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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第四章
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皇帝からの招待

「貴殿から、少しばかり話も聞きたい。本日はこの城で休んではどうだろうか」


 ……そして皇帝から思わぬ提案が。こんな簡単にそういうことをして良いのかと疑問に思い、


「あの、私は皇女を送り届けただけですので」

「いやいや、この城へ連れて来ただけでも勲章ものだ。どういういきさつで娘をここまで連れてきたのか、是非聞いてみたいと思ったのだ」


 ……どんだけ信用ないんだ、リリー。『前回』は功績を携えての帰還だったから、もっと違う形だったんだけど……ふむ、額面通り話を受け取ると、なぜリリーを制御できるのか、その秘訣を知りたいと。

 どこまで本当なのかわからないんだけど……でもまあ、さすがに一介の冒険者に刺客を差し向けるとかはしないだろうしなあ。


「……どこまでお役に立てるかわかりませんが」


 返答としては無難なものに。皇帝はそれに対し頷いて……ひとまず、滞在することはできそうだった。

 話自体はそれで終了し、俺は玉座の間を出る。リリーは「どうだ」みたいな感じでドヤ顔を向けてくるのだが……あ、ルナに引きずられていく。


「ちょ、ちょっとルナ!」

「リリー様はお部屋へ。私が責任を持ってお連れします」

「いや、私一人で戻るし!」

「私が護衛致しますので、ご心配なさらず」

「城内なんだから護衛の必要はないよね!?」


 口論……というかリリーが一方的にわめいている中で二人が離れていく。リリーはやろうと思えば引き剥がせるんだろうけど……そういうことをするつもりはないらしい。ここで下手に反発したら総出で取り押さえに来るとか思っているのだろう。その推測は正しくて、たぶん想像通りのことが起きる。

 俺は手を振ってそれを見送った後、侍女が近づいてきて宿泊する部屋へと案内される。道中で冒険者の格好をした人間ということで好奇の目が注がれたが……こちらは気にせず涼しい顔で流すことにした。






 ひとまずリリーによる城内へ入り込むミッションは終了。なので次は皇帝の記憶を戻すことなのだが……そのチャンスはかなり早期に訪れた。


「さあ、どうぞ遠慮なく」


 皇帝が俺へ呼び掛ける……なんというか、恐ろしいことに皇帝直々に会食を申し出た。しかも場所は皇帝の私室である。広い場所で大臣と共に、などという事態にはならずに済んだので状況的にはマシなのだが……疑問がつきまとう。

 侍女が料理を運んできて、俺と皇帝が一対一で食事をする。まずシチュエーションとして、不用心にも程がある。護衛の一人でもつけていれば話は別なのに、それすらいない。なおかつリリーすら同伴していない。完全に俺一人である。


 こういう場面は『前回』ならばまああったので、俺自身特段緊張しているわけではないのだが……いくらなんでも見ず知らずの人間にここまでやるのは無茶苦茶だ。何か裏があるのか、それとも理由があるのか。

 ただ、例えば兵士をどこかへ隠しているとか、そういうわけでもない。そもそも俺を始末したいと思うのならば皇帝の私室などに招き入れるはずもない。俺が魔法使いであることは認識していないし、単に俺を始末するだけなら手の込んだ真似をする必要性もない。


「ふむ、さすがにこの状況、不思議に思っているか」


 皇帝は俺が食べ始めないのを見て、言及した。


「こうして食事により部屋へと招き入れたこと。これについて異質に感じていると」

「それは……まあ……」


 どういう理由なのか――と思っていると、皇帝は笑顔を見せた。


「ならば、こう伝えるべきだな……私は貴殿とリリーの成したことを知っている。他ならぬ『森の王』からの報告で、な」


 ……あ、なるほど。そういうことか。


「理解してもらえたか?」

「それなら、わかります……けど、信じたんですか?」

「彼が嘘を言う必要もない。私にとっては荒唐無稽な話ではあったが……実際、騒動が起きていたことは調べればすぐにわかった。世界を救う……そうした大業を成したとあれば、このくらいのことをするのもおかしくはないだろう?」


 うん、それなら納得できる……皇帝が各種族の王と何かしらの形でコンタクトをとっている、という可能性は確かにあったのだが、完全に考慮の外だったな。


「ちなみにだが今回の食事のことに加え、貴殿とリリーが行ったことについては私を含め極一部の者だけしか知らない。なおかつこの会食も非公式なものだ」

「つまり、私的に話がしたくて招いたと?」

「そういうことだ。侍女達についても心配はない。口は固いからな」


 本当に大丈夫なのかと疑ってしまうところだが、バレたらバレたでたぶん適当な理屈を付けて説明するのだろう。


「加え、リリーについてだが、私が『森の王』などと話せる機会があることは話していない。そこを伝えたらつけあがるだろうからな」


 うーん、全然信用されていないな、リリー……。


「そうした状況を踏まえた上で……貴殿と話をしようと思ったわけだ」

「私室に招くくらいなので、私に対して一定の信頼を置いていると考えてよろしいでしょうか?」


 俺はそんな風に尋ねる。この状況ならば、記憶を戻そうとすれば成功しそうだ。


「ふむ、そうだな。『森の王』から伝聞ではあるが、貴殿は世界を救うという大業を成し遂げた人物……この私室へ招き入れたことで、信頼しているという証明になるだろう」

「そうですね……あの、俺のことについては何か聞いていますか?」

「リリーと共に戦った人物であると」


 詳しいことは語らず、ということか。その辺りは直接皇帝へ話せという配慮だろう。


「わかりました……では、一つだけ頼みたいことが」

「頼み?」

「一瞬の良いので目を合わせてください。もちろん魔力で何かをすることはありません。違和感を感じた場合は、すぐに申し出てください……どうでしょうか?」

「うむ、構わないぞ」


 ……俺のことは説明されていないのに、ずいぶんと軽く信用するんだな。どういう説明を『森の王』は行ったのか……まあ、俺のことを避けて上手く説明したのか。

 ともあれ、これはこれで話が早い。ここからさきの進展が思ったよりも一気にいきそうだな……そう思いながら皇帝と目を合わせる。そして瞳の奥に存在する魔力に触れた。


 パチリと、火花が散るような音。間違いなく成功だ。すると皇帝は一度周囲を見回した後……俺へ向け口を開いた。


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