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終花1-2

 東京にしばらく身を寄せてどれほど経過したか。


 第四次世界大戦は人と魔の全面戦争と言っても過言ではない規模のものだった。しかし、東京には五つの強大な組織が睨みを利かせていた。そんな彼らは人類の脅威となる敵勢力を相手に一致して立ち向かった。


 その中には稲神聖羅の家系の者、稲神沙羅が率いる魔術組織、探求者の(シェルシェール・ラ・)メゾンが中心となって各勢力に協定を結ばせた。


 彼女の噂を聞いたアレッタは稲神聖羅と共に参戦した。


 人と魔の大規模戦争は人類の勝利で幕を閉じた。


 そこからまた百何十年。


 人類はさらに人口を減らした。


 不老不死の呪いを身に宿すアレッタ・フォルトバイン、稲神聖羅、津ヶ原永理の三人は初代統括者であり創設者である稲神沙羅の意志を継いで魔術師達の後ろ楯となるように運営し続けた。懐かしい業務は昔ほど多忙では無く、というのも人口減少に伴って魔術師も同様に数を減らした。


 日本の最後の財を貪らんとしていた、海外三勢力もトップを交代しつつもなんとか運営しているが、やはりあの時に比べれば規模は縮小している。


「統括者。俺にしばらくの休暇を頂けないか」


 津ヶ原永理が事務作業をこなすアレッタに書類を差し出した。


「構いませんよ。というよりですね、もっと休みなさい。いくら不老不死とはいえ、過労は身体に堪えますよ、もう若くないんですから」

「クク、お前がそれを言うかァ?」


 勝手にアレッタの部屋でくつろいでいた聖羅がニヤリと笑った。


「お前等、もう幾つだよ」

「覚えてないな」

「覚えていないわ。貴女と同い年よ、聖羅」

「年齢なんていちいち覚えてる必要も無いか。だが、ここ最近の記憶より、昔の思い出の方が色濃く残っているぞ」


 聖羅の言葉に二人はそれぞれで楽しかった時代を思い返す。


 アレッタは幼少期に花の楽園で柊春成と過ごした愛おしい時間。


 稲神聖羅はシェルシェール・ラ・メゾンで津ヶ原幹久、久世香織、アレッタ・フォルトバインと過ごしたハチャメチャな時間。


 津ヶ原永理は両親、津ヶ原透理とルア・ウィレイカシスと家族の優しさに包まれていた時間。


「しばらく、千葉県に行ってきます」

「両親の墓参りか?」

「ええ。まだ残っていたら実家を見てこようと」

「お土産を期待しているぞ」

「期待しているわよ、永理君」


 大先輩二人の期待の眼差しに苦笑いを浮かべてから部屋を出て行った。


「私も一週間ほどここを空けさせてもらうよ。ちょっと温泉にでも入ってこようと思ってな」

「お土産期待しているわ」

「温泉と言えば饅頭だな。まあ、こんな荒廃した時代だ。温泉饅頭なんか売っているかは定かではないがな、クク」


 聖羅も浮かれた様子で部屋を出て行ってしまった。


 残されたアレッタは再び書類作業に戻るべく、視線を机上に落とすと背後で誰かの気配を感じた。


「だれ!?」


 振り返るとそこには誰も居ない。


 気のせいかと思ったが机の前に一人の少女が立っていた。


「貴女は!」

「久しぶりです、アレッタ・フォルトバイン」

「どうして、ここに、稲神沙羅の手によって葬られたはずでは」

「あの程度では死ねない。バグ修正の為に再起動の段階に入っただけ。百年の時を経て起動した」

「どうやったら世界あなたを殺せるのでしょうね、アダム・ノスト・イヴリゲン統括者」

「私が死ぬときは世界わたしが真の意味で安定し、誰かの手によってシャットダウンしてもらえた時だけ」

「真の安定? そういえば、だいぶ昔に貴女を殺そうとする外世界の存在がいたような」

「この世界では悪魔使いと呼ばれていた者達。世界の命運を賭けて何億と戦争をしてきたある存在の先兵」

「世界の命運? 何億と戦争? いまのこの世界もその一つ、ということでしょうか」

「ええ。でも、この世界に太刀打ちできる札はない。次の世界を創ろうかと悩んでいる」

「この世界はどうなるというのですか」

「新世界の創世に伴って旧世界は活動を停止して消失する」

「させません!」

「大丈夫よ。世界は滅んでも、私の中ですべての人類はまた誕生するのだから」

「言っていることが分かりません。世界を賭けて戦う意味ってなんですか!」

「アレは私を殺したいだけ。邪魔な私を」

「その相手って?」

「始まりの世界、常世の時代から存在する本来の意味での神。エテルナ・エルナ・エテナ」


 アダムは小さく息をついた。


「私は常世の時代に、造られた偽りの神。彼女は偽神である私を壊したいだけ。私は抗い続けた。マジツという人工的な神秘を創り出し、その業を札となる人類に授けた。それでも何億と私は負け続けて、その度に既存の世界を消滅させられ、私は即座に新しい世界を創造し、エテルナの脅威から逃げながら世界を、札を育てて迎撃の準備をしてきた。この繰り返しを延々と続けてきた。色んな世界があった。貴女と共闘した世界もあった。でも、結果は敗北」

「そんな存在、いるわけ。だって、貴女はこの世界そのもの。世界を壊す力なんて」

「常世の時代では、それくらい息吹を吹き掛けるだけでも可能だった。神とはそういうもの」

こんばんは、上月です



次回は11月14日の21時に変更します

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