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つきみ5

「もしかして、嫌なの?」

「嫌じゃないけど……変な感じ……」


 由紀はそれ以上は何も言えなくなってしまって、ゆっくりと前を向いて考え込んでいる。


 明美もどう声を掛けていいのか分からずに机に肘を置いて、顔を手の上に乗せて考え込んでいた。


 午後の授業も何事もなく終わり放課後。


 結局かける言葉が、見付からない明美はそれに付いては触れないでいた。


明美と二人で長い廊下を通って下駄箱で靴を履き替え正門に向かう。


 正門の所で立っている和樹が見えてくる。


 和樹は由紀達に気が付くと、こっちに歩き始め。

「月島、車に乗れ」

 命令口調で言われた、由紀はちょっと憂鬱な気分になり、足取りは重くなる。


 歩きながら後ろを振り向、手を振って明美と挨拶を交わした後。


 車に乗せられて、しばらくすると東郷が由紀を見ながら、またとんでもない事を言い始めた。


「月島、明日から俺の弁当も作ってもってこい」いきなり言われた由紀はびっくりして和樹に顔を向ける。


「はぁ?」

「は、じゃねえよ」

「何で私が、あんたのお弁当作らないといけないの?」

「それで昨日の事は白紙にしてやる」

(少しでも良い人なんじゃないのかなぁて思った私が馬鹿だった)嫌なそうな顔を浮かべ下を向くと。


「いいな、明日絶対に作って持って来いよ、わかったな!」


 だんだん近づいてくる和樹に、後のドアまで追い詰められ、怖いと思いつい。

「わ、わかったから、作ってくるからそんなに近づけないで」


 和樹を両手で押し返そうとするが、止めるだけしかできない由紀。

「わかればいいんだよ」


 そう言った後元の席に戻り何事も無かったように外を眺めている。


 鞄を抱きしめたまま下を向いている由紀。


「月島、悪かったよ……だからそんな顔をするな」


 下を向いて動かない由紀を見て、優しい言葉で話しかける和樹。

『え?』命令口調ではなく、優しく言われ顔を上げて和樹の方を見る。


 少し笑い顔を浮かべて由紀を見ている和樹としばらく見つめ合うと家の前に車が止まり。

 

「じゃ弁当忘れるなよ」


 由紀を降ろすとそう言い残し、行ってしまう車をいつまでも見送っていた。玄関に向かいながら(なんなのもぉ~何でこんなに気になるの)ぶづぶつ思いながら、ドアをカチャと開けて。

「ただいま」


 いつもより低いトーンで言う由紀、聞こえないのか返事はなく、そのまま二階に上がっていった。自分部屋へと向かい、勉強机の椅子にトンと座ってしばらく考え込んで、出てくるのは溜息だけだった。


 携帯を出して(明美と美里にお弁当の事は言いづらいな~)しばらくにらめっこをして、普段通りのメールをした後、早めに寝てしまった。


 ◆◇◆◇◆◇◆


 翌朝、メールが着信音で目が覚め(ん~~誰よ、こんなに朝早く)パッカと開けて見ると{弁当忘れるなよ}と、書かれている。


「はぁ……」ムクっと起き、深く溜息を付いて、しばらくぼーーっと。


(あぁ~もう、わかってるわよ)ぶつぶつ思いながらベッドを降りて奥のクローゼット開けて着替えると、トントンと階段を下り洗面所で顔をバシャと荒い、両手でほっぺたをパンパンと叩いて。(ん~~~)鏡を見つめて(もう、考えるのやめよ)髪を梳かして台所に向かっていった。


