あの人が帰って来た
クラスの皆が黒板の上にある時計に注目する。時間は気にしてしまうほど長く感じてしまう。それでも僕らは秒針に注目する。今日は金曜日、そして今は六時間目なのだから。
6時間目の授業を終えるチャイムが鳴ると同時に僕らは学校という義務から解放される。クラスの皆は放課後、何をしようか?明日の土曜日はどこで遊ぼうかと色々な作戦やちょっとした悪戯を企てる。
まあ、そんな感じで僕、天野理暮もいつもなら友達と一緒に遊ぶのだけど。
「おい!理暮!どうする?公園行くか?それとも昨日の続きのサッカーでもやるか?」
前の席から僕の親友である月谷遊佐が何時も通りに遊びに誘いをする。
「ごめん遊佐、今日はパス。今日ねぇ!家の人が帰ってくる日なんだ!」
僕が笑顔で返すと遊佐も笑顔で返してくれる。
「そうなのかーそれじゃ仕方が無い。じゃあまた明日だな」
「うん!ごめんね!」
僕の親友、月谷遊佐が笑顔で返してくれる。
「あれぇ~遊佐~もしかして天野君に振られちゃったの?」
遊佐の隣の席で僕たちの会話に入ってきのは三浦。三浦美紀。短パンに青いGジャケットに眼鏡、長めのポニーテールの女の子。遊佐の幼馴染だ。
「違げよ、馬鹿。でも今回は早かったんだな良かったな」
「うん。てっきり一年くらい帰って来ないと思っていたから」
「ねぇ!ねぇ!私にも聞かせてよ!誰か帰ってくるの?天野君のご両親?遊佐だけとかずるぃ!」
遊佐の隣の席から僕たちに聞きたがりの三浦がぐいぐい僕らの中に入ってくる。
「近けぇよ!ったく、少しは落着けって」
「いやでも気になる!私が何かしでかすより素直に教えたほうがいいと思うよ?」
「何その新手の脅し怖いね」
三浦は知りたくなったら結構危ないことでもしちゃうトラブルメーカーで大企業の三浦財閥の娘。いわゆるご令嬢、なのだ。ちなみにそれでも成績とかは優秀で委員長とかやったりしている。
「わ、私も…気になる…」
そして僕の隣の席から小さな声で僕らの会話に入ってきた。彼女の名前は朋崎麻子。最近転校していた女の子だ。
「おいおい、今度は朋崎もか?」
「ご、ごめんなさい…だ、駄目かな?」
少し長めボッシュヘアーで前髪が長く目が隠れちゃうくらいで、なかなか素顔を見た事がない。それに身長も大きくてクラス中では一番多きいいところが年上の六年生より大きい、でもいつも顔を下に向けて小さな声で話す。
だから余計に顔が見えない。
「うん!気になるよね麻子ちゃん!特に天野君の話だと余計気になるよね!」
「ふにゃ!?み、美紀ちゃん!す、ストップ!ストップゥ!」
けどたまにこんな感じで、大声で叫んじゃったり、こうやって慌てるところが多い子なのだ。
「いや、別に…えーと僕を面倒みてくれている人が帰ってくるんだよ。。いつも出張って感じで遠くに行っているんだけど、それに僕の本当の両親…会った事もないし見たこともないんだ」
「あ、ごめん。失礼なこと聞いちゃったかな?」
「い、いやでもね。育ててくれている人は優しいし、とっても良くしてくれてると思うんだ。だから僕は今は今で幸せだと思うんだよ」
「…ごめんなさい…天野君」
「まあ、朋崎はともかく、美紀はこれで少しは反省してくれる助かるぜ」
「わかったわよ!もう!悪かったわよ!ううぇーん!麻子慰めて!」
三浦は席を立つとすばやく後ろの席の朋崎さんの背後にそして…。
「ふ!?ふひゃん!?」
朋崎さんの胸を揉み出した。
「ふ、い、いやッ!ちょっとき、美紀ちゃん!だ、だめだって!?そこは!?ひゃん!」
「ふふふ、この三浦美紀もう完璧に麻子ちゃんの弱点を把握!むむむまた大きくなってるね……!」
そう言いながら三浦の勢いは増して行く!は、早く!止めないともっと大変な事になってしまう!
