識も力も備えた彼女がやる気になったら、きっとどのような謎も、世界そのものさえ識り尽くしてしまうのではないか。

こんばんは、上月です



ギリギリ帰宅できました。

次回の投稿は5日の21時か22時を予定しております!

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