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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第四章
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異常事態

 秋の妖精、管理者の死……異様な展開となったわけだが、俺達はどうすべきなのかエリテに助言を求めると、


「さすがにこの状況では人間を立ち入らせるわけには……調査を続けるのも困難かと」

「そうですよね……ひとまず俺達はこの屋敷で待機、でよろしいですか?」

「構いません……問題はこの一連の事件が『仮面の女』と関係しているのか」

「けど、もし秋の管理者と手を組んでいたとしたら、殺めるのは悪手じゃない?」


 リリーがエリテへと尋ねる。まあ普通に考えて、そんなことはしないよな。

 エリテの権限により俺達は妖精郷内の気配をつかむことができる。だからまあ、秋の領域に入って探せばすぐに見つかってしまう……だから管理者を殺してでも……などというのはさすがに無茶か。


 正直、これでは秋の領域に何かがあるとしか思えないわけで……いや、他の可能性としては別の場所に拠点を構えているけど目をそらすために秋の管理者を……というやり方も考えられる。

 ただ、この場合は――


「一度、各管理者が集います。葬儀などを含め、時間を頂くことになりますが」

「その間、俺達は屋敷にいるのは問題ありません。しかし」

「もし『仮面の女』がいる場合は……ということですね。承知しております。使い魔などを用いて周辺状況を探るといったことはしてもらって構いませんよ。ジェーンについてはあなた方を認識していますし問題はないでしょう。冬の管理者にも、伝えておきます」

「それは良いのですが……下手に魔法を使って探りを入れていれば、俺達が主犯者なのではと疑う者だって現われるのでは?」


 敵の狙いは俺達の追放かもしれないのだが……と懸念を表明するとエリテは、


「そこについては、そのようなことがないよう取りはからいます……今はこうとしか言えないのですが」

「わかったわ」


 リリーが了承。エリテの表情が暗く、管理者が死亡したことにより動揺しているから会話を打ち切った、って感じかな。

 彼女は俺達の会話をした後、屋敷へ出る。もし何らかの意図があって『仮面の女』が秋の管理者を殺害したのなら、危険なのは葬儀の時などだが……、


「リリー、どう思う?」

「私達は私達でやれることをやろう」


 単純明快な言葉。うん、そうだな。


「状況が状況です。多くの妖精達も悲しんでいるでしょうし、できる限り配慮はしたいところですよね」


 アゼルも続く。二人としてはこのような事態である以上は活動を控えるべき、という考えか。

 そこは俺も同意なのだが……とはいえこれが『仮面の女』の仕業であったなら、かなり面倒だ。よって、


「……お墨付きはもらっているから、屋敷内で可能なことをやろう。特に葬儀が行われる場合、そこが特に注意すべきところだ」

「そうだね。でもレイト、限界があるけど……」

「妖精郷にとって俺達は部外者である以上、限界点は存在する……が、『闇の王』に関することである以上は、最善は尽くしたい」


 そこまで言った後、一拍置いて俺はリリー達へ口添えする。


「相手だって現時点で『闇の王』が完成しているわけじゃないだろ。だからまあ、警戒はすべきだけど妖精達の迷惑になるようなことは避けてもなんとかなるとは思う」

「問題は、次の犠牲者が出るかどうかだけど……」

「そこだな。最悪俺達と共にいる妖精……『樹の王』を狙ってくる可能性もある」


 相応の実力を持つ彼女がやられるとは考えにくいが……それに『闇の王』についても記憶は保持しているし。


「ともかく、俺達も行動に移そう。まずは調査からだ」


 全員が頷く。そこから俺達は静かに行動を開始。まずは現状把握だ。

 気配を探ってみると、春の領域でも妖精達が動き回っているのがわかる。秋の管理者が亡くなった……そのニュースが妖精郷全体に行き渡り、動揺が広がっている。


 各季節において関係性がなかったとしても一大ニュースだろう。平穏が続いていた妖精郷内で……しかもどうやら寿命などではないとくれば、噂話の一つや二つ生じていてもおかしくはないな。


「……妖精に話を聞いてみるか」


 席を立ち俺は外に出る。妖精がざわついているためなのか、妖精郷全体の空気も昨日とは一変しているように感じられる。

 屋敷周辺にいる妖精達に話し掛けてみる。拒絶されたらどうしようかと思ったが、存外フレンドリーに対応してくれた。


「色々と大変みたいだけど」

「みーんな大騒ぎしてるね。どうしようかってエリテ様も右往左往してる」


 妖精達は困惑顔。この様子だと今後の方針が決まるのも時間が必要だろうな。


「秋の領域を管理している妖精……今回のようなことに至る兆候とかはあったのか?」

「それはさすがにないよ。別に噂とかも聞かなかったし……」

「そっか……どういう風に亡くなったとかわからないし、俺達は屋敷から出ない方がよさそうだな」

「そうだねー。危ないし」


 ……この様子だと騒動に巻き込まれてこういう事態に至ったとか考えているのだろうか。事故とかいう見解でもおかしくないのだが。

 エリテは『闇の王』とかと関連して秋の管理者が亡くなったという見解なのか……少なくとも俺達と話をしている際に「前回もありました」とは言わなかったから、今回の一件は予定調和ではないってことだ。となると、俺達が来たから……?


 そう考えると『闇の王』絡みである可能性も高まるのだが……このまま黙って見ているだけでは敵の思うつぼかもしれない。

 予定外の事象である以上、こちらも相応に対処する必要性が出てくるな……とはいえ変な行動をして妖精達へ恨まれるのも避けたい。俺達が無茶な動きをして適当な口実で追い出そうとしているのかもしれないし。


 それをするのにここまでのことをするのはいくらなんでも大掛かりとは思うけど……ともかく監視の手は緩めない。異常事態だからこそしっかりと警戒をしなければならない。


「そうだ。『樹の王』に警備状況とかを尋ねてみるか」


 この状況下で機能するのか疑問ではあるけどやらないよりはマシだ……俺はここが踏ん張りどころだと自分に言い聞かせ、次の行動を移すべく足を動かし始めた。


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