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つきみ7

「あの東郷さんが、お弁当受け取るなんて…」


「彼女なのかな?」


「絶対そうだ、じゃなかったらあの東郷さんが女性のなんて受け取るわけない」


 由紀は耳を疑いキョロキョロして、また新聞を見つめてるだけしかできなかった。


「やばいよ、本人後ろに居るじゃん」

「まじ…」


 本人が後ろにいるのに気がついた人達が、軽く頭を下げて挨拶をして、その場を逃げるように後にして行く。


 由紀はその場にしばらく呆然としていたが、美里が肩に手を置いて。

「そろそろ教室いかないと、やばいよ」

「うん…」


 それでも動かない由紀の背中を押して、その場を後に。


 美里と別れ自分教室にトボトボ歩いて戻り、扉を開けて教室に入ると同じクラスの女子3人に囲まれた。


「月島さん、貴女どうやって東郷さんを口説いたか知らないけど、貴女みたいな人と相応しくない」中西(なかにし)が口を尖らせていた。


 いきなり言われた由紀は、何がなんだかさっぱり分からなかった。

「あの・・何の話ですか?私、東郷とは付き合ってないですよ…」

 驚いたあまり一歩下がってしまった。


「じゃなに、あの写真は?東郷さんが女性の物なんて、受け取るわけないじゃん」詰め寄って指を指してくる上杉(うえすぎ)


