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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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仕事の報酬

「……事情そのものは理解できた。正直『闇の王』に関わっている私でも、君達に生じたことは信じられないものであるが……無下には扱わない」


「ありがとうございます」

「そしてこの私も『闇の王』と戦った記憶がある。それを戻すことができれば、なお良いということか」


 ――記憶を戻さなくとも手を貸してくれるのであれば、別に戻す必要性は薄いか? いや、それでも俺達に明確な理解を示してくれる方が良い形にはなるか。


「うーん、そうだな。ではまず、私にそれを試してくれないか?」

「え、王に?」

「そうだ。信頼を得ていなければ無理だということは理解したが……私は事情を理解した。そうであれば成功するかもしれんぞ」


 どうなのか……やる意味はあるけど、そう簡単に同意して良いのか。

 俺は魔力に触れている……まあ『森の王』には必要だからやったけど、そういう内面に触れるというのは王としてはあまり好ましくないように思えてもおかしくないが、


「別に危険がないのならば問題はない。それに」


 と、ゴルエンは笑みを浮かべる。


「少々興味もあるからな」

「……どういう効果なのか、興味を抱いたということですか」


 俺の言葉にゴルエンは頷く。なるほど、彼らしい。

 『前回』のゴルエンならばこういうことを嬉々としてやっていただろう。まあそういうことなら、俺も遠慮無くやらせてもらおうか。


「では、少し近づきます」

「ああ」


 ゴルエンへ近づく。玉座は階段を三つ上った先にあるのだが、その一番下に立ち、ゴルエンと目が合った。

 そして感じられる魔力。この距離なら問題なく瞳の奥を見ることはできるらしい……果たして――


 次の瞬間、パチリと音がした。これはどうやら成功した。

 さて、どうなるか……ゴルエンの目の色に変化が生まれる。そして、


「……ふむ、なるほどなあ」


 やがて、頬がつり上がっていく。


「面白い効果だな、これは。レイトの力によるものか、それとも他に何か要素があるのか……理由はわからないが、少なくとも『闇の王』に関連することであるのは間違いないだろう」

「これが『闇の王』のもたらすことだって言うのか?」

「少し違う。直接的な関係性ではなく、闇が世界を飲み込んだことによるものか、あるいはレイトが生き残ったためか……その辺りが原因とみた」

「推測は勝手だけど、外れていたら恥ずかしいぞ」

「別にその辺りは気にしていないから問題ない……さて、久しぶりだなレイト」


 ニカッと笑うゴルエン。うん、俺達にとって見覚えのある顔だ。


「うむ、どうやら複雑なことになっているようだな……長話になりそうだ。場所を移すか」

「わざわざ謁見という形式にしたのに、ここから移動するのか?」

「食事くらい共にしてもよかろう」

「……いきなりこちらも信用されると、ゴルエンの配下に怪しまれるんだよ」

「お、そうか」


 まったく……こっちが呆れたように肩をすくめるとゴルエンは笑い、


「いやすまんすまん、記憶が戻ったことで王としての立場も忘れてしまった」

「勘弁してくれよ……で、アゼルの問い掛けについてはどうだ? 関所の封鎖……これは『闇の王』に関連するものか?」

「正直、まだその辺りはつかめていない。相手の全容もまだつかめていないからな」

「退位の噂については?」

「まあ待て」


 さらなる問い掛けにゴルエンは手で制した。


「ならばゆっくり説明するとしよう……ま、そう長くはない。配下に対する態度もあるし、ここで説明することにしようか。できれば食事くらいは共にしたいが……そうだな、この仕事が終わり、労うという意味合いでそうした席を設けることにするか――」






 ゴルエンが異変を感じ取ったのは少し前。この国へ入ってくる物資の中に、異様な気配を見つけたらしい。


「それが『闇の王』と関連する物かはわからない。そもそも闇をこちらに引き寄せるための資材については、私も把握しているがそうした魔力を湛えているわけではないからな」

「それと『闇の王』とは別件ってことか?」

「私はそうではないと思っている……つまり、二つは繋がっている。『森の王』オディルが資材について調査していたのなら、物資がこの都の中に入り込んでいることは間違いないだろう。だがその他に……例えば『闇の王』にまつわる武具などが流れ込んでいたら、私が異変を察知してもおかしくないだろう?」


 ああ、そういう見方もできるな……誰かが闇の力を取り込んだ物を作り上げた――この場合、仮面の女が最有力候補か。


「だからこそ、私は調査に乗り出したのだが……手痛い反撃を食らった。そんなことをすれば逆に怪しまれるはずだが、相手も開き直ったのか活発的に活動するようになっていた」

「それにより、関所を封鎖したと」

「そうだ。イファルダ帝国側に被害が生じれば、面倒なことになりかねないからな……仮に国が動かないとしても、竜族に対する風当たりは強くなるだろう。そういう事態になることは避けたかった……よって、関所を封鎖した」

「竜達が山道に跋扈していたのは……」

「敵の狙いはこちらの疲弊のようだ。よって関所を長く封鎖することができれば、必然的に都は混乱し、私の威厳も下がるだろう。同胞が反乱を起こし、なおかつ私がそれを捕らえることができない……それだけで、大きな問題を生む」


 深刻そうに語るゴルエン。かなり大変な状況であることは間違いない。


「よって私としては全力で解決に取り組んでいるわけだ」

「一ついい?」


 と、リリーが手を上げて質問する。


「これから私達はゴルエンへ協力するつもりでいるけど、私達が活躍したらあなたの面目は立つの?」

「そこはほら、色々とやり方があるだろう?」


 ああ、つまり俺達がやったのではなくゴルエンがやったと情報操作するわけだ。


「まあ武功を得ることができなくなるのは不満かもしれないが」

「こちらとしては変に目立って帝国に目をつけられると面倒なことになるから、ゴルエンの手柄にしてもらっていいさ。ただしその代わり、報酬はもらうからな」

「金を要求する面々には見えないが、何が望みだ?」

「情報を……俺達は『闇の王』が本格的に顕現した場合に備えて準備をしている。強力な剣とか、魔装を望んでいる」

「リリーやアゼルを強化したいわけだ」


 ゴルエンは二人を交互に見る。


「リリーについては……その腰の剣、エルフ由来のものか?」

「正解。オディルからもらった業物よ」

「対するアゼルは案内役としてここを訪れたため、まだ武具を所持してすらいない」

「今の僕に戦闘能力はないですね」

「なるほどなあ。だからこその武具か……ふむ、いいだろう。ならば私が知っているとっておきを渡そう」


 『山の王』のとっておき、か……どんなものか尋ねようとすると、


「まだ話せない……が、リリーの武器候補は私が保有しているわけではないため情報だが、そちらが現在所持しているよりも優れた物であるのは確実だ。アゼルには武具を渡せるが、下手すれば『前回』を超えるかもしれない」


 それほどの物が……? 一体どこにあるのかと気になったが、ゴルエンはこちらの言葉を遮るように、


「今回の仕事が終わったら話そう……というか、この仕事が終わるまではそこへ向かうことはできないと言うべきか。首謀者などについては推測できている。その調査をまずはレイト達に頼もう。そうして解決したら、最高の情報を提供しよう――」


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