つきみ 最終話
突然の校内放送で、私は職員室に呼び出された。
「ごめん、これお願い…」
明美にお弁当を渡して、早足で向かった。
職員室に着くと担任の先生の様子が変だ。
「月島、落ち着いてよく聞くように
御両親が乗った飛行機が墜落したと連絡があった。
急いで現地に向かうようにとのことだ。
気を確りもつんだぞ」
先生に連れられ、校舎を出て迎えの車に乗せられた。
◆◇◆◇◆◇◆
通夜、葬儀が執り行われるなか、由紀は無表情のまま、親戚や友人知人の対応をしている。
「由紀ちゃん、無理しなくていいのよ」
「ここは、私達に任せて休んでていいのよ」
由紀の耳には届かなかった、一心不乱にこなしていく由紀は、痛々しく誰から見ても今にも壊れそうだった。
淋や美里、武に明美は、ただそれを遠くから見つめることしかできない。
日も暮れて夜の帳が落ちた頃、無言で二階に上がっていく由紀に誰一人声を掛けることができない。
沈黙だけが包み込んでいく。
ガチャ、玄関の扉を開いて和樹が入ってきた。
小さな声で「由紀は?」発した。
淋は黙ったまま二階を目で追って、そのまま目線をしたに落とした。
和樹は淋の肩に手をそっと置いた、一息すると二階の階段に向かっていった。
暗闇が包む二階は月明かりだけが差し込めていた。
窓から差す月明かりを浴びながら座り込んでいる由紀がいた。
ゆっくり、ゆっくりと側に近づいていく、一歩、一歩が重い、見えない重圧に押し潰されそうだった。
それでも歩みを止めずに由紀の前にゆっくりと腰を降ろした。
数秒の沈黙が続く…和樹は呟く様に声を発した。
「由紀、もう我慢しなくていいんだぞ」
由紀はビクンと反応するとゆっくりと和樹を見た。
「……ねぇ、嘘だよね」
膝で立ち上がり和樹の胸元に手を付いた。
「ねぇ、嘘だよね、こんなの嘘だね」
「辛かったな」
「嘘って言ってよ!こんなのないよね!ねぇ、嘘だって言ってよ!」
何度も何度も和樹の胸を叩きながら泣き崩れて顔を埋めていく由紀をただ抱き締めることしかできない。
由紀の声だけが辺り一面に木霊した。
数時間、泣き続けた由紀はいつの間にか眠ってしまった。
◆◇◆◇◆◆
翌朝、ゴソゴソ、無探り誰かを探すが、いない、ムクッと起きて、キョロキョロ見渡した。
涙が自然に溢れでてくる、いない寂しさと両親を失った悲しみだけが包み込んだ。
布団を抱き抱え蹲ると和樹が戻ってきた、咄嗟に抱き付き獅噛み付いた。
震える子犬の様な由紀をただ、ただ抱き寄せることしかできない。
掛ける言葉も見付からないが、決して手放さい事を心に誓う和樹だった。
「……何処にもいかないで」小さく呟く由紀に。
「行くものか」答える和樹だった。




