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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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魔装購入

 俺達はクレアが見つけた店へと入る――この世界において魔装というのは基本、専門的な店で扱われる。そもそも魔装の販売は許可制で、きちんと認可されないと売ることができないのだ。もし違反すれば牢屋へ直行となる。


 ただ、魔装以外にも普通の武具だって存在する……魔力が存在するこの世界において、魔装を用いることが一番楽な戦い方ではあるのだが、魔装もピンキリであまり強くない物だと魔装の力を引き出すまでに時間が掛かるなど、色々と制約が生じるケースもある。


 また魔装とは別に魔力を伴った攻撃を弾く特性の素材とかもあるので、むしろそういう武器を使った方がいいみたいなケースだってある……それに魔装自体、一つ一つ個性があるのでよっぽど訓練しないと手にとってすぐに使えるというものではないし。


 リリーがオディルからもらった剣を最初からある程度のレベルで扱えたのは彼女の訓練によるものだ。加え、そうした技量を手に入れるにはしっかりとした知識なども必要になる……高度な能力を持つ魔装ならば顕著だ。よって無闇に魔装を手にとっても役に立たない場合だってあるため、使用者に合わせて武具を選ばないといけない。


 で、この店についてだが……店内は剣や槍など、様々な形状をした武具が立ち並んでいた。なおかつそれらには魔力が備わっている……多くが魔装の類いだと考えてよさそうだ。


「いらっしゃい」


 竜族の店主が語りかけてくる。見た目は三十そこそこの男性。彼はこちらを一瞥すると、


「人間のお客さんか……関所は通れなかったはずだが、通れるようになったのか?」

「仕事で封鎖される前にここにいた人間でして」

「ああなるほどな。で、何か仕事でもやるってことで新しい武器を?」

「そんなところです」

「で、どういった武器がお望みだ?」


 フレンドリーに会話をしてくれる店主。これだったら特段トラブルもなさそうだな。


「アゼル、どういう武具がいい?」

「そうですね……前と同じような物を望みますが」


 彼の主武装は短剣だった。もっとも短剣に注がれた魔装だけではなく、いくつかの魔装を複合して扱っていたのだが。

 しかしそれを実現するには綿密な調整を必要とする。しかもアゼルの場合は魔装に自ら手を加えていた。そこまでやって初めて『前回』と並ぶことができる……道のりは長いな。


「けど、さすがにここで求めるのは無茶だろ?」

「確かに。ただ、護身用に短剣は持っておきたいです」

「誰かに教えられたんだっけ?」

「はい。少し手ほどきを受けました」


 そういうことなら……俺は店主に「短剣を」と告げる。相手は指で壁際を差した。


「そこに並んでいるぞ」


 テーブルが存在し、そこにいくらか短剣が並べられていた。近づいて俺はじっとそれらを見つめ、


「……手にとっても?」

「ああ、構わないよ。ただし、壊したら弁償してくれよ」


 短剣の一つを手に取る。少しばかり魔力を流し……すぐにテーブルに置く。

 それをテーブルにある短剣全てで行う――これは分析魔法を行使している。わかりやすく言うと鑑定魔法みたいなもので、どういった特性のある魔装なのかを判別している。


 武器屋にあるような物で、アゼルが竜族と対抗できそうなのは……と結構ハードルが高いのだが、さすが竜族の店というべきか。要求されるスペックも相応なためか、どれもなかなかの力を持っている。


「どれでもよさそうだけど……アゼル、手にとって確かめてみるか?」

「鑑定や武具の判別などについても魔装でやっていたので今の僕にはあまりわからないんですよね……」


 頭をかきながらそう述べる。うーん、そうなると、


「それじゃあどうする? 一応分析はできたけど、アゼル自身が良いと感じるものじゃないと真価を発揮できないぞ」

「わかっています……そうですね、では――」


 アゼルはいくつか魔装についての要望を告げる。それを聞いて俺は店主に尋ね、さらにいくらか鑑定魔法を使い……それを繰り返しおよそ三十分ほど。アゼルは合計で三つの武具を購入した。


「意外に安かったね」

「リリー、それは金銭感覚がおかしいだけだ。結構な額が吹っ飛んだぞ……」


 魔装は基本高いからな。値段的な意味で購入できない冒険者も大なり小なり存在するくらいだし。


「アゼル、これからどうする? 検証するか?」

「そうですね……レイトさん、僕は魔装について調べないといけませんから、リリー様の語った内容のことを実行するのであれば、僕はいない方がいいでしょう」

「それもそうか。なら、アゼルは買った魔装の検証を行ってくれ。その間に俺達は一仕事してくる」

「はい。お気を付けて」


 宿で俺達は分かれることに……検証が終わらない内はアゼルについては戦力にならない。よって、今回の措置は致し方のないものだ。


「ならリリー、クレア、やるか」

「そうだね。適当な路地裏に入って、情報収集といこうか」

「大丈夫かなあ……」

「向こうから突っかかってくるくらいだし、さらにゴルエンを味方に付けているから問題ないよ」

「そういうことを言いたいんじゃないんだけどな……しかし、ものの見事に行き当たりばったりだな」

「いつものことじゃない?」


 と、クレアが発言する。


「だって私に偶然遭遇して、そこから魔術師を倒した……計画性あったかしら?」

「そう言われてしまうとこちらは立つ瀬が無くなるな……まあいいさ。とにかくやってみよう」


 俺達は大通りから路地裏へ。人間連中がウロウロしていたら確実に目立つわけだし、何かしら干渉があってもおかしくないが――


 大通りから逸れた町並みは、それでも理路整然としており、道幅もそれなりにあるしあまり窮屈さは感じなかった。ただ、視線のようなものを感じることはできる。人間の俺達がなんでこんなところにいるのか……そういう好奇なものだろうか。


「ねえ、レイト」


 歩いているとふいにリリーが話し掛けてきた。


「組織の話だけど……リーダーを捕まえたら終わると思う?」

「微妙なところだな。そもそも闇を誰が手にしたのか……それはリーダーじゃなくて、組織で上を目指そうとする輩かもしれないし、いくらでも考えられる。もしそういう流れだったなら、リーダーを倒しても終わりじゃないし、むしろ事態が悪化する危険性がある」

「うん、そうだね」

「……組織について情報を得たいけど、短期間では厳しいかな?」


 それに俺達が暴れ出したら敵側としては対応に迫られる。距離を置くか戦うか。もし戦うのであれば迎え撃つだけで良いのだが、距離を置くという選択肢の場合、ほとぼりが冷めるまで竜の都に潜伏する可能性が高い。

 そんなことをされては土地勘もない俺達で探し出すのはまあ不可能だ。よって、できることなら『闇の王』に触れた者を早期に判断してそいつだけ片付けたい。


 なら、今回の行動で何者かが引っ掛かったら……最短距離を突っ走るためにどうすべきか。頭を悩ませている時、


「……ん」


 周囲からの視線が、少し刺々しくなった。周囲に人影はない。だが確実に、こちらを見据えている。


「……引っ掛かったか?」


 小声でリリーに問うと彼女も首肯。クレアも周囲を見回し始めた。

 こちらの反応に対し、向こうもバレたと勘づいたようで、姿を現した。おそらく俺達が路地に入った時点で監視をしていた……二十歳前後くらいだろうか。冒険者みたいな格好をした男性が複数名、俺達へ向け近づいてきた。


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