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最強皇女と魔法の王  作者: 陽山純樹
第三章
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闇の発生場所

 城へ戻り、俺達はオディルと会話を行う。ゴルエンも立ち会い『闇の王』との戦いで協力関係を結ぶことについて改めて約束をした。


「エルフと竜……そしてイファルダ帝国が結びつけば、情報網については問題ないだろ」


 と、オディルとの会話を終えたゴルエンは述べた。


「資材の流れはオディルがつかんでいる上、竜が加わることでカバーできない部分についても把握できる」

「ひとまず、これ以降『闇の王』を出現しようとする輩が現われれば少なくとも見つけることはできる、か」

「そうだな」

「残る問題は『仮面の女』よね」


 リリーは腕組みしながら告げると、ゴルエンは深々と頷いた。


「情報がほとんどないというのが現状だ。よってそこから始めないといけないわけだが……さすがにこうまで止めに入る存在がいるとなれば、相手方も気付くだろう」


 イルバド、ルーガ山脈の魔術師。そして竜族ロック……『仮面の女』は常にこうした存在と連絡を取り合っている様子はないのでこれまでは問題なかったが、さすがに今回は大事になってしまったし、耳に入るのは確実か。


「敵としては何かしら手を打ってくる可能性はあるな」


 俺の言葉に仲間は全員頷く。それでは、どうすべきか――


「ふむ、ならばこちらも色々と動くことにしよう」


 と、ゴルエンが述べる。その口調だと何か手がかりがあるのか?


「ただ、これは確定の情報というわけじゃない。可能性が高いという推測に至ってはいるが」

「敵の居所か?」

「厳密に言うと『闇の王』についてのことだ」


 何だ? 疑問に対し首を傾げると、ゴルエンはここで唐突に話題を変えた。


「その前に、報酬について話をしなければならない。とっておきを渡そう、と意気込んではいたのだが実を言うと私が所有しているわけではない。渡すのは、情報だ」

「情報?」

「強力な武具について明確な心当たりがあるのは事実。それは何か……『樹の王』が所持する武具だ」

「ん? 『樹の王』?」


 俺にとっては聞き慣れないものだった。するとその解説は、リリーが行った。


「この山脈は竜族が住んでいるけど、もっと奥……人が寄りつかない場所に、妖精の住まう場所が存在する」

「妖精……?」

「つまりゴルエンは、私達に妖精達の武具を紹介したいと?」


 その妖精の王様が『樹の王』ということか。リリーの質問に対しゴルエンは頷き、


「ああそうだ。私が紹介状を書けば『樹の王』は無視できなくなる。加え、記憶を戻せば話を聞いてくれるだろうし、こちらの要求を飲んでくれるはずだ」

「記憶って……『闇の王』に関する情報を保有しているのか?」


 山脈の奥なら、俗世と関わりがないと思うのだが。というか『前回』彼らがどうなったとかはわからないし――


「これは今の私が記憶を頼りに『前回』の情報をまとめたことで得た結論なのだが……おおよそ正解でいいだろう」


 またも突然話が変わる。一体――


「結論を述べよう。『闇の王』動いた経路を考えると、闇の発生源は『樹の王』が治める妖精郷だ」


 ――その言葉に、俺を含めた仲間達は驚き、目を見張った。


「よってその場所に『仮面の女』が潜伏している可能性すらある。もしかするとそいつは妖精の類いかもしれない」

「な、なるほど……俺達が求めている武具に加え、『闇の王』にまつわる事実……俺達がそこへ行くには十分過ぎる理由か」


 ゴルエンは闇がどこから生まれたのかなどを考察し、そういう結論に至ったのだろう……。


「仮に私の推測が間違っていれば、武具の得てすぐさまここへ戻ってくればいい。山脈の奥地にある場所だが、一応道も通っている。十日もあれば往復はできる。いや、レイト殿達ならば、もっと早く済ませることができるだろうな」

「そういうことなら、俺達としては行く以外の選択肢はないな……さらなる奥地か」


 リリーが俺へ顔を向けてくる。たぶんデートで訪れた野営のグッズを思い出したのだろう。まあ必要があれば買うけどさ。


「武器について、手に入れることができるのは確定なのかしら?」


 ここでクレアが疑問を呈する。


「妖精の所持している武器でしょう? しかも『森の王』からもらった物よりも強力とくれば、厳重に管理されているのでは?」

「そこについてはこちらも書状で譲ってくれるよう頼み込んでおく。絶対確実に……と断言はできないが、良い結果になるようできる限りのことはさせてもらうぞ」

「そう。ならいいわ。『闇の王』の一件だってあるのだから、私達が行かない理由はないわね」

「問題はアゼルをどうするか、だよな」


 視線をそちらへ。すると彼は、


「当然、ついていきますよ」

「理由をどうするか、だ。俺達に同行するのは良しとしても、父親とかに説明しないといけないだろ?」

「そこは僕の方でなんとかしておきます」


 なんとかなるのか……と思ったが口には出さない。アゼルが問題ないと言っている以上は、任せておいた方が無難だろうし。


「なら、四人で妖精郷へ向かう、ということでいいんだな?」


 俺達は一斉に頷いた。新たな目標が決まり、なおかついよいよ『仮面の女』と対面するかもしれない――とあれば、当然士気も高まっていく。


「出発はいつにする?」

「できるだけ早い方がいい……が、首謀者と思しきロックが消えたとはいえ、完全にこの都が安全になったわけでもないだろ。だから、ゴルエンが封鎖を解除するまではいるつもりでいる」


 その言葉によってゴルエンはニヤリとなり、


「なら、その間は城で歓待でもしよう……イファルダ帝国ともよりよい関係を築いていきたい。皇女様をもてなすのは、こちらとしても利があることだからな――」






 そこから、ゴルエンが関所の封鎖を解除するまでにおよそ三日かかった。解除する日には歓声さえ聞こえ、商人達も続々と入ってきた。

 それを見ながら俺は、ロックがまだ何か仕込んでいないかの捜索を行っていた。結果としては破滅の竜以外のものは何もなし。まあ終末をもたらすという存在を作り上げたのが。あれ以上の切り札があるとは思えないし、杞憂ではあったのだが……念のため、である。


 『闇の王』についても調べたがこの竜の都でそうした気配を見つけ出すことはできなかった。よって、この場所は闇の脅威から外れたと考えていい。

 そこから俺達は準備を行う。リリーがさらに物をねだる様を見て俺やアゼル、さらにクレアなんかも説得しつつ大変だったのだが、とりあえずそれについても終了。そこからゴルエンへ出発の報告を行い、書状を受け取った。


「さあて、新たな旅だが……まさかさらに奥へ進むとは」


 俺達は竜の都の出口へ来ていた。しかしその場所は関所を越えて辿り着いた場所とは正反対の位置。山脈の奥へと通じる場所だ。

 道が一応整備されてはいるのだが、人間も使う山道と比べれば雲泥の差だった。まあこちらの道はほとんど使われないらしいし、致し方がないことなのかもしれないが。


「場合によっては最終決戦、という可能性もある……『仮面の女』がいれば」

「そして相手は闇の力を完全に手にしてはいない、よね?」


 リリーの言葉に俺は「そうだと思う」と返事をする。


 こちらは完全に準備が整っていないが、それは相手も同じだろう。こちらは『前回』のようにならないよう芽を摘んでいる。今回はその中で特に重要な案件となる。

 不安要素も大きかったが、ここで決着を付けることができれば明るい未来が待っている……そう心の中で呟きながら、俺は仲間と共に新たな道へ足を踏み出した。


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