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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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竜の騒動

 関所を抜けてすぐは、問題なく進むことができた。兵士達が言うにはどうやらゴルエンを打倒しようとする勢力がいるようだが……、


「繋がっていそうな雰囲気だな」


 俺はそんな感想を述べる。オディルが語っていた『闇の王』に関する資材。そしてゴルエンによる封鎖。両者は関係ないと断言することはできず、むしろ怪しさ満点だった。


「ゴルエンを倒して、どうするつもりかしら」


 クレアが小声で俺に問い掛けてくる。ちなみにリリーはアゼルと共に前を歩いており、こちらの会話に気付かれることもない。


「敵さんはそこまで考えていないんじゃないか? あるいは何かしら策があるのかもしれないが、それを調べるのは無理だろう」

「ま、それもそうね……」


 言いながらクレアは周囲を見回す。


「変化した竜族と戦うことになるのかしら」

「……なんだか、戦いたくてウズウズしていそうだな」

「いえ、そんなことないわよ?」


 クレアが笑いながら話す。とはいえ内心はバレバレである。


「正直、今のクレアからしたら竜族と戦っても得られるものは何もないと思うんだけど……だって眷属クラスの魔物も倒せるんだぞ?」

「戦って楽勝だから、という話じゃないわよ。なんていうのかしら、竜族と戦うなんて今までなかったから、どういう感じなのか色々想像しているだけよ」

「余計に物騒なんだけど……」


 というか、思考が完全に戦闘ジャンキーのそれである。もし記憶が戻ったアゼルがいたら、頭を抱えていたはずだ。


「確認だが、余計なもめ事は起こすなよ?」

「もちろん。でも、向こうから攻撃してきたら話は別よね?」

「……とりあえず、相手がどういう存在なのかを見極めてからだな」


 闘争心をむき出しにし始めた彼女に俺はそんな風に語るしかなかった。


 これでもし竜族が攻撃してきたら、ご愁傷様としか言いようがない。そもそも魔法使いの俺に圧倒的な戦闘能力を持つリリーとクレアである。アゼルというハンデを抱えているにしろ、はっきり行って誤差のレベルだ。


 『闇の王』の眷属が来たら話は別だろうけど、現段階は資材を集めているところのはずで、そういう相手との交戦はないだろう。今までは既に力を持っていた敵と戦っていたわけだけど、今回は違う。竜族という人間とスペックの違いすぎる存在が相手だが、これまでの敵と比べれば、楽な気もしてくる。


「レイト」


 そんな風に考えていると、リリーが俺の名を呼んだ。


「今のペースだと、今日中に辿り着くのは厳しいらしいけど」

「ああ、それじゃあ休憩所に立ち寄って休む心づもりでいこう。アゼル、それでいいか?」

「はい、申し訳ありません」


 見た目通り体力とかもなさそうだし仕方がないよな。俺達だけなら余裕で竜の都まで辿り着けるのだが、彼がいるとなれば話は別。

 ここで無理して休憩所に立ち寄らずに行こうとする理由もないし、今日は道中で一泊ということで問題はないだろう。それに、休憩所にいるはずの兵士とかに話も聞きたいからな。


「ま、ゆっくり進むとしよう。アゼル、自分のペースで構わないから」

「ありがとうございます」


 アゼルは礼を述べ、リリーとの話を再開する。そこでクレアは俺へ、


「うーん、体力的な物は戻らないでしょうし、彼自身大変そうよね」

「旅をするとなれば否が応でも体力はつくさ」

「そうかしら……あと、魔装はどうするの? 彼が所持していた魔装は、色々と手が込んでいたはずだし」


 ――アゼルが魔法使いなどと呼ばれるほどの力を持っていたのは魔装も関係している。彼の武具は、ありとあらゆる状況に対応できるよう調整された一品。その効力が多岐に渡っていたがために魔法使いと呼称されることがあった。


 ただし、その魔装は色んな技術の複合体で、作成は様々な種族の力も必要だった。つまりすぐに作成することはできない。

 もしアゼルを仲間にしても『前回』の魔装がなければ十全に力を発揮することはできない……そうクレアは思ったようだ。


「懸念するのは至極当然の話だ」


 彼女の言葉に対し、俺はそう応じた。


「でも、魔装を操っていた時の技術自体は戻ってくる……クレアはアゼルが以前使っていた魔装がないために戦力にできるのか疑問みたいだけど、その技術さえ戻ってくればやりようはある。だからこそ、アゼルを仲間にしようと俺とリリーは結論づけた」

「それならいいけど……でも全盛期通りの活躍をするのは無理では?」

「あの魔装については竜族とか、エルフとか……そういった面々からの技術も必要だったけど、アゼルはメンテナンスなどをしていた関係で、構造なども把握していたようだし、この世界で再現することも可能かもしれない。まあ材料がないだろうからすぐにとまではいかないが……記憶があれば、代替物を作ることは可能だと思う」

「そうなの。私としては難しいことはわからないけど、レイトがそう言うなら信用するわ」


 ひとまず納得してくれた様子。現状のアゼルを考えると不安になるのは仕方がない。


 仲間になっても戦力にならないのなら問題だからな。ただ、現在のアゼルに技術が蘇れば、竜の都で魔装を購入しても問題はないだろう。

 あるいはゴルエンに頼んで何か用意してもらうとか……彼はアゼルの能力を一目置いていた。そこへ颯爽と現われて『闇の王』に関することで協力関係を結べば、何かしら支援があってもおかしくない。


 まあ今回の騒動が『闇の王』に関係していれば、の話だけど……などと考える間にも山道を進む。山道は左右を人の背丈くらいはある壁が存在するため、例えば崖から転落するといったことに陥ることはないけど、その壁を越えれば真っ逆さまに落ちていくのは間違いない。

 少しずつ進んでいるわけだが、この調子だと到着は……翌日の昼くらいかな? 山道は封鎖されているため俺達以外に歩く人がいない。これについては不気味だが……今回はそういうものだと割り切ることにしよう。


 リリーとアゼルは相も変わらず雑談を行い、俺とクレアはそれに追随。やがて一つ目の休憩所へ差し掛かったが、こちらは無視して昼前に辿り着いた建物の中に入った。

 兵士達は俺達の姿に驚いたが、すぐさま事情を説明して納得してもらった。


「そういえば、攻撃してくる竜族がいると関所で聞いたんですが」


 昼食を食べる間に近くの兵士へ話を振ってみると、相手はため息をついた。


「そうですね……現在、陛下が対策を行っているのですが、時間が掛かるようで当面山道の封鎖は続くようです」

「都の方はどうですか? 治安とか」

「さすがに町中で表立って動くような輩はいませんので、比較的平穏ですよ。ただ、人間との交易で得られる物品がなくなってしまったので、不満なども溜まり始めている様子。あまり長期間の封鎖は厳しいかもしれません」


 ……うーん、封鎖はどうしようもないにしても、これが長い期間、と想定しているわけではないようだ。ゴルエンがどう考えているか不明だが、末端の兵士達は長い間とは考えていない様子。

 まあ交易ができなくなっているし、この状況を維持は辛いだろうからなあ……ただ『闇の王』絡みであれば、すぐに解決するとは思えない。


 首謀者と『山の王』の我慢比べだろうか。俺達はゴルエンの記憶を戻せば手を貸せるし、早期に解決して恩を売るのも一つの手か。

 そんな打算的な思惑も抱きつつ、俺達は出発する。夕方には次の休憩所に入り休もう――相談を行い、俺達は山道を登り始めた。


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