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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第四章
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自分の役目

 人知れず世界は平和となり、俺達は何の問題もなく旅を続けていく。帝都に着いたらリリーによって大変な目に遭うことは確定しているわけだし、心穏やかにできるのは目的地へ辿り着くまでだろう。そんなことを考えつつ、俺達は歩き続ける。

 その道中で、俺は俺の目的を果たすことにする……それは『リリー』が残した残党を始末することである。


「うおおおおっ!?」


 そんな悲鳴が俺の耳に届く……場所は街道から離れた森の中。そこに、盗賊団が砦を築き隠れ住んでいたのだが、俺とリリーはそこへ目掛け攻撃を仕掛けた。目的は盗賊団首領が持っている『闇の王』に関する資材や情報を完膚なきまでに破壊すること。ついでに、首領をふん縛って役人に突き出す。


「リリー、最優先は首領を探すことと、資料を見つけ出すことだ」


 ――なぜこの砦『闇の王』に関する物があるとわかったのか。それは『森の王』からの情報提供だった。物資の流れから誰かが資材を購入している。その情報を得て俺達は町で資材を購入する人物を捕捉し、使い魔を用いて後を追った。結果、砦に行き着いたわけだ。


「二手に分かれる?」


 リリーが問い掛けてくる。現在砦の中は俺が使用した魔法であちこち爆破しており、なおかつ燃えている。一応森に燃え移らないよう配慮はしているのだが、さっさと用件だけは済ませたいところ。

 魔法によって逃げられないようにしているのだが、盗賊団首領については『闇の王』に関する知識を持っている以上、油断はできない。


「そうだな……そっちの動向は探れるようにしておくからな」

「いいよ。というか、今更こんな敵相手に大丈夫じゃない?」

「油断大敵だ。俺達は確かに『闇の王』を倒したけど、だからといって手を抜くことは許されない」


 その言葉にリリーは「わかってる」と応じた後、


「なら、私は取り巻きを倒していくよ。倒したら縛っておけばいいでしょ?」

「縄とかあるのか?」

「この剣を使えば」


 と、妖精郷にあった剣を示す。何やら能力を保有しているということか。


「わかった、それでいい……それじゃあ、いくぞ」


 号令と共に俺達は駆け出す。程なくして俺は資料室らしき場所を見つける。


「ここみたいだな……さて」


 俺は容赦なく、魔法を行使した。炎などではなく、雷撃――閃光が資料室内に生じ、さらに甲高い破裂音が耳に入ってくる。

 魔法の効果は一瞬だが、視界が元に戻った時、資料室はまるごと黒焦げになっていた。


「後は、首領の部屋とかかな? あるいは、隠し部屋とかも見つけなければいけないか……」


 資料を見つけることができれば……と、思っていた時、俺に近づいてくる人影が。


「貴様……どういうつもりだ?」


 三十代くらいの男性で、無精ひげを生やしてずいぶん厳つい印象を与えてくる人物。抜き身の剣を握っており、俺に対する殺気を滲ませている。


「俺か? うーん、そうだな……闇に関する資料や知識を持っている人間を倒して回っている、正義の味方みたいな人間だよ」


 ――そんな回答は予想していなかったか、訝しげな視線を俺へ投げてきた。


「お前、闇についての資料をとある人物からもらったな? それを始末し、なおかつ情報を得る……ま、あんたの情報提供者に対する敵だと思ってもらえればいいよ」

「……なるほど、そういうことか」


 合点がいった様子。


「で、手当たり次第資料を破壊して回っているんだが……この場所以外に資料はあるか?」

「答えると思っているのか?」

「もし答えなかったら、尋問することになるぞ」


 首領が動く。おそらく闇によって強化されている――踏み込みの速さでそれが明瞭にわかった。

 とはいえ、あくまで身体能力を多少向上しているといった程度。普通の戦士や騎士であれば一蹴できるほどの実力を得てはいるみたいだが、俺には通用しない。


 相手の剣を杖で受ける。同時、杖先から魔力を発した。


「貴様……!」


 相手の顔が驚愕に染まる。その間に俺は魔法を炸裂させた。再び雷撃であり、閃光が首領の体を駆け抜けた。


「が、あ……!」


 呻き声を上げ、男は倒れ伏す。力は得ていた……が、完全に持て余していた感じだろうか? 闇を得たにしては、強化の度合いは低いようだ。


「手当たり次第、声を掛けていたという感じか……まあリリーの顔を持っているわけだし、なおかつ声とかも知られている可能性があることを踏まえれば、政治中枢にいる人物とかに力を託すことはできなかっただろうし、仕方がない話か」


 とはいえ、そういった活動が実を結んだケースもある……俺がこの世界へ転移してきて『リリー』と戦うまでに遭遇した敵を思い返す。


「あれほどの実力者がいるのかどうかはわからないけど……警戒はしておくべきなんだろうな。敵の動きを知るネットワークは構築できているし、捕捉はできるだろうけど……気の休まる時は、まだまだ先みたいだな」


 結論を述べた後、俺は気絶する首領に拘束魔法を掛けておく。今頃リリーは砦内にいる盗賊を片っ端から倒して回っているだろう。彼女を追っているネズミの使い魔の視点では……五人の盗賊が一閃して吹き飛ばしていた。


「絶好調だな……さて、俺は俺の役目を」


 ゆっくりと歩き出す。そこからいくつか部屋を調べ、首領の部屋を発見。そこにあった本棚に、目当ての資料は存在していた。


「地下室とかはなさそうだな……思えば隠れて暮らし、なおかつ配下に『闇の王』についての研究資料なんて、理解するのは難しい……なら、わざわざ隠し部屋とか作る必要はないか」


 引き出しなどに鍵が掛かっているのだが……無理矢理魔法で破壊して開ける。そこにもいくらか資料があった。まあ精々こうして鍵を掛けておくくらいか。


「なら、部屋全体に雷撃を撃って、粉みじんにする……で、いいな」


 俺は入口に立って、資料室と同じように雷撃を放つ。閃光と轟音が部屋の中を包み込み……次に見えたのは、全てが黒くなっている様相。


「完了、と。一応、隠し部屋とかないかを調べることにしよう」


 その時、爆音が生じた。使い魔を通して見ると、盗賊らしき人物がリリーへ火球による攻撃を行っていた。けれど彼女は剣で平然と受け流し、次の瞬間には懐に接近して一太刀浴びせている。峰打ちなのか出血はなく、盗賊は倒れ伏す。

 あの調子なら、あっという間に終わりそうだな……よって俺は少し早足になりつつ、隠し部屋などがないのかを調べ始めた。


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