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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第四章
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集中攻撃

 俺は『仮面の女』を観察しながらなおも攻撃を続ける。ひとまず魔力についてはもちそうだし、策が成るまではなんとかなりそうな状況。

 とはいえ、問題は相手が悠長に待ってくれるのか……そんなことを考えた矢先、闇が轟いた。変化があるのかと思ったが、降らせる炎の量を増加させただけ。


「とはいえ、ここが正念場か……?」

「そうみたいだね」


 同時、周辺から魔力を感じ取る。それは顕現している闇からのものではなく、周囲の森から。

 エリテがどうやら作戦を実行しようとしている。なら、この攻撃をさばききったらおそらく――


「俺も迎撃する。全員、撃ち落とせ!」


 号令と共に俺は魔法を放ち飛来する闇の炎を消し飛ばす。魔法に触れればあっさりと消えるが、着弾すれば地面が抉れるほどのものだ。ここは地上に到達する前に……周囲で作戦を実行しようとしているエリテ達の援護を行う。

 リリー達もその意図を理解したのか、力をさらに活性化させて炎に迎え撃った。仲間の攻撃一つ一つが、炎を確実に撃ち落としていく。


 そして俺の魔法が残る炎を消し飛ばした時、周囲の魔力が大きく揺らいだ。闇の柱から放たれたものではなく、周囲に存在する森などから発生したもの。

 エリテの策が発動する……次の瞬間、森に潜んでいた妖精達の魔法が、一斉に闇の柱へと放たれた。炎、風、氷、雷……様々な属性の攻撃が、闇の柱へ余すところなく直撃する。


「よし、退避!」


 俺は即座に指示を出して後退する。闇が反撃してくれば即座に応じられるよう準備だけはしておくが……妖精達の猛攻により、次第にその力が減り始める。


「みるみるうちに魔力が……」

 リリーが小さく呟く。クレアやアゼルもまた察しているようで、圧倒的な魔力は闇の魔力を忘れさせるほどだった。

 妖精郷に存在する戦力をかき集めてきたって雰囲気だな……一度魔法が途切れても第二、第三の魔法が飛んでくる。絶え間なく闇に魔法が降り注がれ、その力が一気に減っていく。


 エリテの策は極めてシンプルであり、俺達が時間を稼ぐ間に妖精達を集めて一斉攻撃……これで決着をつけることができれば良いのだが……。


「確実に効いているのは間違いないけど……」


 リリーは呟きながら闇を見据える。妖精達の攻撃は絶え間ないものであり、驚愕の一言。きちんと連携できるのかと疑問に思っていたのだが……この様子ならば、問題はなさそうだ。

 懸念は、この妖精達の攻撃がどこまで続くのか……と、ここでエリテが近寄ってくる。


「皆様、ご苦労様でした」

「まだ終わっていませんが……ともあれ、作戦は成功ですね」


 俺の言葉にエリテは頷く。


「徐々に闇は弱まっています……妖精達が興味を示し近くへ来ていたことも幸いしました。準備はスムーズに行われ、攻撃を行うことができた」

「けれど、これがどれほどもつのか……」

「そう心配はいらないでしょう。私達の魔力……巨大な存在ではありますが、あの魔力に対しても、十分に応じることができます」


 自信を覗かせる彼女。その言葉と共に、闇の魔力が急速にしぼんでいく。


「加え、あの柱は表層部分にかなりの魔力を使っています。おそらく外殻を強固にして内部にまで攻撃を通さないようにしていたのでしょう」

「だから俺の攻撃が効いていなかったと」

「はい。内部にまで抜けた魔力は、それほど多くなかった……ですが、妖精達の攻撃は闇の深くまで到達しています」


 これは妖精達が一斉攻撃を仕掛けているためだろう。俺の攻撃を闇はおそらく魔力を集中させるとかで防いでいた。しかし、妖精達の全方位からの一斉攻撃……さすがにこれでは対処のしようがない。

 圧倒的な数により、押し込んでいく……これならおそらく勝てる。ただ、不安がないわけではない。


「闇そのものが決死の反撃をしてきたら……」

「その対策もしています。無論、絶対に安全というわけではありませんが」


 何かしら手は打ってあるということか。エリテとしても絶対に負けられない……なおかつ、『前回』において妖精郷を滅ぼした諸悪の根源。絶対にここで滅するという強い気概が、彼女には存在していた。

 それは妖精達の攻撃にも乗り移っているような雰囲気であり、時が経つほど攻撃の勢いも増していく。妖精郷全体の妖精達が駆けつけているのだと認識できるほどに、圧倒的な攻勢が闇へと襲い掛かっている。


 俺達はそれをただ見守るだけ……懸念していたことについては、杞憂だと断言できるほどだった。

 そして、エリテは闇を見据え宣告する。


「終わりです……世界を破滅させた巨大な力。これはその赤ん坊とでも言うべき存在……それを滅し、終止符を打ちます」


 言葉と同時、闇の力が一気に消え始める。妖精達の攻撃に耐えきれず、瓦解を始めたのだ。

 終わる……倒すことができなかった闇を、目の前で滅ぼそうとしている。


「妖精達に、感謝だな」


 俺の言葉に仲間達も頷く。しかしエリテは、


「皆様のおかげです。あなた方が来てくれたからこそ、ここで打倒することができた」

「……しかし、まだ敵は残っている。少なくとも数年後に闇の襲来は消え失せたかもしれない。けれど、元凶を討たなければ終わりはない」

「はい、まさしく」


 妖精達の攻撃がさらに増す。それによりとうとう闇は、ボロボロと形をなくし消え始めた。

 その中で『仮面の女』は、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。妖精達の攻撃など意に介さないように、悠然と歩み寄ってくる。


 どうやら直接対決らしい。とはいえ次元魔装というのを使用している以上、相手としてはどう動いてくるのか。


「未知の魔装を所有している以上、最大限の警戒で応じるぞ」


 俺の言葉に仲間達は一斉に武器を構える。やがて闇が藻屑と消え完全に視界からいなくなった時――とうとう俺達と『仮面の女』は相対する。

 双方とも無言で動かない。まだ魔装の効果が発揮されているのか、相手の周囲には魔力が漂っている。


 攻撃してもおそらく無意味。ならば待つしかないが……そう思った矢先、『仮面の女』がとうとう、俺達に反応を示した。


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