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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第二章
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襲来する魔物

 川をさらに上流へ進んでいくと、その方向から何やら気配がした。俺達がさらに進んでいることから、魔物の作成者は迎撃モードへ切り替えたのだろう。


「……あからさまに攻撃してきたら、こっちだってさすがに怪しいな、と思うところだけど」

「始末した方が良いと思い始めたんじゃない?」


 俺の疑問にリリーが律儀に応じる。なるほど、確かにその通り。

 少しして森の奥から魔物が現われる。その姿は……巨大な蜂の姿をしていた。


「ずいぶんとまあ、悪趣味な敵ねえ」


 クレアが感想を述べた。確かに巨大な蜂なのだがずいぶんと気色悪い……で、森の奥から後続がドンドンやってきている。

 今度は数で押し込もうという気なのだろうか……蜂は間違いなく闇の魔力をまとわせている。その魔力がなければルーガ山脈で自然発生したなんて推測をした可能性もあったんだけど……目の前のは先ほど声がした人物によって、作成されたのは確定か。


 ただ、闇の魔力自体はかなり薄い。あれかな、女王蜂がどこかにいて、そいつが闇の魔力を分け与えているとか、そういうことだろうか?


「もし女王蜂がいるなら、そいつを速攻で倒さないと延々と出続ける……とかかな?」

「それだと面倒だね」


 リリーが率直な感想。ただ、面倒なだけで決して厳しいわけではない。


「とにかく、速攻で仕留めましょう」

「そうだな。ひとまず魔物の数を捕捉して――」


 襲い掛かってくる巨大な蜂の群れ。ただその能力は俺達からすればそれほど高くはなく、リリーとクレアは蜂が攻撃を仕掛けてくる前に一刀両断した。

 容易に撃破はできる様子。ならば攻撃面は……毒針と思しき針をこちらへ向けてくるのだが、リリー達はそれを弾き魔物を斬る。もし食らってもおそらく防御結界により皮膚にまでは到達しないだろう。そのくらいの力量差が魔物との間にはある。


 よって、ものの数分でこの場にいた蜂の魔物は全て消滅……ただ、ここからは魔物を作成する人物も本気になってくるだろう。


「……さっきの蜂についても、ルーガ山脈周辺に暮らす人からすれば絶望的な存在だ」


 そう俺はリリー達へ語る。


「よって、倒せるものなら倒しておきたいな……と、女王蜂らしき気配を見つけたけど、ここから少し脇へ逸れるな」

「そのくらいのロスは問題ないでしょ」


 リリーが楽観的に言う。魔物の作成者が逃げ出す可能性もゼロではないのだが……うん、魔物を放置もできないからここは魔物を優先しよう。


 ということで、俺達はその場所へ急行。すると巨大な蜂の中でさらに巨大な存在が。魔力もかなり保有しており、間違いなく女王蜂である。

 周囲には配下の個体が複数なのだが、女王蜂だけは飛ばず地面に体を置いている。


「短期決戦で決めよう」


 まとう魔力から厄介な敵ではあるが眷属クラスではないと判断。刹那、周囲を飛び回っていた蜂達が一斉に俺達へ向け急降下を行うのだが……リリーが剣を薙ぎ、刃から放たれた突風が機先を制する形で放たれた。

 羽根を持っているがために、リリーの風を受けたことで蜂達は一斉に動きが押し留められた。そこへクレアの見えない斬撃。それが横へ一閃されると――蜂達が見事に両断され、消滅する。


 女王バチはわずかに身じろぎして反応。何かしら攻撃をしようという気配を感じ取ったが、それよりも先にリリーとクレアが同時に踏み込んだ。

 リリーは風ではなく、炎を刀身にまとわせる。それが振り下ろされると、魔物が避けられず直撃し、業火によってその身を焼き尽くしていく。


 一方でクレアは炎に包まれた女王バチに対しトドメを刺すべく縦に剣戟を振り下ろした。これによりとうとう女王バチは体を崩す――あっさりと撃破に成功した。


「それほど強く……ないよね?」

「ああ、先日戦った個体と比べれば、な」


 ただ、数で押し込もうとする能力は傍から考えると心底面倒なのは間違いない。俺達が以前戦った眷属は爆発により蹂躙を繰り返していたわけだが、この蜂の眷属もベクトルは違えどかなりの破壊をもたらす……町に出現したら大惨事だろう。むしろ被害規模はこちらが上になるかもしれない。


