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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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情報集め

 作戦会議はその後も続き、以降の方針はまとまった。

 とりあえず情報集めに入る。この場所は竜の都なので、人間で俺達でやれることはそう多くないと思うのだが……幸いにしてギルドも存在はする。酒場などもあることだし、情報を集めること自体は、量や質などを問わなければそう難しくないはずだ。


 というわけで翌日ギルドへ向かい、三人で情報収拾を開始しようとした……のだが、個人的に予想通りの展開が待っていた。


「まあ誰もいないよな」

「そうだね」


 俺の言葉にリリーは同意。関所が封鎖されているので当然人もいない。一応ギルドの事務員はいるみたいだけど。

 まずは事務員さんに話し掛けてみるか……というわけで受付に行くと、


「……え!?」


 驚かれた。関所が封鎖されているので仕方がないと言えるのだが。


「あの、皆様はなぜここに?」

「……諸事情があって、ここへ入ることができたんですよ」


 そう口を開いて、都内の状況を確認する。とはいえ、ギルド側……即ち人間側はあまり情報を持っていない。


「噂によると『山の王』の統治に不服な存在が色々と動き回っている……とかありますが」

「こちらに情報は入っていませんね……というより、我々の立場はこの竜の都では低いので」


 ――まあギルドの冒険者が活躍するような場面はないよな。何かあれば警備隊にでも連絡すれば解決できるし、そもそも護衛とか敵も竜族だから人間の身が危ない。

 結果として情報については収穫無し。なら次は酒場かな……この面子で行って舐められはしないかという不安要素もあるにはあるのだが……、


「ま、とりあえず行くだけ行ってみて考えよう」


 そんな能天気なリリーの助言に従い、俺達は酒場へ。一応昼間なのだがそれなりに盛況で……ただ入口に紙が貼ってあった。


「お酒は一人二杯まで、って書いてあるね」

「関所が封鎖されたことでイファルダ帝国から調達できなくなってるし、仕方がないよな」


 確か竜族でも独自に酒を生産していたはずだけど、都の規模から考えて需要の方が多いってことかな。現在はストックもあるから混乱はないけど、関所封鎖が長期間となればどうなるか。

 俺達は軽食でも注文しつつ様子を窺うことにする。談笑しているのは普通の人々だが……人間ではなく竜族で間違いない。


 昼間から飲んでいるのは例えば夜勤明けとかそういうことだろうか。推測の余地はあるけど深くツッコミを入れるつもりはないので、そこは気にせず誰かに話し掛けてみるか――


「ずいぶんと変わった団体さんだな」


 と、俺達に話し掛けてくる竜族が。ちょっとばかり顔を赤くする、中年男性。


「冒険者か? そんな稼業をやっているのは人間くらいだが」

「……実はここに仕事で入り込んでいまして」


 そう俺は口にする。


「やっと仕事が終わり帝国へ戻ろうとした矢先、関所が封鎖されたんですよ」

「おお、それは災難だったな」

「おかげで路銀も減るばっかりで」


 ははは、と男性は笑う。


「まあまあ、こういうこともあるさ。そんなに経たずして封鎖も解除されるだろうし、心配ないさ」

「何かお触れがあるんですか?」

「いや、まだ新しい情報は出てないさ。でもな、長期間関所が閉じれば生活に支障が出るのは間違いないからな。お偉いさんもすぐに解除したくてウズウズしてるさ」


 ……ふむ、都に暮らす竜族は楽観的に物事を見ているな。


「この封鎖の原因とか、わかりますか?」


 なんとなく尋ねてみると、中年男性は身を乗り出し、


「……不安そうだから言うが、あんまり事を荒げるんじゃないぞ?」

「わかりました」

「噂だが『銀翼の竜』っていう組織が色々とやらかしているようだ」

「組織……?」

「王様の執政に反対する輩が集った反政府組織かな。それなりに支持者も多いようだが、多くは迷惑がっている」


 そう男性は語ると、肩をすくめた。


「まあわからんでもないがな。王様は別に失敗とかはしていないんだが、不満の溜まる政治をしている」

「不満、ですか」

「数年前に王の右腕とも呼べる側近が亡くなってなあ。そこから政治がギクシャクし始めた。まあ王も色々と頑張っているようだし、暮らし向きが悪くなったわけでもない。だから様子を見ようって意見が大半なんだが……元々王に不満を持っていた勢力がここぞとばかりに増長してなあ」

「……そういう組織って、認められるんですか?」

「意見は必要だろうってことで、王様も放置してたんだよ。ただ、関所を封鎖する事態となっていて、組織は何をやっているんだと憤慨する者だっているくらいだ。現在、説得して無茶な行動を止めさせるように動いているって話もあるが」

「組織は元々、そんなに攻撃的だったんですか?」

「いや、そんな活動をするようになったのは、数ヶ月前かららしいな。俺も具体的なことは知らないが」


 その時『闇の王』に触れたとか、そういうことか?


「俺が知ってるのはこのくらいだが、何か質問は?」

「ありがとうございます、話してくれて。そうなると、王様が組織の方々を捕まえないと解決しないかもしれませんね」

「そうだな。ただ関所については防備をより強固にするとか、そういう対策を施して終わりだろ……と、そろそろ戻らないと。じゃあな」


 フラフラと男性は自分の席へ戻っていく。


「噂レベルではあるけど、竜族の間では情報共有されているっぽいな」


 俺の感想にクレアは「そうね」と同意し、


「組織の行動について疑問視する者もいるようね……さて、組織に突っ込んだ情報を得たいけれど、どうしようかしら?」

「俺達は人間だし、下手に干渉すると怪しまれるよなあ……かといってゴルエンもあまり情報は保有していない様子……せめて組織のトップくらいは誰なのか正確に把握したいところだが」


 もし集会などに入り込んだとしても、顔がわからないと攻撃できないし。


「……方法、なくもないけど」


 リリーがふいに呟いた。それに俺達は一斉に顔を向け、


「本当か?」

「でも結構無理矢理な方法だよ?」

「言い方で嫌な予感がするんだが……例えば路地裏とかを歩いてみて引っ掛かったやつをしばき倒して尋問するとか?」


 リリーが目を丸くする。おい、まさか。


「図星なのか!?」

「私達の面は割れているんでしょ? なら、こっちを見つけて攻撃してもおかしくはないよね? ゴルエンだったらその辺り上手く処理してくれるだろうし」


 言いながらリリーは酒場を見回す。


「さっきの男性が話す内容を考えれば、組織の構成員をはっ倒しても非難の目はあまり向けられそうにないし」

「……酒場に留まっても男性以上の情報は手に入りそうにないからなあ。結構強引だけど、ゴルエンとしてもその辺りの情報は欲しいはずだよな……」

「なら、やってみる?」

「ただし、その前に一つやらないといけないことが」

「僕ですね」


 アゼルが手を上げる。そう、彼だ。


「うん、魔装をどこかで調達してこよう。話はそれからだ」

「あ、ここへ来る道中にそれらしい店を大通りに見つけたわよ」

「本当か、クレア? ならまずはそこへ行ってみるか……値段については要相談だけど」

「ゴルエンがいざとなったら必要経費で払ってくれるでしょ」


 リリーの言葉にそれで良いのかとツッコミを入れたくなるが……まあ『山の王』と手を組むのだ。そのくらいの報酬なら許容範囲、かな?

 というわけで本格的に行動する前段階。アゼルの武器を手に入れるべく動くことに。そこから食事を軽く済ませ、俺達は店を出た。


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