普遍花1-4
ハミエルはエイヴィーと任務に向かうらしく、これ以上の滞在は自分は邪魔に成ってしまうと店を出ようとしたところでエイヴィーに呼び止められた。
「どうかな。アレッタ君も一緒に私たちと任務に同行しないかね」
「ちょっと、エイヴィー。アレッタ様は統括者だよ。僕等とは違ってとても忙しい方なんだから」
「おっと、そうだったね。これは失礼。なぁに、ちょっと戦力は一人でも多い方が我々の安全性も高まると思っただけなんだ。いや、気にしないでくれたまえ」
「そんなに危ない任務なのですか?」
アレッタの質問に漁師が獲物を捕獲したような笑みを浮かべて頷いた。
「Aランクの任務で、なにやらグラスゴーで異形を使役する人物、というのが何やらきな臭い企てを立てているらしくてな。異形を扱う人間なんて興味が惹かれてね。私はここにいるハミエルと見に行こうというわけだ」
違う。
異形を使役しているのではなく、それは悪魔を使役する悪魔使いだ。
まだ悪魔使いが存在していたのか。
柊と聖羅と三人掛かりでようやく何とか出来た相手を、この二人だけでは無謀だ。それに何か企てているというのであればそれを挫かねばならない。怪しい花を咲かす前に芽を摘んでおいたほうがいい。
「是非、私も同行させてください」
「これは意外だね。私は冗談で言ったつもりだったんだけど、まさか、シェルシェール・ラ・メゾンはこの件に関して、何か握っているのかな。是非とも情報を共有したいね」
悪魔使いの存在はまだ世間に広まってはいない。
統括者と一部の者達の間で秘匿にしている第四の勢力。
しかし、ここで情報開示を拒否していていざとなったときに、また失うなんてことはご免だった。
「分かりました。私が握っている情報を共有しましょう。ですが、無闇に公言しないでください。まだその存在に関して謎が多いのです」
アレッタは共有した。
悪魔使いの存在を。悪魔使いの脅威を。悪魔使いによって命を落とした二人の尊敬する魔術師を。
エイヴィーとハミエルは黙ってアレッタの話を聞いていた。
「そうか。柊殿とヨゼフィーネ殿は私も尊敬する魔術師であるが、悪魔使いに」
「それでアレッタ様とクラウス様が秘密裏に悪魔使い狩りをしているというわけですね」
「ええ。悪魔使いの術をなんとしても世の中から抹消しなければなりません」
これ以上あんな不条理に、ただ一方的な悪意を人の世にばらまかせてはいけない。悪魔使いの実力も使役する悪魔の格による。柊やヨゼフィーネの時は実力者だったが、それ以降の悪魔使いは格段と対処がしやすかった。
今回の悪魔使いは何かを企てている。
もしかすると、柊やヨゼフィーネの時と同様に実力のある悪魔使いの可能性が高い。いざとなれば、統括者として二人だけでも逃がさなければならない。
「では行きましょう。グラスゴーでしたね。その悪魔使いの計画が整う前に、我々がその企てを排します」
「見た目に反して熱血路線なんだね。まあ、アレッタ君の選択が私たちにとって吉であることを願うよ」
三人はハミエルの事務所を後にして空港へ向かう。
移動の最中にクラウスに悪魔使いの件を告げて、もう数日の休日を頂いた。
こんばんは、上月です
次回の投稿は21日の21時に変更いたします。