「そんな事、言われても…」困った顔をして鞄を抱える由紀。


「貴女、何様のつもり!」北村(きたむら)が怒ったような口調で両手を腰にやりながら言った。


「高杉さんとも仲いいみたいなのに、東郷さんにまで手を出して、ただで済むと思わないで…」中西が詰め寄り、髪の毛を掻き揚げ、人を馬鹿にするような目で言った。


「はぁ、美里とは幼なじみなんですけど…」身を縮ませながらも答える由紀。


「そんな事いってるんじゃないのよ!」


 学校で五本の指に入る【お金持ち】淋と仲の良い事も許せない中西は強く言った。


「いい事、貴女なんて、この学校に居られなくしてやるから…」北村は、この子さえ居なくなればきっと東郷さんは、私を見てくれると必死だった。


「覚悟しなさい!」上杉も、この子さえ学校からいなくなれば、東郷さんは目が覚めてくれると強指をさしてくる。


 言い残し窓際の自分席に戻っていく3人。


 由紀は(何で、こんな目にあわないといけないの)鞄を抱えて立っていた。明美が教室に入ってきて、黒板の前で鞄を抱えたまま立っている由紀が目にはいる。


「ゆき、そんなところに立ってどうしたの?」不思議そうなに由紀の顔を覗き込む明美。


「あけみ~」明美を見るなり抱きつく由紀。


「なになに、どうしたのさ?」分けがわからない明美。


 しばらく抱きついて、気持ちを落ち着かせて明美から離れて事情を説明をする由紀。


「は?……なにそれ、分けわかんないよ、無視してればいいんじゃない?」中西達を一度見て、由紀の顔を見ながら言う明美。


「うん、そうする…」不安にはなっていたが、明美の言葉を聞いて、元気がでた由紀。


 東郷に話かけても相手にもされなかった、中西 上杉 北村この3人が東郷に近づいた女性とをいじめの対象にして、東郷の名をかたり退学にまで追いやった張本人達。


 東郷が否定をしなかった為に《聞く耳を持たなかった》あの噂は東郷本人がやった事にされていただけなのだった。


 休み時間になると三人から、何かと因縁を付けられる由紀。明美も被害に遭っていた。


 そんな嫌な午前の授業がやっと終わったお昼の準備をしてると。教室の扉がガラガラと開き東郷が息を切らせて中に入ってくるなり。

「つきしまー」

 それを聞いたクラスメイト達がざわめき始める。


 呼ばれた由紀はビックンとして、机の横の鞄を取ろうと下を向いたまま止まった。


 ズカズカと由紀の席まで来る和樹。

「よ、つきしま」

「なにしにきたのよ…」

 鞄を机の上に載せて、一度和樹を見るが直に鞄に目線を落とす由紀。


「俺の弁当は?」

 さらに由紀に近づいて密着するかしないかの距離に立つ和樹。


「あるわけないでしょ…」

 そう言いながら、鞄の中を見ると、お弁当が二個入っているのが目に入る由紀。


(お母さんだ、どうして二人分も入れるの?)思っていると。


 除きこむように、鞄の中を見てくる和樹。

「あるじゃねぇか!俺のだろ?」由紀の後ろから鞄に手を入れる。


「ちょっと、勝手に手を入れないで…」お弁当を取られまいと腕を必死に鞄の外に出そうとする由紀。


 和樹の力が強く力負けして、結局持っていかれるが、取り返そうともみあいになっていた。


 その光景を、呆れ顔で見ている明美。和樹は、由紀からお弁当を奪い取ると。

「お前も一緒に来い」手を捕まれて連れて行かれる由紀。


 それを目にした、明美はキョトンと二人を見ていた。


 それを見ていた中西達が東郷の前に出てきた。

「東郷さん、そんな子、相手にするの良くないですよ」

 中西は必死に止めようと、前を塞いだ。


「そんな人より、私達と食事しませんか?」 

 中西の右横から、通れないようにして言う上杉。


「なんだ、お前ら?俺のじゃまするんじゃねぇ、どけ!」

 顔を顰めて睨み付ける東郷。


「ちょっと、手……放して…」

 お弁当袋を持ったままの由紀は、和樹の手を必死に振り払おうとしていた。中西達を押し退けた。


 東郷は由紀の手を離さないで、教室を出て行く、引っ張られるままに連れて行かれる由紀。


 明美はとまどいながらも二人に付いて行った。


 東郷に何も言えないまま、黙って見送る中西達。


 廊下で待っていた、間宮と安藤は、あまりにも強引な和樹を見て(おいおい、そんなんでいいのかよ)和樹の顔を見るが。


「いこうぜ」

 和樹は、そんなのお構いなしに、由紀を連れてさっさと行ってしまた。


 由紀は、どう頑張ってみても手を振り払えない、諦めて、おとなしく付いて行くしかなかった。


 学食の扉を開けて入って行き、いつも座っている席に連れて行かれた。


 和樹は由紀を椅子に座らせると、隣の席に腰を下ろし、机に頬杖を付いて由紀を見ていた。


 由紀はシュンとして座ったまま動かない。


 淋達が学食に入ると、目の前に明美達が立っていた。


 明美と間宮、安藤が顔を見合わせて、何かを話している、なんだ、なんだ、なにごとだ?近づいて行く淋達。


「ねぇ、間宮さん、東郷さんって、いつもあんなんなの?」


「俺も初めてだよ…あんなかずきみるの、てっか、あんなに強引だとは…」和樹の方に顔を向けた間宮。


「女ずれなのは、はじめてだからなぁ」首の後ろに手をやりながら困った顔する安藤。


「おい、なにかあったのか?」淋が聞いてきた。


「あれ、みてよ…」明美が人差し指を、指すほうを見る3人。


 和樹と由紀が一緒に座っているのが目に入り、ビックリして。


「まじかよ、ゆき、昨日あんなに怒ってたのに、よく一緒に居るなぁ?」思わず声に出てしまう武。


 明美が、今までの事を説明すると(はぁ?)目が点になって明美を見る淋達。


「注文して、ゆきの所にいこ…」心配そうな顔で淋の袖を引っ張る美里。


 お盆を持って、由紀達の所まで来ると皆はいつも座っている席に付いた。席を立ち由紀の後ろに回って小声で聞く美里。


『由紀、もう怒ってないの?』


「え?…何の事で私が怒るの?」昨日の事が、まったく頭にない由紀。


『いや…だからさぁ昨日の事まだ、怒ってないのかな~って…』


 はっとして思い出すが(無理矢理連れて来られて、今更逃げれないじゃない…)。


「もう、いいよ…」


「そっか…」美里は、それを聞くと自分の席に戻っていた。


 食事を始めてしばらくすると。


(かい)、来週の日曜、どっかに遊びにいかねぇか?」東郷が間宮に聞いた。


「別に空いてるから、いいけど…何処行くんだ?」


「行く場所は、遊園地でどうだ?」


「いいぜ」


(ゆう)も来るだろ?」安藤に聞く。


「俺、その日用事あるから、ちょっといけね、悪い…」

 淋と美里と武も誘われるが、淋達は、用事があるからと断ってしまう、武は行くと答えた。


「月島は、もちろん来るよな?」


 (え?)急に言われた由紀は、箸が止まり顔を向けて、しばらく見詰め合うと、和樹は、思いもしない事を言い始めた。


「9時に俺の家前に来い、いいな!」

 (なになに、なんでそうなるの?どうしよう…あ、そうだ)行きたくない由紀は、苦し紛れに。


「明美が一緒に来てくれるなら、行ってもいい…」


「私、予定ないから、行ってもいいよ?」由紀はその答えに、ビックリしまい慌てて明美の方を見る。


 明美は、申し訳なさそうな顔するが、武が行くからどうしても行きたい。由紀に小声でお願いをした。

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