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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第二章
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索敵魔法

 クレアが記憶を取り戻して翌日、俺達は再度ルーガ山脈へ向かうべく町を離れ北へ進路を向ける。前回とは異なり全員が同じ目的のために動いているので歩みも速い。

 そして、前回と目的も違う。調査ではなく『闇の王』の眷属を倒すこと……といってもまずは見つけなければお話しにならない。


 最大の問題は眷属が自然発生したのかそれとも人為的なものなのか、だが……これについてはイルバドの一件を考えても、十中八九人間の仕業だろう……というわけで、


「今一度流れを確認しておくぞ」


 俺はリリー達へ向け口を開く。


「目標は闇の眷属……俺達が交戦した一体だけでは間違いなく済まされないだろうから、他に個体がいないかを調べる。眷属は見た目がバラバラだけど、凶暴な……それこそ甚大な被害を及ぼす存在は『前回』の戦いで出現しているし、俺達には見覚えがある。その情報を基にして、眷属なのかどうかを確認する」

「そういう敵を倒していくと……で、あわよくば魔物を作成しているかもしれないので、その存在を叩き切る、と」


 クレアが述べると俺は「そうだ」と応じる。


「人為的な存在であると仮定して話をするけど、ルーガ山脈は魔物を生成しても気付かれる可能性がほぼないため、眷属作成にはうってつけの場所だ。イルバドのように『闇の王』の力を利用して魔物を作っているのなら、そいつは『闇の王』に関する情報提供者の命令に従ってやっている可能性もあるが……今は不明としておこうか」


 そこまで語ると俺は一度言葉を切る。


「話が逸れた。木を隠すのならば森の中……魔物の生成実験をしているのなら、普段から魔物が闊歩するルーガ山脈に目をつけるのは当然だ。もし人間が遭遇しても『獣の王』が現われたなんて噂になるくらいで人間の仕業とは思わないだろうし」

「さすがにこんな場所に『闇の王』に関連する敵がいるとは思わないし、『森の王』の調査からも逃れられる」


 リリーの言葉。うん、クレアの記憶を戻すために受けた仕事ではあるが、結果的に『闇の王』絡みの話になっている……眷属を早期にたたけるのであれば願ってもないことなので、運が良かったと思うべきだな。


「問題はその居所だ……山中を歩いて探すというのはあまりに非現実的。かといって魔法を使って無差別に捜索する場合は、魔力を拡散する以上は相手に気取られる可能性がある。自然発生した魔物も結構強いし、そいつらが近づいてこないよう魔力を探査している可能性もあるからな。よって広範囲を調査する大規模な索敵魔法については最終手段にしたい」

「でも、魔法が使えないとなら探すのは面倒じゃないかしら?」


 クレアの指摘。俺は「確かに」と同意し、


「もちろん手はきちんとある……眷属を使役する者がいるなら、当然俺達が戦った魔物についてもどうなったかの把握くらいはやるだろう。つまり、現地に赴いて調べる可能性が高い」

