つきみ2
「おい!東郷とやり合ってる女がいるぞ!」
「まじで?」
「まじ、まじ、いいから見に行こうぜ」
淋達はジャンケンを止め顔を見合わせる、(まさか?)疑問に思いながらも、早足で向かった。
すごい人が集まっていた。
由紀が東郷に何かを渡しているのが見える。
それを目にした淋は人を押し退けて、由紀の所に向かって行く、3人はそれに付いて行った。
淋達を見ると和樹は不思議そう顔を浮かべて。
「淋、どうかしたのか?」
心配そうに由紀を一度見た後、和樹の方に顔向けて。
「和樹こそ、由紀が何かしたのか?」
「お前の知り合いなのか?」
「幼なじみなんだよ、由紀とは……で、どうしたんだ?」
「別にたいした事じゃねぇよ」
言い残し、行ってしまった。
和樹達の背中を見ながら(別にたいした事じゃないだろ、普通ここまで落ち込むか)と、思う4人。
下を向いて、小さくなっている由紀の所に明美と美里が駆け寄った。由紀の肩に片手を置いて、心配そうな顔で覗き込みように美里が。
「大丈夫だった?なにもされなかった?」
「うん、ちょっと言い合いしただけ……」美里の方に顔を向ける由紀。
皆に今までの事情を説明する。
皆はそれを聞いて驚いて由紀を見た。
「そんな事やったの?」思わず声に出てしまう明美。
「うん……」
返事をした後は下を向いて黙ったままだった。
内心では私これからどうなるんだろう、不安になっていた。
落ち込んで元気が無い由紀を、皆が心配した顔で励ましてくれる。
「由紀、あんまり考えるなよ」心配した顔の淋。
「大丈夫だって、ほら元気出して」明美に背中を軽く押される。
「何かされても俺達が守ってやるから、安心しろ」武が肩をポンっと叩いてくれたが。
由紀の耳には入らず、空返事をしていた。
明美達に連れられ、学食に戻る。
席に戻ると由紀は残りのお弁当に手を付けないで終い始める。
皆は落ち込んだまま元気を出さない由紀に、どう声を掛けていいのか分からない。
心配そうに由紀を見ている淋達を背に学食を一人で出て行こうとする由紀。
「ゆき、ちょっとまって、私も一緒に行く」明美に呼び止められるが、聞こえないのか行ってしまった。
明美は慌てて食器を返却して、由紀を追いかけて行く。
淋達も食器を返却して、由紀の事を考えていた。
学食を出て廊下を歩きながら、淋達は放課後、由紀の所に行く事を決め、教室に向かっていった。
教室に入り自分の席に行き溜息を吐いて座る由紀。
携帯の着信音が流れ、見ると東郷から{放課後、正門前で待っていろ}書かれている、どうしていいか判らなくかった由紀は、明美に相談する。
それを聞いた明美はちょっと困った顔して、しばらく考えた後、由紀の顔を見て。
「逃げると後で何されるか、わからないから覚悟を決めて行くしかないよ」
「うん、でも……怖いよ」
「一緒に行ってあげるから、そんな顔しないの」にっこり笑う明美。由紀はそれを聞いて少し安心した。
今まで暗い顔をしていた由紀が、少し笑った顔を見ると明美は、ほっとする。
授業中に、明美はその事を、美里にメールで知らせ、{じゃ玄関に放課後行く、淋達にも伝えておくね}返事か届いた。
休み時間に由紀にその事を伝えると。
「本当に……皆来てくれるのだ」嬉しそうに言う由紀を見て安心をする明美。
午後の授業は早く時間が感じてしまう由紀、気が付いたら放課後になっていた。
帰りの準備が終わると、明美に背中を押され、教室を後に。
明美は廊下を由紀に合わせて歩き、玄関に向かった。
下駄箱で靴に履き替えていると、淋達が由紀を見つけて走って駆け寄り。
「由紀、俺達も一緒に行くから、そんな顔をするな」淋は少し笑顔でいい。
「何かされそうだったら、俺がぶん殴ってやるからな」右手の拳を前に出す武。
「ほら、行くよ」美里は由紀の手を引いて歩き始める。
皆に言われた由紀は笑顔を浮かべた。
それを目にした皆は安心した顔をする。
心配して着てくれた皆と正門に向かった。
すでに東郷が正門で待っていて、迎えの車も見える。
由紀達が見えた東郷は、由紀の所まで歩いてくると。
「大勢で来たな、そんなに乗れないから月島だけ車に乗れ」
由紀は東郷が来ると淋の後ろに隠れようとするが。
東郷に手を掴まれてしまい、皆から引き反される。
由紀は誰か助けてくれないのといった顔浮かべて淋達を見る。
それを見た武が止めようとした時。淋は武の肩を叩き首を横に振り、小声で何か伝えた後は、武は由紀が連れて行かれるのを黙ってみていた。
明美と美里が(武を何で止めるの?)淋を見るが淋はそれを無視して和樹に言った。
「和樹、由紀に変なことするなよ」
「するかよ、じゃあな淋」手を振る。
「じゃな」
この時の由紀は前から二人が知り合いだったのを知らなかった。
東郷に手を引かれ、車に連れて行かれる由紀。
心配そうな顔で見ている明美と美里を背に車に向かう。
それでも淋だけは普段と変わらない顔をしていたのに誰も気がついてはいなかった。
(やっぱ皆東郷の事が怖いから助けてくれないの?あの噂は本当なの?)下を向いて思う由紀。
(私これから何処に連れて行かれるの?)不安で心臓の鼓動が早まり、緊張しながら車に乗せられる。東郷の車を見送った後。
淋は皆に事情を話していた。
「あの和樹がさぁ、どうやら由紀に一目惚れしたみたいで……」
「嘘?!あの東郷さんが?!信じられない」
嘘言わないでよ、といった感じで淋に言う明美。
美里と武も、あの東郷がありえないよ、淋を見る。
「嘘じゃないって、まじな話、それでさぁ、すげぇ真剣な顔して由紀の事色々聞いてきたんだけど、聞き方があまりにも詰め寄るから、一緒に居た間宮と安藤も笑っていたぞ」
それを聞いた皆がクスクスと笑い始め。
「まじかよ、あの東郷がねぇ、これは遠くから見守るしかないな……でも知っていたのならもう少し早く教えろよな、心配しなくてすんだじゃねぇ?」
これは面白そうだと武は思いながら言うが前もって言わない事に首を傾げる。
明美と美里は、女性に冷たい東郷さんが、これは面白そう思って笑っていた。
「わりぃ、由紀に絶対に言うなって言われてたからな……」申し訳ないと手を前に出す淋。
美里が淋を見ながら。
「でも、何で私達にまで言っちゃ駄目だったの?」
「前もって話してたら、お前ら二人絶対に顔にでるからなぁ、俺が和樹に睨まれる」
あからさまに明美と美里を信用してない淋。
「え~~私達ってそんな信用ない?」
明美が淋の顔を見上げて言う。ないないと首を縦に振る淋。
明美と美里はちょっとムっとした。
淋は思い出したかの様に話し始め。
「あ、和樹からの伝言、もしこの事を由紀に喋ったら、覚悟しろよだってよ、明美に美里、お前ら二人が一番喋りそうだからな!」
明美と美里はそれを聞くと、怖いと体を縮ませる。
「で、今日は由紀を車に乗せて何処に連れて行ったの?」