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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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王への説明

 翌日、俺達は兵士に見送られて一路竜の都へ。その道中で敵襲に遭ったら面倒だと思ったのだが……結果的に何もなかった。

 よくよく考えれば二日続けて襲撃するとかさすがに敵としてもやってこないだろう……というわけで結果として無事に竜の都へ到着した。


「これはまた大きいな……」


 そういう感想を俺は述べる。リリーとクレアは感心しきりで、目前の光景を眺めていた。

 山道からは竜の都の全景を見渡せる場所に行き着いた。結構険しい道の果てに辿り着いた場所は、きちんと区画整理されたまさしく都。山脈に存在する巨大な盆地に建てられたようで、帝都と比べればさすがに劣るけど、エルフの都と比べれば明らかに大きい。


「ここからは、僕が案内します」


 アゼルが先導役を買って出る。俺を含めた三人はそれに従うことにして、道をさらに進んでいく。

 程なくして都の入口に到着。門はあるけれど城壁の類いはない……まあ当然か。そもそも外敵に襲われるようなこともないから、堅牢な城壁を作る必要性もない。


 人間の登場に門番は少し驚いた様子だったが、事情を説明するとあっさりと通してくれた。そこから大通りに入る……少し風が強いせいか、ちょっとだけホコリっぽい。


「あそこに城があるの、見えますか?」


 アゼルの質問に俺は真正面を見据える。うん、確かに城がある。


「都はあの城を中心に形成されています……ゴルエン様が町の中心であるということを、町の構造的にも表しているということですね」

「それだけ『山の王』は偉大だ、と教えているということ?」


 リリーの質問。アゼルは「そうです」と肯定し、


「竜は変化の能力を持っているために、普通の人間以上に強い種族です。それ故、昔は気性の荒い竜が暴れ回るというケースが多かった。これは強大な力を持っている『山の王』でも、町を破壊できるだけの能力を有する竜相手にきちんと支配できなかったことを意味します」

「あー、昔から反乱とかは日常茶飯事だったってことか?」


 こちらの疑問にアゼルは「昔は」と前置きする。


「現在では『山の王』の権威も相当にある上、城に常駐する親衛隊が目を光らせているため、暴れるような輩は存在しません……いえ、存在しないはずだった、と言うべきでしょうか」

「今回の騒動だな……『山の王』による支配体制に問題が出たってことか」

「退位表明により、暴れ出したのか。それとも暴れ出したために退位を表明したのか……そこが重要だね」


 リリーは城を眺めながら告げる。


「前者なら、ゴルエンがどういう理由で退位を言い出したのかが最大の焦点になる。一方で後者であった場合は治安維持が機能しなくなったので、新たな王を決めるという流れになるっぽいけど」

「どちらにせよ、あまり良い話ではないな……例えば病気とか、そういう問題があったのなら退位もやむなしだが」


 俺達と『前回』戦っていた時はピンピンしていたからな。作戦会議の際にクレアが俺達の存在により状況が変化し始めたと言っていたわけだが、病気の類いならば俺達が立ち回ろうが変わらない部分ではあるように思える。ということは、彼自身の問題ではないということなのだろうか?

 やっぱり『闇の王』関連か……? 色々疑問を抱きながら城へと到着。アゼルが守衛に話し掛けると「少し待て」と言い渡され、城の前で待つことに。


 五分ほどだろうか……兵士に「中へ」と言われ、俺達は入城する。室内は小綺麗な印象を受けるもので、威厳などもあるにはあるのだが、外見と比べ少しこじんまりしているような気もする。

 というより、竜族の城ということで壮大なイメージを抱いていたのだが、予想外にも普通だったと言えばいいか? やがて俺達は両開きの扉へと辿り着く。兵士が開けると、そこは玉座の間だった。


「ようこそ」


 野太い声。玉座には……見覚えのある顔が。ゴルエン――格好は法衣姿で以前は鎧姿だったのでだいぶ印象は違うし、何より大きな違いが髪の長さか。元々長かったというのは聞いていたので整えられた長髪を見ても特に驚きはしなかったのだが……法衣と長髪。これでずいぶんと印象が違うな。

 俺達は部屋の中へ入る。扉が閉まるとまずアゼルが話し始めた。


「お時間をとっていただき感謝致します、ゴルエン王」

「別に構わないさ……というより、思ったより来るのが遅かったと思ったくらいだ」

「本来は父が訪れるべきだったのかもしれませんが、あいにく商人達などへの対応で忙しく」

「そこは申し訳なかった……が、その理由については察してもらえるはずだ」


 ――ふむ、どうやら俺達が竜を追い払ったことについて耳に入っているらしい。


「はい、竜が街道を進む人間を襲う……ということですね?」

「そうだ。現在のところ、犠牲者が出ているわけじゃないが、いずれ被害を出していただろう。この一件が解決しない間はとてもではないが山道を開放するわけにはいかない」

「……それについて、話をして頂くことは可能ですか?」

「事件の詳細についてか。これが単なる反乱であれば私も即座に対処するのだが……少々込み入った事情があるため、封鎖をし続けている……話しても構わないし、そちらとしては納得の理由がいるのだろう。ただ、少々面倒な内容だ」


 面倒、ということはやっぱり『闇の王』か……? 疑問に思っていると、ゴルエンは続けた。


「それでは早速本題に入るとしようか。アゼル君がいるということで通したわけだが、用件は?」

「――まず、最初に一つ確認をさせてください」


 アゼルが口を開く。その態度からは一気に核心へ迫る気だ。


「現在、竜が山道で暴れている……どういう経緯なのかこちらにはわかりません。しかし、それは……『闇の王』が関係していることでしょうか?」


 もしこれで違うとなったら、なぜそんなことを急に言い出すのか、と警戒されてもおかしくないのだが……途端、ゴルエンが驚いた。


「その存在を知っている? 加え、何か根拠があるような様子だな」

「順を追って説明します。私は単なる案内役であり、本題は後ろの三人……彼らは『森の王』からの協力を得て『闇の王』を追っている者達です」

「ほう、そうなのか……どういう経緯だ?」


 アゼルは一度俺達を見た。詳細を話していいのか、最終確認というわけだ。

 こちらは黙ったまま頷いた。ただ、容易に信じてもらえそうにないと思うのだが……。


「――込み入った話となりますが、よろしいですか?」

「ああ、構わない。むしろ『森の王』が関与しているのだ。複雑な事情はあってしかるべきだろう」

「では、説明致します。最初に彼らがどういう方々なのかを詳しく語ることにします」


 アゼルが俺のことやリリーのことについて喋っていく。ひとまず興味を抱いて話を聞いてくれたが、ここからどうやって記憶を戻すのか。

 事情を説明するだけで信頼を得ることができるのであれば、それに越したことはないのだが……沈黙する間にアゼルは経緯を全て話し終える。対するゴルエンは口元に手を当て思案する仕草を見せた。


「ふむ、なるほど……」


 そう応じたが、どこまで信じているのか……アゼルが話したのでそれなりに受け入れているのかもしれないが……こちらはゴルエンの反応を待つしかない。成功したのかどうか……緊張さえする中で、ゴルエンは俺達に対し口を開いた。


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