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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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竜族の伝説

 竜族ロックの情報を得て、動き出したのはギルダと出会ってからおよそ五日後のことだった。


「町外れにある屋敷が組織の拠点の一つ……といってもずいぶんと傷んでいる屋敷で、人も寄りつかないような場所だ」


 玉座の間に再び招かれて俺達はゴルエンから直接説明を受けることに。


「ただ近隣住民はいるし、下手に避難命令なんて出したら怪しまれかねない。相手側も馬鹿じゃないし、見張りなんかは配置していたからな」

「住民の保護についてはそっちに任せていいんだよな?」

「当然だ。私達にとって最優先のことだ」


 ゴルエンが強く語る。なら、


「肝心のロックの居所は?」

「ギルダから受け取った身体的特徴と一致した者は、屋敷二階の部屋に入って過ごしている。寝泊まりしているらしいんだが、床板がギシギシ鳴るような場所で何をしているんだか……」

「今も実験を行っているのかもしれない」


 そう俺が述べると仲間達に加えゴルエンも緊張した表情を見せる。


「人を寄せ付けないような動きをしているっぽいし、演説へ向け作業中……ってことなんじゃないか?」

「あり得るな。だとするならそちらに集中している間に倒す……というのがベストか」

「期待はしないでくれよ」


 俺が念を押すような言葉を述べるとゴルエンは「もちろんだ」と頷いた。


「最悪のケースは想定して準備をしている……では、移動するとしようか」

「ん、その口ぶりだとゴルエンも行くのか?」

「ああ。もしかすると最大のターゲットが目の前にいる……よって、こちらに仕掛けてくるかもしれないだろ?」

「それ、いくらなんでも危険じゃないか?」

「反対はされたが、それでもこれは……私の問題でもある」


 重い言葉だった。彼なりに覚悟がある、ということなのかもしれない。


「ま、私が出て行くのはギルダを守るためでもある」

「ギルダを?」

「情報の出所がギルダであったとわかれば、ロックも強引な手段で報復する可能性があるだろう? 現在のところレイト達と接触していても彼らに危害を加えていないということは、彼らの情報提供であったことはバレていない……と思う。しかしいきなり奇襲とかだったら、ギルダが内通したのか、と思うところだろう」

「その考えをゴルエンがいることでうやむやにすると?」


 そんな上手くいくのか? と疑問に思っているとゴルエンはさらに言及する。


「私が現地へ赴く事例は幾度となくあるからな。特に自分で探し当てたとか、自分の仕事の成果は間近で見たいと思うし、配下達もそういう性格だと思っている。民も知っている」

「難儀な性格だな……」

「言うな。で、そういう性格は竜族である以上ロックも知っているはずだ。よって私が赴けば、それだけで煙に巻くことができる」


 ……なんだかすごい自信を持っているので、これ以上言及は控えよう。


「ま、その辺りはどうとでもなる……が、肝心の奇襲そのものについてはレイト達の力を借りなければどうにもならない」

「そこは祈っていてくれ……で、今から出発するのか?」

「ああ。密か屋敷に近づき、時を待つ。決行は夜だ」

「夜?」

「色々と準備をするのにそのくらいまで掛かるんだよ。で、準備ができたら即座に作戦を実行する」


 下手に時を待ったら察知されて逃げられる可能性があるってことだな。


「わかった……それじゃあ、行くか」


 俺達は一斉に動き出す。ゴルエンが先行し、俺達は彼の側近に案内されて町の奥へ。

 その道中で、俺はロックに対しどう立ち回るかを検討する……どういう状況であっても即座に対応できるようシミュレーションをするのだが――


「レイト、私やクレアは打ち合わせ通り動くということでいいの?」


 確認の問い掛けをするリリー。それに俺は頷き、


「ああ、敵が想定通りの動きをした場合は、それで頼むよ」


 ――指示した内容は、俺がロックへ攻撃した際、周囲にいる護衛の露払い。とはいえ作業中であればそういう存在はいないかもしれないが……そうなったら俺と共にロックの打倒へ加勢する。

 俺に加えリリーとクレアがいるとなったら可能性は成功する可能性は高そうだけど……相手も強いし万全を期すならこのくらいはやらないと。


 現状、ロックがどの程度『闇の王』から力を得ているのかはわからないが……竜族という点を考慮しても、勝算は十分にあると思う。というか俺の魔法の前では相手が竜族だろうと関係ないし……問題はイルバドやルーガ山脈の魔術師と比べてどこまで闇の力を操れているのか、だな。


「ロックは、何を願って闇に手を出したんだろうな」


 純然たる疑問。それにリリーは肩をすくめ、


「組織の構成員を強引に取り込んで……かなり力技だよね」

「力による支配を望んでいるってことだろうか……それにしてもやり方が強引だと思うが」

「理性を既になくしているのかもしれないわよ」


 クレアからの考察。まあ強硬手段に出ている以上、そういう答えに辿り着いてもおかしくない。


「何か手がかりがあればいいんだけど……その辺りのことを少しでも知ることができれば、奇襲の成功率も上がるんだが」


 といってもロックという竜族のことを知らないし、この辺りはゴルエンに尋ねても望み薄かなあ――


「そういえば」


 と、リリーが何かを思い出すように口を開いた。


「今回の一件と関係あるかどうかわからないけど……竜族の間には一つ伝説がある」

「伝説?」

「終末伝説みたいなもの。世界が破滅と絶望に包まれる時、天から二つの竜が襲来し、我らは選択に迫られるであろう……だったかな? うろ覚えだけど」

「何で竜族に関する伝説をリリーが知っているんだ?」

「ゴルエンの側近から話を向けられて、面白かったから憶えていたんだよ」


 なるほど……。


「二つの竜というのは?」

「光の竜と闇の竜。光は天……というより太陽の光かな? そういう存在を象徴として描いたのが光の竜。そしてもう一方は闇……こちらは闇夜をイメージしたということかなあ?」

「その竜達が現われ、選択……選択って具体的には何だ?」

「光をとれば世界に安寧を。闇を選べば破滅を……そういう選択を迫られる。これだけ聞くと闇を選ぶことにメリットが一つもないけど……闇は力を得ることもできる」

「力が手に入るという内容で釣ろうってわけなのか……比喩的な表現になっているけど、話の内容からして『闇の王』に対抗した光の話、ってことかな?」

「その伝承ではもちろん竜族は光を選んだのだけれど……いつ何時闇が現われるかわからない。だからこそ、警戒だってする必要がある……そんな教訓めいた話にしていた」

「闇から力を得るにはイメージをしやすい方がいいし……ロックが伝承を参考にしている可能性もありそうだな」


 と、俺はリリーから話の詳細を聞こうと喋り始める。そうこうしている内にいよいよ拠点へと辿り着いた。無人の民家を間借りしているらしく、中は少し埃っぽかったがそのほかは問題がなかった。

 よって、俺達は夜を待つことに……戦いが始まるまでの間に俺はできる限り奇襲攻撃に関して頭を悩ませることとなった。


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