「リリー、『前回』の戦いで蜂の魔物って出現したか?」

「私の記憶ではないね。そもそもそんな報告も存在していなかった」

「なら『前回』この魔物が表に出てくることはなかったか……不必要だとして斬り捨てられたか?」


 『闇の王』としても何かしらの基準で使役する魔物を選んでいたとか、そういうことなのかもしれない……考える間に俺達は先へと進む。とりあえず魔物の作成者が逃げ出すような雰囲気はないのだが――


「レイト、次が来るよ」

「断続的だな……相手としては消耗戦をする気なのか?」


 次の魔物は……これも見たことがないタイプ。狼っぽい姿をしているのだが、体毛は逆立ちハリネズミのようになっていた。


「あれは触れたら突き刺さりそうだな」

「魔力で硬度を上げているのかしら」


 そう呟きながらクレアは剣を構える――と、狼が突進を仕掛けてきた。

 ただ、まともに受けていたら棘が体に突き刺さる。そこで俺は杖を振りかざして雷撃を放った。閃光が炸裂すると狼の動きが鈍り――クレアの斬撃が、その頭へと叩き込まれる。


 狼は大きさもそれほどではないので俺達では容易に倒せる……さすがに体も小さいのでそれほど魔力を抱えられるわけではない、ということか。

 たぶん魔物の作成者は『闇の王』の力を用いて魔物作成の検証をしているのだろう。こう考えるとこれだけ多種多様な魔物がいてもおかしくはない。そうした魔物をあえてぶつけてこちらの動きを止めようとしているか、能力を探っているのか。


 もっとも最初に遭遇した眷属クラスに到達しているとは言いがたいため、足止めにもなっていない。突撃してくる狼を薙ぎ払いながら進むと……やがて、魔物が出てこなくなった。


「あきらめたのかな?」

「このくらいの魔物ではどうにもならない、という判断だろ」


 リリーの呟きに応じつつ、俺は進路方向を見据える。

 魔物作成者の根城近くには明らかに高い魔力があった。もしこのまま突き進めばそいつが姿を現すと思うのだが……いや、その前にまだありそうだな。


「リリー、クレア。前方からさらなる気配だ」

「了解……見えたね」


 リリーが視界に捉える。新たな魔物は巨大な鳥……グリフォンとか、そういう名称が似合う魔物だった。

 これまで遭遇した魔物と比べれば、まだ自然界にいそうな見た目。ただそれらが複数体存在しており、俺達を空からにらみつけている。


 その姿は縄張りを守っている親鳥のよう。まさに俺達が進むべき方角を守る、守護鳥とでも言うべきか。


「空中にいる相手だが……リリー、クレア。いけるのか?」

「当然でしょ」

「ええ、心配しないで」


 二人が相次いで答えると共に、グリフォンの群れが一斉に鳴き声を上げた。野太く、それでいて獣のような声。見た目は鳥でも、中身はずいぶんと違うらしい。

 同時、グリフォン達は一斉に口を開けた。その奥から明らかに魔力。上空から襲い掛かってくるというより、空から砲撃をして俺達を倒そうというのか。


「まるで爆撃だな」


 俺はそんな表現をした。実際、あの魔物が多数現われたら俺の想定通りの戦い方をするだろう。先ほどの蜂といい、つくづく厄介だ。

 よって、ここで全滅させる……リリーやクレアも同じことを思っているのか、目つきを鋭くし、今まさに光弾を放とうとするグリフォン達を、見上げることとなった。


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