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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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暗躍組織

「さて、噂に上っている退位についてだが」


 俺達に武具の情報を約束した後、ゴルエンは続けた。


「私を見てわかると思うが事実ではない。無論、私が言い出したわけでもない……どうやら私に反乱を起こそうとしている者達が噂を流している」

「……情報を操作することはできないのか?」


 そんな話が出たら面倒だし、そもそも反乱している側が流した情報なんて信用されなさそうだけど。


「まあ、簡単に言うと城内に相手のスパイがいるらしく」

「おい!? そんな悠長に言っていいのか!?」


 下手するとこの会話だって盗み聞きされているかも――と思っていると、


「心配するな、ここの人払いはきちんとしてあるからな。問題の退位云々の情報だが、処理する速度よりも噂が伝達する方が早い。ただこれは、もう一つ要因がある……反乱側の勢力がずいぶんと多いのだ」

「多いって……?」

「まだ『闇の王』に関連しているかどうかは不明だが、明らかに怪しい動きをしている勢力は目星がついている。名は『銀翼の竜』。私を倒し新たな国を打ち立てるべく、暗躍している組織だ。私の存在をよく思わない者達が集い、数を増やしている」

「……それ、つまりゴルエンの治世が上手くいってないってことじゃないのか?」

「そうとも言うな」

「おい」


 さすがにツッコミを入れたらゴルエンは笑い始めた。


「そんな顔をするな。私のやり方は別に強引だとか、圧政とかそういうわけではなく、言ってみれば中途半端……だからこそ、やり方が気にくわないと考えて反発する輩が登場するわけだ」

「……これ『前回』もあったのか?」

「ああ、火種は抱えていたな」


 元から存在していたのは事実なのか。


「ただ、組織の動き方が性急なのは気になるな。それは明らかに『前回』と違う」

「ということは……誰かが手を貸しているとか?」

「先ほど事情説明の中で出てきた仮面の女……その辺りが関係しているのかもしれない。ちなみにだが『前回』は組織そのものもある程度大きくなりつつあったが、本格的に動き出す前に『闇の王』が現われて全てうやむやになった」


 まああれが出てしまったのであればどうしようもない……。


「ま、記憶が戻ったからその対処法はいくらか思いつく。よって、心配する必要はないぞ」

「それならいいけど……」


 俺達が現われたことで解決するのなら良かったのかな?


「で、俺達は何をすればいいんだ? 調査と言っていたが」

「彼らは定期的に集会を開いている。そこに潜入してもらって、リーダー格の首根っこを捕まえてもらえれば」

「簡単に言ってくれるけどさ……」

「レイトの実力なら朝飯前だろう?」

「……実力的な話じゃなくて、問題は俺達の面が既に割れているところなんだよ」


 襲撃を受けたことを思い返し、俺は言う。


「三体の竜は即座に倒して捕まえてもらったけど、あの調子なら俺達のことを観察していて間違いない」

「ほう、言われてみればそうだな……ということはやり方を変えるか」

「具体的にはどうするんだ?」

「殴り込みでいいか?」


 ……実は大して考えていないのでは?


「言っておくが私はきちんと考えているぞ?」

「本当か? まったく信用できないんだけど……」

「今の局面においては、何か策を要するよりも力押しで攻めた方がいいという話だ……ただ、やり方そのものについては少しばかり注意する必要があるな。支持者も多い組織だ。彼らを倒した後、彼らが騒動を起こしたという事実を上手く広めて納得してもらう必要がある」

「現状、関所を封鎖したことについて都の竜族達はどう考えているの?」


 リリーからの質問。するとゴルエンは、


「色々と噂が錯綜しているようで、混乱しているが……組織の面々が何やらやっているため、という意見が多いようだ。まあ実害も出ているからなあ」

「その辺りの話を上手く広めて、敵を減らす方が先決じゃないかな?」

「ま、両輪でいくとするか。実働についてはレイト達に任せる。私は情報操作に終始しよう」


 ……下手に動かれるとそれはそれで面倒なことになりかねない雰囲気だからな。役割分担をして対応していくのがベストか。


「ということわけで、レイト達はしばし町に滞在してくれ。交易をすることができなくなっているが、食い物に困るようなことにはなっていない。そこは心配するな」

「わかったけど、何かあればお呼びが掛かるの? その間にこちらで情報を集めてもいい?」

「構わないが、下手すると組織の奴らが勘づいて攻撃を仕掛けてくるかもしれないぞ」

「そういうことなら、上手く利用して」


 リリーの言葉にゴルエンは「なるほど」と一つ呟いて、


「なら、ありがたくそうさせてもらおう……というわけで、頼んだぞ――」






 俺達は城を離れ宿をとる。休憩所と同じく二部屋借りて、男性部屋の方に固まって話し合いを開始する。当面はここが拠点になりそうだな。


「一番の疑問点は、組織の急な動きですね」


 先んじて口を開いたのはアゼル。彼は腰掛けて話を始める。


「支持者が相当数いるということは、国家転覆を狙っている組織にしろ、ある程度はまっとうな形で変革しようと考えていたのでしょう。力によって理解させるという方法よりは、それなりに支持をされる方法のようでしょうし」

「ゴルエン自身が無茶苦茶強いというのも関係しているのだろうけど」


 扉を背にして立つ俺は肩をすくめながらアゼルに続く。


「彼を倒すというのは並大抵のことではないからな。組織側としては支持者を得て切り崩してからじゃないと、成功しないって考えなんだろう」

「甘い言葉で誘って、というわけですか」

「そういう可能性もあるけど……あるいは本来は王を打倒するのではなく、ゴルエンの政治を変えてもらうために集った組織かもしれない。そういう場合なら、リーダー格が変心したって可能性も考えられる」

「『闇の王』の力を得て……だね」


 リリーは椅子にもたれかかりながら言う。


「仮面の女から力を得て、自我が変質した……イルバドとかルーガ山脈の魔術師とかを見ればそうなってしまうのは至極当然。竜族である以上は多少抵抗とかはできるかもしれないけど、結局行き着く先は同じ」

「そういうことだ。正当性のあるやり方で変革を実現しようとしていたが、力を得たことにより無茶苦茶な方法に出た……と考えてもよさそうだな」

「私の疑問は二つね」


 今度はクレア。彼女はアゼルとは違うベッドに腰掛けている。


「一つはリーダー格が『闇の王』の力を得ているのかどうか。そしてもう一つは……これは『闇の王』絡みの事件であることを前提に話すけれど、仮面の女はなぜこんなことを?」

「そもそも、仮面の女はどうやって『闇の王』を使ってくれそうな存在を知ることができているのかが疑問だな」


 俺は頭をかきながら、話す。


「イルバドは力が欲しかったみたいだから、安易に釣られてという可能性もある……が、ルーガ山脈の魔術師はあの場所に赴かなければならない以上、あの場所に魔術師がいることを知っていたはずだ。そして次は反乱組織のリーダー……とてもじゃないが交易をしている商人達が持つ情報ではリーダーには辿り着けないだろ。さすがに偶然とは言いがたい」

「仮面の女は、『闇の王』を使ってくれそうな存在を把握した上で、力を提供している?」


 リリーの疑問。俺は頷き、


「まあ闇がそういう存在を検知している可能性もあるが……ここは確かに疑問点だな。仮面の女の正体をつかむ上で、重要な点になるかもしれない。よって、俺はこの疑問を記憶に留めておくことにするよ――」


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