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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第二章
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仲間候補

 戦士イルバドを倒し、俺達は一路新たな目標を向けて行動を開始する。現時点で『闇の王』の力を得ようとする存在はいるはずだが、その足取りはつかめていない。だからといって俺やリリーは単なる冒険者でありそんな人間が情報収集をしてもあまり良い効果は出ないだろう。


 リリーの皇女としての力を用いれば使えないこともないのだが……ここで一番の問題はイルバドに力を当てた首謀者的な存在。そいつが人間であり、また王族関係者とかであったのなら……国を滅ぼすような存在であるため、帝国の中枢と関わりがあるのかどうか疑問ではあるのだが、例えば「国を滅ぼす」とかいう理由付けならばクーデターを画策している輩がいるなんて可能性もある。


 つまり、現時点でリリーの威光を使えば敵に俺達の行動が露見する危険があるわけだ。まあそもそもリリーの「威光」なんてものがどのくらいあるのかという疑問もあるし……誰かの記憶を戻せばいいのかもしれないが、これの発動条件だってまだ不明瞭なところがある。誰彼構わず使えるものなのか? もし無理矢理記憶を戻そうと策を講じて失敗したら目も当てられないので、ひとまず俺達は今やれることを実行するべく、移動を行っている。


 情報収集は『森の王』オディルに任せ、俺とリリーはまず仲間集めを行うことにした。記憶を戻せるのかは不明瞭ではあるが、リリーの威光が一応届き、なおかつ露見することもないだろう場所なので、どうにかなる。結果、進路は東。俺達はイファルダ帝国の北西部にいるのだが、そこから街道を進むことになる。


「話し合った結果候補は出たけど、一人は所在がわからないのが問題かなあ」


 と、リリーはこぼす。俺もまったく同意見であり、胸中で思考を始める。


 リリーと打ち合わせをした結果、明確に仲間候補となったのは二人。一人は帝国の皇族――といっても遠縁でイファルダ帝国北部に領地を構える人物の子息。名をアゼル=ローデルトという。

 リリーの二つ年下で、後方支援役として最終作戦に参加していた。その異名は『もう一人の魔法使い』。どういうことかというと、彼が所持していた魔装とその卓越した技術により、俺ほどではないにしろ、あらゆる局面を乗り越えられる――魔法使いに近い力を持っていたためだ。


 青い髪に金色の瞳を持つ絵に描いたような美少年であり、『闇の王』との戦いに加わって以降、女性からキャーキャー言われるような人物だった。もっとも彼自身ものすごく謙虚かつおとなしい性格だったので、そんな周囲の反応にタジタジだったのを憶えている。

 時には崩壊した前線を一人で支え続けたなどという武勇伝も存在する。俺やリリーとしても是非加わって欲しいと願う戦力であり、また屈託なく話のできる友人だった。


 そうした彼のいる領地へ向かっている……ただし、一つだけ問題がある。アゼルが戦い始めたのは、それこそ『闇の王』が顕現して窮地に立たされてから。領地が飲み込まれ、父親を失ったことによる奮起が原因で、現在はその才能を彼自身を含め誰も気付いていない。その状況下で記憶を戻すだけで、戦えるようになるのだろうか?

 リリーは記憶が戻ったことで技術も思い出したとのことだったのだが……彼女は「大丈夫」と告げたため、向かうことにした。


 一応リリーと面識あるし、領主であるアゼルの父親も第四皇女を無下には扱わないだろう。彼らの屋敷を訪れ記憶を戻せばアゼルは協力してくれる。よって、俺達はそこを目指すというわけだ。


「アゼルについてはなんとかなりにしても、だ。もう一人……俺とリリーが口を揃えて最初に告げた人物は、どこにいるんだろうな」

「あの人、帝国中探しても見つからないような感じだよね……」


 戦力としては最高なのだが、探すとなれば難易度が無茶苦茶高い……というかたぶん、よほど幸運に恵まれていなければ無理だ。


 その人物の名はクレア=ベラント。帝国内の出身者ではあるが天涯孤独で故郷も廃村になっているというなかなか波瀾万丈な経歴を持っている女性だ。

 ちょっとばかりくすんだ金髪を三つ編みにしているのが特徴で、旅をしているのはリリーとほぼ同じ理由。すなわち剣を極めるため……女性ながら剣一本で国を渡り歩く傑物だ。


 肝心の実力についてだが、正直底が知れないほどの力を持っている……そう表現するしかない。元々体に抱える魔力量はそれほど多くないため、強力な魔装などを扱うことが難しい。そのため派手な攻撃などはできないのだが、逆に言えば少ない魔力量を補う技術がとんでもなかった。

 剣術も戦士イルバドやエルフ最強の剣士であるジェファも上回るだろう。リリーが全盛期であってもおそらく剣術勝負では負ける……というか、剣を合わせて負けたところを俺は見たことがない。それほどの実力者だ。


 仲間に加わった当初、俺達が挑む敵は『闇の王』を始めとして異形の存在ばかりであるため、その剣術でどこまでついてこられるのか、という疑問はあったのだが……その武勇は、それはもう見事なものだった。

 確かに人間などの相手と比べれば戦いにくかったかもしれない。だが『闇の王』やその眷属相手に彼女は持ち前の剣術によって大活躍を見せた。よって俺もリリーも彼女の協力が欲しいと思ったのだが、風来坊であり所在がどこかもわからない。『闇の王』に関連する敵を見つけ出すより、よっぽど難易度は高いかもしれない。


 クレアについては運も絡むので、俺達は確実であるアゼルの協力を得るべく進路を彼の領地へ向けている……と、ここでリリーが発言。


「レイト、『聖皇剣』を上回る武器について、何か心当たりはある?」

「あったらとっくに言ってるさ。そもそも俺が持ってるこの世界の知識は大半がリリーからの受け売りだ。そっちが知ってなかったら俺もわからないぞ」


 武器についても目標を立てたにしろ、相当難易度が高いのは間違いない。候補となるのは天使とか魔族とかが使っていた武具なのだが、果たしてそれが俺達に扱えるものなのか。


 力の大きさだけでなく『聖皇剣』は使用者に合わせ強化するといった、言わば「継承者がどのような力を持っていても最大限のパフォーマンスを得られる」という効果を持っていた。ここに武者修行をしていたリリーの剣術が合わさってとんでもない力を生み出した。つまり『聖皇剣』を超えるには、彼女が持ちうる力を最大限に引き出せる武具でなければ厳しいということだ。


「リリーこそ、何か思い浮かんでいるのか?」

「うーん、難しい」

「……『闇の王』に対抗するための準備なのだから、キツイのはわかっていたけど、これは前途多難だな」


 俺の評価にリリーは同意したが……決して深刻にはなっていない。

 ひとまずアゼルと話し合い、どうするかは決めることにしよう……まだやることは多いし、一つ一つ片付ける間に候補が浮かび上がるかもしれない。


 俺が懸念を抱いていることとしては皇族とどう関わっていくか、だろうか。『前回』は人を助けるなど評判の上がるようなことをしていたし、その過程で魔法使いとして俺の認知が広がっていった。けれど今回は武具探しとか仲間探しである。その過程で世間の評価が上がることはあると思うが『前回』ほどにはならないだろう。

 もし早期に皇族と出会ってしまったら、どうすべきか考えないといけないよな……そんな風に思っていると、俺達は町へ到着。


「今日はあそこで休もうか」

「そうだな。次の宿場町まで時間も掛かりそうだし……ギルドとかで情報を漁ってみてもいい」


 というわけで、俺達は歩調を変えぬまま町を訪れた。


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