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普遍花1-6

 観光地として有名な多くの人の生活圏。


 こんな場所で悪魔なんて呼び出されでもしたら被害は甚大どころか、裏社会で秘匿とされる各組織の存在が明るみに出てしまう。


 是が非でも阻止せねばならない。


 深夜にホテルを抜け出した三人は路駐してある無人の車に乗り込んだ。もちろん所有者の許可なんて得てはいない。アレッタは犯罪行為に反対ではあったが、最悪の場合を考えた時、その思考を押しとどめた。


 手慣れた様子で運転席を弄くり回すエイヴィーが背もたれに寄りかかると、車は小刻みに揺れてエンジンがかかった。


「エイヴィー……。キミはいつもそういう事をしているの? 凄く手慣れているように見えたけど」


 ハミエルがやれやれと肩を竦める。


「選択の幅を広げるには、得ておくべき知識や技術は多い方がいいだけさ」


 車を走らせて市街地を抜けて行く。


「あの、悪魔使いのおおよその場所って分かるんですか?」

「下調べは昼間に終えているよ。おやおや、アレッタ君はただ観光をしていただけかな?」


 観光をしながら彼女は悪魔使いの痕跡を確認して回っていたという。


 被害を出すなら人の集まる場所。ハミエルに案内させた箇所で幾つかの痕跡を見つけ、頭の中に描いた地図に印を付けていくと、ある場所を中心に円を描くようにして行われていたらしい。


 次の場所はドールトン・ファウンテン。


 円形の中心にはグラスゴー・クイーンストリート駅がある。その場所が儀式の台座としているのだ、とエイヴィーは予想を付けていた。


 儀式が完成してしまっては処理できない可能性もある。だからこそ、最後のポイントを押さえられるまえに潰してしまおうという。


 ホテルのあるアーガイルストリートからは基本的に直進で目的地には着くが、少々距離が離れているので、エイヴィーは自動車を加速させた。


 もしかすると徒労に終わる可能性だってある。


 悪魔使いがいつどのようなタイミングで痕跡を残しているかまでは分からない。アレッタは休暇延長の可能性も考慮しつつ、いま自分にできる手段の枝を広げていく。


「こっちにはアレッタ君が着いていてくれるんだから万が一もない、なんて考えていないだろうねハミエル?」

「そ、そんなことは……」

「それはよくないね。自分の身を守るのは自分なんだよ。彼女だって人の身だ。負傷だってするし、死ぬかも知れない。私も同じだ。信仰会所属の執行会のような加護なんて持ち合わせていないんだ。私たちの武器は知識と知恵。それとこの頭脳だよ」


 ハミエルは不安そうだが、エイヴィーは楽しそうに、鼻歌交じりにハンドル操作をしている。


 本当にこの人は。


「なんだい、アレッタ君。可笑しそうにして」


 バックミラー越しに視線を合わせたエイヴィーはニィと笑う。


「いいえ。ただ、誰かさんに似ているなと思っただけです」

「誰かさんって?」

「とても頼もしくて、頭の良い人よ」


 車はドールトン・ファウンテンに到着した。


 深夜に人通りは無い。


 誰一人いない静けさが不気味な空気に染みこんでいた。

こんばんは、上月です



次回の投稿は3月7日21時を予定しています。

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