 朝食を作り終わり、お弁当を作り始めると、母が台所に入ってきた。

「おはよう」

「おはよう」

「あれ?お弁当二個もあるけど、二人分食べるの?」


 由紀がいつも持っているお弁当箱と、少し大きいのが二つ並んでいた。


「友達の分、頼まれて……」


 ピッタと止まり苦笑いして、母の方を向いた。


「そうなの、頼まれたの……」


 それを見た母は何かわかったような顔をしてしばらく由紀を見た後、ニコニコと近づいてくる。


「このお弁当あげる子って、どんな子なの?」


「いいじゃん、べつにそんなの……友達の……あ…明美に頼まれたの………」必死にごまかす様に、つまりつまり言い始める由紀。


「へぇ~そうなの……へぇ~あけみちゃんにね……」嬉しい顔して、リビングに行ってしまう母。


 由紀は朝食ができたと呼びに行き、食事を早く済ませると逃げるように家を出てバス停に向かっていた。


 いつもより一本早いバスに乗り席に座ると(明美達は絶対に内緒にしなくちゃ)バスに揺られながら考え込んでいた。


 学校に着くと和樹の教室に向かい、廊下の壁にもたれかかり待っていると。和樹が歩いてくるのが見え近づいていき。


「ちょっと、こっちに来て……」

「なんだよ?」ちょっと驚いた顔して和樹は由紀の後を付いて来る。


 人がいない踊場まで来ると。


「はい、これ昨日言ってたお弁当、絶対に皆に内緒だから言わないでよ、いい?!」


 恥ずかしそうにお弁当が入った鞄を差し出した。


「あぁ、わかったよ」


 和樹は嬉しそうな顔もしないで受け取った。


(なによあいつ、ありがとうくらい言えないのか)と思いながら早足で教室に向かっていた。


 由紀が行った後、東郷は笑顔を浮かべて教室に戻って行く。


 教室に入ってきた、和樹の顔を見た、間宮が聞いた。


「和樹、朝からご機嫌じゃねぇか、何か良い事でもあったのか?」

「別に何もねぇよ」

「その笑顔はなんだよ」

「普通だよ、普通」

「怪しいな……」首をかしげる間宮。


  ◇◆◇◆◇


 不愉快そうな顔で教室に入って来た、由紀を見た明美が聞いた。


「何か嫌な事でもあったの?」


「別に何にもないよ」


「じゃなに?その不機嫌そうな顔は?」


「だから、なんにもないって………」席に座ってしまう由紀をただ見つめてるだけの明美。


 授業中の由紀は普段と変わらなくなっているが不思議で(朝あんな顔をしてたのに、おかしいな?)机に肘を置いて由紀の背中をじっと見て考え込む明美。


 午前の授業が終わりお昼休み。

「あけみ、学食いこ」

「うん」

 明美は(まぁ話したくなったら話してくれるでしょ)ぶつぶつ思っていた。


 廊下を通りいつもは開いているのに閉まってた、学食の扉を開けて中に入って行く。


 学食に入るといきなり大声で呼ばれた。

「つきしまー、こっちだ早く来い!」


 ビックンとして声のする方に顔を向けると、和樹達が由紀達のいつも座っている席に、座っているのが目に飛び込んできた。


 唖然として(なんでいるのよ)固まっていると、周り人たちがざわめき始め。


「東郷さんが、呼んだ子ってあの子じゃないの?」

「どのこ?」

「ほら、あの子よ」

「二人いるけど、どっちだ?」

「鞄持っている方の子だよ、きっと」


 学食に居た全員が由紀を見た、皆の視線が痛い由紀は早足で和樹の所に向かった。


「ちょっと、叫んで呼ばないでよ」恥ずかしそうな顔で和樹を見つめる由紀。


 それでも和樹は顔色を変えず座ったまま。

「いいから、ここに座れ」


 隣の席の前をトントンと手で叩く。


 内心では由紀の顔が薄赤くなっているのが可愛くて仕方ない。


 そんなの事思っているとはしらない由紀は複雑な表情を浮かべながら、和樹の隣にチョコンと座ると下を向いていた。


「あけみ、どうしたんだ、こんなところにつったたままで?」学食に入ってきた武が、不思議そうに聞いた。


 淋達も直その後は入ってくる。


「ん?あ、東郷さんがいて……ちょっと驚いただけ」武の方に顔を向けて、由紀の方に指を指す。


「まじかよ…昨日の今日でよくやるなぁ………あいつも……」頭を掻きながら、和樹の方を見る淋。


「とりあえず、注文してゆきのところにいこう」美里が明美の腕を引っ張った。


 淋達はメニューが出来上がるのを待って、由紀の所の行くといつも座っている席に腰を下ろした。

 

「よ、かずき、今日ははやいじゃねぇか……」

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