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赤の奇跡1-13

 悪魔だけならまだしも、異形まで騒ぎを聞きつけて参戦した。


 しかし、悪魔と異形が共闘している構図ではなく、三つ巴の潰し合いが繰り広げられている。いくら大型遊覧船であってもこれだけ派手に暴れ回れば、いつかは転覆してしまうのは必至。なんとしても早期決着を付けてしまいたいところだが、実際は数で劣る人間側が押され初めていた。


 これ以上の被害を被らない為にも、なるべく一箇所に集まり応戦する。アレッタはヨゼフィーネから離れるべきでなかったかもしれないが、ヨゼフィーネは視線で他の者達の加勢へ向かうよう示したので、それに従い、三階から一階の突き出た甲板へと飛び降り、人と魔の間に割って入った。


 いきなり上空からアレッタが落下してきたことで、乗組員はぎょっとして攻撃の手を急遽止めた。この好機を逃す手はない悪魔や異形は一斉に飛びかかる。怯んだ人間側に彼らの攻撃は届くことは無かった。


「私が守ります。視界に映り、手の届く範囲であっても、私はありとあらゆる脅威から仲間を守ります!」


 蔦や根がそこらに配した鉢から伸び、異形と悪魔の身体を、穿ち、締め上げ、生気を吸い上げていった。


 カラカラに干からびた塊は海の外へと投げ捨て、次の獲物を捕食、殴打、束縛していく。今までのアレッタより好戦的な姿勢。


 前線で凜々しく、雄々しく、華麗に植物を手繰り敵を一掃していく美しき銀の乙女。その背中に守られていた、かつて裏社会で探求や信仰を信じて歩んできた者達に活力を与えた。

いいや、活力だけではない。絶望に阻まれた先に新たな道を示した。大人数で並んで歩けるような幅広い道だ。


 アレッタは背後からの張り上げたいくつもの声に、ビクッと一瞬だけ肩を竦めたが、彼らの威勢の良さだと分かると、アレッタにも自信がおのずと沸き起こってくる。


「ここからは私たちが優位に立ち、そのまま押し切ります! 個々にならず、群となって押し返します!」


 応、という一切の不安の色も無い返答。


 ここからが人類の土壇場となる。


 人に害成す悪意の権化を許してはならない。


 船の至る箇所で血を流し、中身を引きずり出された屈強な男達の姿。アレッタは彼らに心の中で冥福を祈り、今回の事件を解決することを誓った。


 大丈夫。


 ヨゼフィーネだって、魔術組織の総本山、シェルシェール・ラ・メゾンのAAランクなのだから、何一つ心配することはない。


 今は、そう。


 自分のやるべきことに集中して、一つずつこなしていく。どんな困難であろうとも、ともに歩むべき仲間達がいてくれれば、きっと必ず乗り越えられる。それは長い歴史が証明してきた。自分には多くの仲間や友人がいる。


 彼らが結婚して子供を産んだりすれば、そこからまた繋がりが生まれる。


「私の無道たんきゅう


 学習のしない異形は悪魔や人間に襲いかかるが、悪魔は不用意に人間側を襲おうとはしなかった。群れで食欲を満たそうとする下位存在を薙ぎ倒していく。


 アレッタの背後からは炎や水、空気の刃が一斉に放たれた。乱戦する悪魔と異形をまとめて呑み込んでいくが、悪魔たちもまた防衛の術を用意していた。


 ならば徹底的にその防御を剥ぎ取る。


 アレッタは植物をさらに生長させる。


 アレッタの魔力えいよう供給によってさらに太く、さらに硬化し、海面から手を伸ばす異形の群れはどうして海上に落ちていくのか。


 船が上空にあるからだ。海面に浮かぶ異形が米粒にも見えるほど小さい。彼らが手を伸ばそうとも辿り着けぬはるか上空の領域。


 アレッタの植物たちが、栄養源であるアレッタの意思を汲み取って、これいじょうの邪魔者を増やしてはならないという願いを聞き届けたのだ。船上から船を持ち上げる。まったくもって理解不能で、この神秘に誰もが驚きを隠せない。悪魔でさえもどんどん高度をあげていく船に恐怖を感じている。正確にはこの奇跡を生み出したアレッタ・フォルトバインに。

こんばんは、上月です



次回の投稿は7日21時を予定しております!


頭痛い……。

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