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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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異なる事情

「レイト、追う?」


 ロックの逃亡により、リリーからの問い掛け。だがそれに俺は首を左右に振った。


「そもそも攻撃が通らないんだ。捕縛するのも無理だな」


 俺はそう告げると肩をすくめる。


「……資材に流れを追ってここまで来たが、既に力は手に入れている……か。ただ、闇に意思を乗っ取られたという点が気になる。先ほど戦った存在は間違いなく『闇の王』に由来する存在だけど……何か、今までとは違う事情が含まれているかもしれない」

「そうだね。ただ、レイトの攻撃が効かないというのは――」

「どういう仕組みなのかは理解できた。次の戦いまでに準備はできる……次に会ったら、絶対に倒す」


 そう言ってから、俺はゴルエンを手で示した。


「まずは戻ろうか」


 ――そうして地上へと戻る。そこで王は開口一番、


「さすがに死ぬようなことはないと思っていたが、少しヒヤヒヤしたぞ」

「心配してくれてありがとう……敵もさすがに『闇の王』だ。簡単には勝たせてくれそうにないな」


 今まで闇を手にしてきた存在とは大きく違う。ただこれは至極当然の話と言える。

 竜族という根本的なスペックとして強いことが一点。ロック本来の技量についてはわからないが、ポテンシャルというか魔力量だけを見ても人間を上回っていることは間違いなく、だからこそああした技術を得ることができた。


 さらに言えば、ロックの意思が完全に消え去っていることも大きい。俺と対峙していたのはまさしく『闇の王』そのもの。本体から切り離されているとはいえ、竜族の力を活用し強力な能力を発揮した。


「……厄介な事態になってしまったな」


 ゴルエンは破壊された建物を見ながら告げる。


「まあそんな簡単にいくとは思っていなかったが……手傷くらいは負わせられると思っていた」

「ゴルエンを倒すために備えていたと言っていたし、明確な目標があることで強くなれた面も大きいだろうな」


 イルバドなんかは「最強の王になる」という野望を持っていたわけだが、それはどこか抽象的で自身の想像力に負けた面もあった。けれどロックの場合はゴルエンの能力については事前に把握していただろう。それを目の当たりにして、超えるだけの力を得ようとしたのならば……先ほどの戦いみたいになってもおかしくはない。


「問題は逃亡してしまったわけだが……」

「厳戒態勢を敷く。さすがに相手が相手である以上は、警備を強化しなければ」

「ロックの魔力については俺も捕捉できたから、今度は探査することができる。こちらも協力させてもらうよ」

「それはありがたい……ここからは根気との勝負だな」

「レイト、ロックを倒す技法については?」

「準備はロックを探しながらでもできるから大丈夫だ……さて、ひとまず帰るとしようか」


 そう言いながら俺は拳を握り締める。仕損じた……それについては様々な要因があるにしても、ここで決着を付けていれば……と悔やまれる。

 ともあれ、これからはそれを挽回するべく立ち回るとしよう……俺達は城へと戻ることに。敵の正体もある程度わかった以上、ここからが本番だった――






 翌日以降、俺達はロックの居所を探るべく魔法による索敵に加え、情報を集め始めたのだが……それらしい存在が見受けられなかった。

 既に都を出たのかと危惧したのだが――玉座を訪れ懸念を告げた俺にゴルエンは「それは絶対にない」と否定した。


「都にはこの騒動が開始されてから出入りについてはすぐにわかるよう魔法を使用している。いかに『闇の王』の力を得ているとはいえ、そこには必ず魔力が伴っている。記憶を取り戻して以降、そこについてはとにかく強化したので、都の外へ出ていればこちらがすぐに察知する」

「なら町の中にまだいると? でも……」

「行方が知れない可能性としては二つ。一つは索敵を逃れられる場所がある。二つ目は気配を完全に遮断してこちらの索敵が通用しないよう立ち回っている」

「後者である可能性は低そうだね」


 と、リリーが俺達へ言及。


「彼は闇の魔力を用いて何かをしていた……例えば組織所属者を洗脳していたとしたら、必ず魔力を伴っている……今も活動中だったら、魔力を探知されてバレているはず」

「都中を動き回っている……というのは、確かに可能性としては低いだろう」


 リリーに続きゴルエンも言及。


「いくら隠せるといっても限界があるはずだからな」

「そうだね。とすると、身を隠せる場所がどこかにある」

「地中も探ってみたが上手く索敵できないからな。魔力を大いに含んだ山であるため、深く潜られたりすれば自然の魔力が邪魔して索敵ができない」


 ……まあ『山の王』に挑むのだから、相応の逃げ場所を確保していると考えていいか。


「とはいえ捜索活動はこちらで継続する。派手に動けばすぐに察知されるという事態に陥る以上、下手なことはできないはず……とはいえ、もし出てきたらその時が決戦だな」

「それまでにしっかり準備を、というわけだ」


 俺の言葉にゴルエンは頷きながらも、


「そちらは仕留められなかったことについて思うところはあるみたいだが、まあ気にするな。現時点で犠牲者が出たわけでもない。ゆっくりやろうじゃないか」

「……そんな悠長にしていていいのか疑問ではあるけど、まあこっちはこっちでしっかり対策を練っておくから心配しないでくれ」

「よし、頼むぞ。何かあれば報告する」


 そういうことで城を出る。四人それぞれどうするかについて宿へ戻る途中に話し合いをすることになったのだが、


「俺は次の戦いの準備をする。ある程度目処が立つまでそう時間は掛からないと思うけど」

「僕は引き続き魔装の調整を。前回はお役に立てませんでしたが、次こそは」


 俺に続いてアゼルが語る。その顔はやる気に満ちており、『闇の王』を目の当たりにした結果、改めて奮い立ったということか。


「なら私は剣の修行かな」


 リリーはそう発言。つまりそれは今までとやることが変わらないということなのだが、


「クレアは付き合ってくれるでしょ?」

「他にやれることもないからね。前回の戦いでは貢献できなかったし、敵の特性なども知れた以上は、頑張りたいわね」


 二人で試行錯誤するのか。まあそれが無難かな。


「よし、なら宿に戻ってから解散といこうか。リリー達は訓練するのはいいけど、食事の時間になったら戻ってくること。それと、何かあったらすぐに報告だ」


 まとめてから、俺達は宿の中へ。リリーとクレアが部屋に入り訓練のために準備を始め、俺とアゼルは作業を開始する。

 同じ部屋なのだが、集中し始めると何も気にならなくなる……さて、敵の能力などを把握した以上、応じられるような手法を今から開発する。今回の敵は相当強いし、普通ならば対策を立てるのに相当大掛かりな準備が必要だと思うけど、俺の場合は魔法があるのでそれほど労力なども掛からない。


 とはいえ、対策が通用しなければまずいことになるため、次は絶対にミスしないよう、慎重に……ふと、ここで竜族のロックは本来何をしたかったのだろうと考える。

 おそらく彼も『仮面の女』から情報を得ている……とすれば彼なりの目的があったはずだ。


「王になる、という単純な話……のようには感じないな」


 そんな予感がする。ただロックの意識そのものが消え失せているため、解明は難しいか……そんなことを考えながら、俺は作業に没頭していった。


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