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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第二章

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闇の異形

 翌日、俺達はクレアを迎えに行き、合流。さっさと進もうということで、進路をルーガ山脈のある北へ向け街道に出た。


「そういえば」


 町を出て、クレアはリリーへ向け発言する。


「決闘についてはいつでも受け付けるわよ。昨日戦い終わった後、まだまだ戦いたいという雰囲気だったからね」

「気が向いたらふっかけるよ」

「……仲良くしてくれよ」


 俺のそんなツッコミにクレアは「あはは」と笑った。


「なんとなーく思うのだけど、リリーさんが突っ込んでそれをレイトさんがフォローする、って感じかしら?」

「ああ、そうだな……と、別にさん付けする必要ないぞ。遠慮する必要はないし、何か要望があれば言ってくれ」

「お、太っ腹ね。なら私の方もそういう形でいいわ」


 ……リリーが派手に暴れなければ、たぶん関係がこじれることもないだろう。もし何かあれば強引に止めに入ればいいし。俺の言うことなら聞くだろうし。

 不安要素はそれほど多くないけど、この仕事一つで記憶を取り戻せるくらいに信頼を得ることができるのかはわからない……もし失敗したら色々と理由を付けて行動を共にしてもらうか、だな。


 そんな内心の呟きをよそに、リリーとクレアは何やら話をしている。どうやら剣術に関する話題らしい。リリーとしてはどういう技法なのかを教えてもらい、クレアはそれを嬉々として解説している。

 リリーは彼女の技法を参考にしようとしていて、クレアは強くなってもらう分には構わないということか、あっさりとそれを教えている。


 以前、共に戦った時に教えてもらっていたと思うけど、そこからさらに別のことを聞いているみたいだな……向上心があって良いと思うところだが、これは魔物との戦いに備えようではなく、次の決闘で絶対に勝とうという強い意志によるものだと思うので、俺は内心では苦笑する。

 ま、強くなるにはいいので放っておこう……若干不穏な空気を感じながらも、俺達は旅を始めることとなった。






 以降、ルーガ山脈まで俺達は順調に旅を続ける。とりあえずトラブルもなく進むことができたのは幸いだった。

 そうして俺達は麓まで辿り着いたのだが……一応、山へ続く道らしきものは存在している。とはいえそれは人が使うにしても狭く、獣道と呼んで差し支えない代物だった。


「魔の山、という感じね」


 クレアはそんな感想を述べた。彼女がここを訪れるのは初めてとのことで、白い頂を眺めている。

 標高があり、なおかつまだ春先ということもあってか山頂付近は雪化粧に覆われていた。もっとも俺達の目的は調査(名目上は)なので、そんな所まで登ることはないのだが。


「……依頼内容を確認しておくぞ」


 獣道へ入り込む前に、俺はリリーとクレアに告げる。


「調査というのは主に魔物についてのものだ。遭遇した魔物について記録を行い、その危険度を判定していく。もし強力な存在と遭遇した場合は、その特徴を列挙し、詳細をギルドまで報告すること……それが今回の仕事だ」

「倒せそうなら倒す、とも書いてあったね」


 リリーがギルドの依頼内容を口にする。そう、場合によっては撃破という形になっており、魔物を倒した証明ができれば特別報酬がもらえる。

 ただまあ、魔物を倒した証明というのは難しいし、基本的にギルド側も撃破については考慮に入れていないだろう……もっとも報酬云々関係なく彼女達は挑みそうな雰囲気だけどね。なんというか、両者共にやる気だし。


「それじゃあ、頑張りましょう」


 クレアが言う。そんな様子に俺達は小さく頷きながら、山への道を歩き始めた。

 まずは両サイドに森が広がる道。真っ直ぐ進むと山の麓へと辿り着くようになっているみたいだ。


 何気なく気配を探ってみるのだが、とりあえず魔物らしい気配はない。まあ街道からすぐに魔物、ともなれば帝国側も黙ってみていないはずだし、交戦は当面先かな。


「ねえ、二人に尋ねるけど」


 ふと、クレアが俺達へ質問を投げた。


「魔物の王……『獣の王』というのがどういう存在だと思う?」

「王様、ねえ」


 リリーは小首を傾げる。


「魔物を率いる以上は、すごい風体に思えるけど」

「巨大な魔物ってことかしら?」

「うん、そう。レイトは?」

「あー、そうだな……」


 たぶんリリーは『闇の王』の眷属を頭に思い浮かべながら喋ったな。実際、眷属と呼ばれた存在はどいつもこいつも大きかった。

 なおかつ、異形という表現が似合う……俺が肉眼で見た魔物は数種類。人のように二本の手足があればまだいい方で、果たしてそれは生物なのか、という気色悪い個体までいた。


 その中でとりわけ犠牲者が出たのは二体。一つは人間のような姿でありながら、巨大かつ周辺に魔力をばらまき破壊を引き起こす竜巻のような存在。

 特性からとにかく民間人に犠牲者が出た。町に入れば魔力の渦によって人間を倒し続ける殺戮兵器であり、凄惨な光景を作り続ける眷属に帝国側は幾度も討伐隊を編成し、対抗しようとした。けれど生半可な能力では太刀打ちできず……犠牲が広がったというわけだ。


 もう一体は動物というよりも植物といった方がいいだろうか。まるで木の幹や枝のような身体構造を持ち、それにより形作られた手で魔力を射出する。その姿はまるで異形の魔法使い……しかも扱う魔法は雷、炎、氷など様々で、『森の王』オディルが行方不明だったことからオディルの力を取り込んだのではないか、などという噂まで出たくらいだった。


 こうした魔物は『闇の王』に付随する者なのか、それとも『闇の王』という存在に乗じて現われたのか……途中まで不明だったが、とある魔物が『闇の王』を支援する動きを見せたため、闇に由来する存在だと断定した。


 ただ、この話が『獣の王』に当てはまるかと言えば――


「俺は、人間のような見た目を持った存在を押そうかな」

「お、人間?」

「別に思考能力を持つ者が人間に似た種族達だけ、と言うつもりはないけれど……例えば人間の成れの果て、とかで魔物を好き勝手に生み出している、なんて可能性もあり得そうじゃないか?」

「ああ、確かにそうね……でもそれじゃあ、私達は同族を斬ることになってしまうけれど」

「魔物発生なんかと関係があるのかはわからないが、少なくともルーガ山脈周辺を根城にして人々に危害を加えている以上、明確な敵だよ」


 指摘にクレアは「それもそうね」と応じ、納得した様子だった。

 さて、話をする間に森を抜け、山の麓が現われる。多数の絶壁が存在する岩山が出迎え、進路を阻んでいた。


 とはいえ、この辺りは……というかある程度は薬草などを採取するために、か細いが道が存在しているので、ルートは存在する。俺は道らしきものを指し示し、歩いて行く。


「調査だし、場合によっては数日掛かるかもしれないな」


 俺の言及にリリーは「覚悟している」と応じ、クレアも「付き合う」と言ってくれた。とりあえずこの仕事が終わるまでは共に行動できそうだ。

 記憶を戻す口実から始まってしまった調査依頼だが、ひとまず予定通りにことが運んでいる雰囲気かな……とはいえ肝心の仕事で手を抜くつもりはない。調査についても真剣に……と自分を戒めながら、山を進み続けた。


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