「その際に魔力を残していたら、捜索できると」

「ああ、そういうこと。それがわかれば索敵もやり方を変えることができる」


 俺はリリーのセリフに返事をする。


「つまり、今から向かうのは先日眷属と戦った場所だ……ひとまずそこまでは何事もなく到着できるだろう。調査して、相手の居所をつかんだら、本番というわけだ――」






 俺の話したとおり、ルーガ山脈に入ってからしばらくは平穏無事に山の中を進むことができた。

 同じ場所から山中の森へと入り、同じ場所から川岸に出た。そこで改めて周囲を見回すと……俺達が交戦したことによって川岸が色々と壊れていた。


「……川の流れが変わっているな」

「下流の方は問題無さそうだし、いいでしょ」


 リリーがフォローなのか口を挟んでくる。そういう問題ではない気がするんだけど。

 完全に自然破壊だけど、戻しておいた方がいいのだろうか……と思ってから元の地形がどんなものだったのかわからないので、どうにもならない気付く。あきらめよう。


「それで私達が眷属を倒した場所だけど」


 見れば、そこは窪地になっているのだが……うん、足跡がある。


「確実に誰かがここに赴いて調べたな」


 足跡を消さないのは、まさか人間がやってくるとは思わないから、かな? 眷属を倒したのが人間であっても、さすがに再びここへ赴くとは予想もしていないか。

 俺は窪地に向かって手をかざす。まずは魔力を採取する。といっても残留する魔力は微細であり、それを糸口にして今いる場所を捕捉するのは結構大変なのだが、俺なら可能だ。


 俺がやろうとしていることは、わかりやすく言えばDNA鑑定みたいなものだ。この現場に残っている魔力をサーチして、それを解析。そこから相手の足取りをつかむというわけだ。DNA鑑定と大きな違いは、解析してからすぐに相手の居所を探れるところ。

 さて、魔力は……うん、人間が残したものがある。俺やリリー、クレアのものとは異なる。四人目の人間だ。


「よし……えっと、相手の魔力がわかったから気取られないように居所を探るのは可能だ。でも、途中で魔物に遭遇する可能性はある」

「そこは私達がどうにかするってことで」


 リリーの言葉。ま、そういうことだな。


「場合によっては眷属と交戦する可能性もあるから……心してくれよ」


 二人が頷くのを見て、俺は索敵を開始。さて、この周辺から調べるわけだが……人間の気配があれば、割と目立つと思うので離れていなければあっさりと探すことができるのだが――

 そう思っていた矢先、俺は気配を見つける。川を上流に進んだ先にある、明確な瘴気。どうやら眷属クラスの魔物がいるみたいだな。


「姿形はわからないけど……どうやら、戦った眷属と同等くらいの敵がいるぞ」

「こっちに気付いた?」

「見つからないようにしているから、反応はしていないな……」


 とりあえず捜索を続行。さらに上流を探ると、瘴気が複数存在する。ただ、魔力的にはそれほど大きくはない。


「上流は瘴気が多いな……あれだけの瘴気がある場所に人間がいたら、最悪死ぬと思うんだが」

「魔物を作った人間が既に『闇の王』から力を得ているのなら、耐えられるんじゃない?」


 リリーの指摘に俺は確かにと心の中で呟く。つまり人間を現時点で辞めていれば、というわけだが……俺は窪地の足跡を見る。


 ここにあるのは人間の魔力で間違いない。つまり現時点で『闇の王』の力を取り込んだにしろ、まだ完全に人間を捨ててはいない、ということか?

 あるいは足跡などはあくまで人間のものしか残らないとか……これって実は検証したことないんだよな。まあ必要性がなかったからなんだけど。


 ま、今は追跡できるのは間違いないとして、納得しておこう……と、考えている間に上流に人間の気配を発見する。しかもそれは、


「当たりだな……滅んだ眷属について調べている人間は、川の上流にいる」

「よし、それじゃあ向かおうか」

「そうだな……ひとまず俺の魔法には気付いていないし、接近は簡単そうだ。あ、でも待った」


 さらに上流……というか、人間の気配が感じる少し奥。


「魔力の塊がある。この山脈には魔力溜まりもあるだろうから、塊というのは珍しくないと思うけど……それにしては異質だ」

「異質?」

「なんというか、単純な魔力の塊ではなく、囲いのような……ああ、そうか。拠点か」

「この場所にすみかがあるってことか」

「よほどの物好きじゃないとこんな所で暮らそうとは思わないが……どうやら敵は、ここで実験を繰り返しているらしいな」


 それは間違いなく、眷属の作成……ここでその人物を倒せば、『闇の王』が出現しても眷属が妨害に入ることはなくなる可能性が高そうだ。

 であれば、ここで倒す……そう決意し、俺はリリー達と共に歩き始めた。


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