「ゆ、遊佐!は、早く!止めないと!」
美紀の暴走を止めれるのは幼馴染のただ一人…遊佐くらいだ。この時の遊佐のあだ名ストッパーつまり三浦のブレーキ役なのだ。
「ああ!そうだな!美紀やめろ!朋崎が嫌がっているぞ!」
そう言いながら、両手で目を隠しているけど若干隙間を作って覗きながら鼻血を出している。誰だよ!ストッパーとか言った人、ブレーキー壊れてるよ!
「もう!やめるんだ!朋崎さん本当に嫌がってるし泣きそうだよ!」
もう止めれる人は僕しかいないと思い席に立ちながら三浦に説得する。
「ふふふ、そんなこと言っているけど天野君も鼻血出てるよ?」
慌てながら僕はハンカチを取り出して鼻血を拭く。
「ご、ごめん!朋崎さん!」
「ふ、ふぇえん…ふぅんッ!」
「はぁーい皆さん席について帰りの会始めますよ…って!三浦さん!朋崎さんの胸を揉むのやめなさぁぁぁい!」
職員室から戻ってきた担任の先生。高島良子先生が戻ってきた。
「はぁーい。すみませーん」
三浦の手が止まると朋崎さんは息を荒くしながらそのまま座り込んでしまった。
「もう!先生何回言っているでしょう!朋崎さんの胸はおもちゃじゃないんですから!」
高島先生は今年の四月からの新任の先生なのだ。ただ僕ら身長があんまり変わらないので遠足授業とかしたらよく生徒だと思われ間違ってしまうことがある。
「はーい。すみません」
「もう!罰として!今日、先生と一緒にトイレ掃除だからね!きっちり反省しないと駄目だよ!」
僕らではだめだったけど先生ならあの悪を止めること出来てさらに罰を与えてくれた。
「は、はーい。あ、でも遊佐と天野君、麻子のおっぱい揉まれる姿見て鼻血出してましたよ」
僕たちの方向へ指を刺し、三浦は高島先生に訴える。
「うーんじゃあー二人も一緒にやってもらおうかな!」
「「は、はい!」」
完全巻き込まれる。三浦のニヤニヤしながら僕達の顔を向けて来る。
「では帰りの会を始めます。皆さんプリントを配りますので後ろの人に渡してくださいねー」
高島先生の配られたプリントには色々かわいい動物の絵とか書いてありクラスにも人気だ。
「はーい。皆さん全員持っていますか?じゃあ、説明しますよーこれをご両親かみんなの保護者に渡してくださいね。これに書いてあるように再来週の金曜日に授業参観があるので皆さんちゃんと渡して下さいね」
どうやら来週の金曜日に授業参観があるみたいだけど僕にはあんまり関係ないかな。だってほとんど来れなかったのが多いし。
「うーん、たぶん家のまた忙しいのに来ようするぜ。無理しなくてもいいのに」
「もう、そんな事言って着てもらうだけいいじゃない」
遊佐の家はお母さんしかいないので大変らしいけど、何回か見たこと歩けど遊佐のお母さん凄い若いのだ。毎回授業参観くれば分かるけど一人だけすごく若いから目立って遊佐も大変らしい。
「天野君のところは着たりするの?」
隣の席の朋崎さんが話しかけてくる。
「いや、多分来れないと思うけどね…今まで一度も着たことないし…」
「で、でも今日、天野君の育ててくれている人、帰ってくるんでしょう?その人なら、来れたり出来るじゃないのかな…?」
「うん、一応聞いてみるよ」
一瞬、朋崎さんの顔が見えた。ふんわりとした顔と綺麗な丸い目、三浦の言うとおり可愛い顔をしている。
「来れたらいいね」
朋崎さんが小さくて優しくつぶやくように話す。僕は心臓を落ち着かせながら、朋崎さんに向かって話す。
「…うん!」
「おっとお二人さん!なかなか熱いようですね!ヒューヒュー」
「やめとけ」
三浦がこっちに話しかけてその後に遊佐が三浦の頭にチョップ。
でも多分来てもらったら本当に嬉しいけど無理だと思う。とくにあの人なら…。