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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第四章
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妖精との計略

 ついに目の当たりにした『仮面の女』を見据えながら……俺の魔法は真っ直ぐ闇の柱へと突き刺さる。途端、響き渡る轟音。光が一時闇を飲み込もうとするが……それ以上に闇が噴出し、光を逆に飲み込もうとする。

 目の前に存在するのは紛れもない『闇の王』……問題は『仮面の女』が操っているのかどうか。もし多少なりとも使役しているのであれば、闇の力がこちらへ牙をむいてもおかしくはない。


 とはいえ、向こうはまだ仕掛けてこない。ならば、今のうちにやれるだけのことはやっておく……! 俺は飲まれそうになる光を見据え、さらに魔力を高め、光を放つ。それが闇に着弾すると、広がりを見せて滅ぼそうとする。

 闇は魔力が減っているにしろ健在……俺の魔法をいくつも叩き込んだが耐えている。この時点でどれほどの存在なのかは認識できる。


 加え『仮面の女』は……俺の魔法によって飲み込まれたりするのだが、超然と黒い柱に立っている。悠長にしているのか、それとも幻術か何かでわざと見せているのか……仮にそうだとしたら計略の可能性もあるが。


「レイト、いける?」


 魔法を叩き込んでも滅びない闇を見据え、リリーが問い掛けてくる。


「魔力は問題ない……が、これだけ魔法を使っても消えないんだ。内に抱える魔力量は甚大だな」

「私達にできることは……」

「攻撃に集中するため、援護を」


 先ほどと同じ説明を行った後、


「加えて『仮面の女』の監視を頼む」

「わかった」

「いまだに動いていないのが不気味ね」


 クレアが感想を述べる。確かに超然としている姿は、俺達に対しどういう感想を抱いているのか。


「闇を顕現させた以上、俺達に敵意を抱いているのは事実だろう。邪魔をする存在……そういう認識でいる」

「だとしても、やり方が容赦ないわね」

「ここでどれだけ暴れても、目撃した妖精達を全員始末すれば問題ない……って考えなのかもしれない」


 できれば『仮面の女』を引きずり下ろしたいところだが……考えている間に突如黒い柱が膨張する。それはおそらく攻撃する所作。直後、闇が爆ぜて黒い炎が飛来する。

 それをリリー達は先ほどと同じように迎撃する。魔力が少なくなり始めているせいなのか、威力についてはさっきよりも低い……といってもほんの少しではあるが。


 黒い柱は地面に根付いた大樹のようにも見えるが、地面から魔力を吸収しようとはしていない様子。これは妖精達が妨害しているのかもしれないが……ともかく、削り続ければいつか滅び去るのは間違いない。

 ただしここまでの戦いから、削り勝負となったら俺達の方が明らかに不利だろう。黒い柱は膨大な魔力を抱えている。それを一介の人間が――ただ俺の魔法はしっかりと効いている。もっとも俺の魔力量がもつのかは疑問ではあるのだが。


「……小細工は通用しない。正面突破しかないか」

「あれだけ巨大な存在です。無茶もいいところですけどね」


 アゼルが述べる。まったくもってその通りだが、それでも勝つにはやるしかない。

 ただ、他に援護が来ることがないのはかなり辛いが……エリテ達妖精達が手を貸してくれる可能性もあるが、果たして戦力になるかどうか。


 黒い炎を全て迎撃した後、俺は再び魔法を行使。さらなる光が黒い柱を襲う……のだが、それでも破壊には至らない。魔力は確実に減っている。とはいえこれではこちらが消耗する方が先か――


「レイト」


 リリーの声。見れば『仮面の女』の姿が消えていた。いや、これは、


「飛び降りたのか?」

「そうだね」


 観察すると、黒い柱の根元にその人物はいた。先ほどの魔法が多少なりとも当たったはずなのだが、素知らぬ様子を見せ、闇を見上げている。


「何かしているのか……?」


 俺は呟きながら少し方針を変更。黒い柱へ向かって魔法を放つのは同じだが、その狙いは根元……『仮面の女』を合わせて狙ってみる。

 先ほどから繰り出している魔法を、俺は放つ……とはいえここまで幾度となく魔法に巻き込んできた。これが通用するとは思えないのだが――


 光の塊が吸い込まれ、妖精郷の地面近くで爆ぜた。凄まじい轟音と振動。地面から発生する地鳴りを耳にしながら注視すると……魔法を直撃していながら平然と佇む『仮面の女』の姿があった。


「効いていない……というより、何らかの手段で回避していると解釈するのが妥当だな」

「もっと近づかないと、何をしているのかはわからないね」


 リリーは剣を構えながら応じる。俺は小さく頷き同意しながら、続けざまに魔法を放った。

 それが再び亜闇に直撃するわけだが……このままジリ貧だろうか? 目を細め次の一手を考えるべきかと思案しかけた時、ふいに気配がした。


 それは黒い柱からではない。後方から。


「……凄まじいですね」


 エリテだった。彼女は全てを理解しているように、


「根元にいる『仮面の女』についてはこちらが観察します。よって、皆さんはあの闇の塊に注力していただければ」

「それはありがたいですが……現状では俺以外に攻撃できる人間もいません」

「なるほど……では、妖精達が動くべきでしょうか」

「……どのように?」


 問い掛けるとエリテは簡潔に説明をした。なるほど、それなら――


「そちらの方が効率よさそうね」


 クレアが賛同。リリーやアゼルもまた、頷いている。そして俺も、


「俺達四人だけでは対処が難しいですし、ここは妖精達が動く方が良いかと。リリー達は……引き続き『仮面の女』の監視で良いかな」

「うん、それが無難だね」

「わかりました。すぐに準備をします。皆様はここで待機を――」


 エリテが言い終えぬうちに、黒い柱から魔力を感じ取る。どうやら悠長にする暇はないらしい。


「私が来たことにより、変化が起きたのでしょうか……」

「その可能性が高そうですね……あなたはどうしますか?」

「一度ここを離脱します。時間稼ぎは――」

「無論、俺達が」


 エリテは一度申し訳なさそうな顔をした……その後、


「すぐに準備を始めます。ご武運を」


 エリテが立ち去る。それと同時に闇の炎が俺達へ向かってくる。


「まずは、耐えることだな」


 そう言いながら俺は魔法を行使。リリー達は炎を迎撃するべく武器を構え――双方の魔力が、激突した。


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