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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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最後の捜索

 俺達は外に出てロックを倒したことを報告。だが、まだ何かあるということで即刻ゴルエンの下へ向かい、報告を行った。


「まだ何かあるってことか……」

「俺達はどうすればいい?」

「……現状、ロックという脅威は去ったわけだが、言い残した何かを片付けないとまずそうだな。ただこれが嘘である可能性も否定はできない」

「それじゃあ、どう動く?」

「放置はできない。都をしらみつぶしに調べるしかないが……」

「俺が怪しい場所を調査するか? ロックがいなくなったんだ。少しくらい派手にやっても問題はないだろ」


 ロックの捜索はゴルエン達に任せていた。そもそも俺のやり方はずいぶんと派手に立ち回るし、相手も気付かれるからな。でも、潜伏していたロックがいなくなり、なおかつ今度は敵について調べる必要性がある。なら、俺の出番だ。


「いいのか?」

「ああ、そちらが良ければ。すぐにでも実行できるが」

「今回はおそらく時間との勝負だからな……ああ、わかった。ならすぐに頼む。場所は?」

「ここでもいいぞ」


 俺達がいる玉座を示す。とはいえ、


「もっとも、玉座の間で怪しい魔法を使っている……と指摘されたら、竜族側としては良い顔をしないんじゃないか?」

「その辺りはどうにでもなる。優先すべきは、ロックの言動について真偽を確かめることだ」


 ……ま、今更俺達のことをあーだこーだ言っても仕方がないか。俺は小さく頷くと、


「なら、魔法を使う……少し、待ってくれ」


 俺は魔法で作った杖をかざし、目を閉じる。次いで魔法を使用し――都全域を索敵するだけの魔力を発する。

 それは例えるなら霧のようなもの。魔力を粒子化してこの玉座の間から拡散。一気に広げていく。とはいえ一個人で拡散できる魔力量には限度がある。都全体に広げるとなれば魔力は微細なものになるが……『闇の王』の力を所持している相手には気付かれる。よってロックがいる時は使うに使えなかったのだが……今回は何かを探す行為であるため、敵に察知されるリスクよりも見つけ出すメリットを優先した形だ。


 俺の魔力が都全体へ広がるのに、およそ五分ほど時間を要したが、無事に成功。


「ひとまず、都の内側だけを調べる。それで何もなかったら、山岳地帯へ範囲を伸ばそう」

「現状、どのような感じだ?」

「怪しいところは何もないように感じられるけど……」


 目をつむった状態で俺は答える。直接見てはいないが、俺としては都を上空から眺めているような感覚になる。

 幽体離脱でもしてこの玉座の真上にいて、怪しい所がないかチェックする……俺がやっているのはそんな感じのことである。


 なので、魔力の粒子を動かして怪しげな場所を探していく……まずは都の外周部。今回ロックが潜伏していた場所は、大通りから路地へ入ったところで中心街とでも呼べる場所だった。むしろ人が多いことから逆に目立ちにくいということだったのか、あるいはロックが今際の際に言っていた何かを使うため下見にでも来ていたか……。


「まず、都の外周については異常はないな」

「地下とかは?」


 問い掛けたのはリリー。そこで俺は、


「もちろん調べてるよ。魔力を粒子化しているから、地中にも入り込める」

「さすがだね」

「世の魔装使いが聞いたら卒倒するような内容だな」


 ゴルエンが呟く。まあ到底信じてもらえないような理不尽だからな。


「次は外周から内側に範囲を絞っていく……うーん、怪しいところは何もないな」


 何かを仕掛けるとしたら、闇にまつわることであるのは間違いなく、であれば当然魔力を伴っているはず。魔力を粒子にしたとはいえ、闇の魔力であれば俺は即座に気付く。それが見つけられないというのは……、


「ロックが中心街にいたのだ」


 ここで俺の心情を察するかのようにゴルエンは言った。


「ロックが何を残したのかは知らないが……それもまたこの城に近い場所に眠っていてもおかしくはない」


 灯台もと暗しってことか。むしろロックの狙いがゴルエンであったのなら、攻撃を仕掛ける際に近い方が有効なのでそういう可能性は十分ありそうだ。


「そうだな……今は範囲を狭めている。地中も調べているが怪しいところはない」


 このまま徒労に終わるのか、と思った矢先に俺は、


「……見つけた」

「お、本当か?」

「外周部から結構内側だな……方角で言うとここから北西。住宅地とかが密集している場所だな。ここからそう遠くないし……もしロックが城へ奇襲するなら、成功するギリギリといったところか」

「あまりに近くても察知されるため、遠からず近からずという場所に隠したということか……まあいい。場所がわかったのなら即座に行動開始だ。地図を用意するから、その地点について指を差してくれ」


 ゴルエンが歩き始める。それから程なくして彼は戻ってきたのだが、


「……ゴルエン、あまり良い状況じゃないぞ」

「どうした?」

「ロックの言ったことは本当かもしれない……見つけた場所をじっと魔力を使って観察しているが、少しずつ肥大化している」

「それは……下手すると爆発するような事態に?」

「それで済めばいいが……そもそも爆発させるという意図なら、あんな場所に隠したりはしないだろ。もっと城の近くに置いてもおかしくない」


 そう主張する間に俺はいったん索敵魔法を解除。目を開けてゴルエンから提示された地図に印を付ける。


「すぐにそこへ騎士達を急行させる」


 即座にゴルエンは指示を出す。一度玉座から出て騎士達へ何か伝えると――城内が慌ただしくなり始める。


「正直、戦力になるかは微妙だぞ」


 こちらの言及にゴルエンは小さく頷き、


「わかっている。少なくともそちらが警戒するほどだ。現地へ向かう頃には異常が発生しているだろう。まずは周辺に被害が出ないように処置を施す」

「その後に俺達が……か。ゴルエンはどうするんだ?」

「私も同行するさ。ロックの仕込んだものが何かは不明だが、私を狙うものならば城に残っていた方が逆に危ないし、被害も拡大する」


 魔物のようなものを残していたとしたら、確かにそうだな……ゴルエン自身を危険にさらしてしまうわけだが、


「ここが正念場だ。今更城に引きこもっているわけにもいくまい」

「……わかった。でも『闇の王』が相手だ。いざという時に守れるかどうかはわからないぞ」

「心配するな」


 笑いながら話すゴルエン。


「ここまで色々と面倒な事態に付き合わせてしまって悪かったな」

「悪いと思うなら、報酬には色を付けてくれ」

「善処しよう。それでは、向かうとしようか」


 彼の言葉と同時、弾かれたように俺達は動き始める。今度こそ、決着がつく――ロックが残したものが何なのか……俺は杖を握り締め、仲間と共に玉座を出た。


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