つきみ
ダメダメですね。初めて書いたのだから仕方ないか、いつかリメイクだな、きっと……。
数年前の話の事、些細なきっかけから月島由紀の人生が大きく変わってしまった所から話は始まっていく。
高校に入学して、早二ヶ月半が過ぎようとしていた頃。午前の授業が終わり、クラスでは、皆がお昼の準備をしていた。
その中でも、このクラスで一番可愛い女の子の隣に居るのが由紀で、その一番可愛いのが由紀の親友の西九条明美だった。
由紀も可愛かったが、男子の視線は明美の方を向けられている。まぁ二人とも可愛かったのは間違いなく。
二人は楽しげになにやら話をしながら、教室を出て廊下を歩き、学生食堂に向かって行く。
学食は30テーブルほど有り広く、同じ学食が隣接している大学の方にも有り、在住学生は好きな方で食事をしていた。
由紀達は高等部の学食で食事をしていた。
学食に着くと、明美がセットメニューを選んでいる間に、廊下側の席を取りに行く由紀。
この学食は5種類のセットメニューが有り、自分の好きな物を選んで注文できた。
学食で一番大きな8人が座れる席にちょこんと腰を下ろす由紀。
いつもお昼は同席している、同級生の高杉淋、高杉美里上条武達が、学食に入ってきた。
由紀達とはクラスは違っていたが、幼い頃からの付き合いで、5人はとても仲良し。皆はお盆を持って、由紀の所までくると、いつも座っている席に付いた。
由紀の隣に明美、その隣に美里、明美の前に武、美里の前に淋といった感じに。食事をし始め、少しして。
「由紀、相変わらず、お弁当作ってきているよね、でも毎日お弁当を作って持ってくるのは、面倒くさくないの?」と、明美が言った。
「ん、そうかな?べつに面倒くさくないよ」首を少し横に倒し返事を返す由紀。
「学食で買って食べればいいのに……」
学食を頼んだ方が楽じゃないのと言いたげな明美。
「自分で作ったほうが美味しいし、料理するの好きだからいいの」料理に自信がある由紀は言い切る。
明美は、自分が選んだセットを少し見て、考えた後、由紀の顔を見ながら。
「じゃ私も頑張って、作ってみようかな?」
「明美がやる気なら、私喜んで手伝うよ」
「でも、由紀の家、私の家と逆方向じゃん、朝家まで来てくれるの?」絶対に来ない事が分かっているのが承知で言う明美。
「え……それは……」それは遠慮したいと言いたげな顔をする由紀。
由紀と幼馴染みで親友の美里が、それを聞いて思い出したかのように話しはじめる。
「ゆきは昔からそういう所まめだよね、うちの家でクッキーとか作り始めた頃なんて、リンが実験台にされていて……」
美里の双子兄淋は、それを聞くとふいて、すごい嫌そうな顔になり、美里を見て言った。
「こら! 嫌な事 思いださせるな!」
「えぇ~だって、本当の事じゃん」あからさまに面白半分で、笑いながら言う美里。
淋は苦いのを思い出しながら、すごく嫌な顔をして。
「あの黒焦げクッキーの不味い事……」
由紀はだんだん腹が立ってきて、むくれ顔になり、ちょっと強めに言う。
「ちょっと、酷い言い方しないでよ、それに実験台ってなによ、美里!」
淋は美里が怒られているのを面白がっているが、由紀の方を見て、右手を出してすまないと頭を下げる。
「ごめん………」苦笑いで少し反省しながら言う美里。
「ほんとにもう……」
呆れた顔になる由紀をよそに、淋の親友の武がとどめを刺してくる。
「あぁ、あれか、俺も食わされたけど、最悪だったな」
「そこまで言わなくてもいいじゃん、確かにさぁ、焦げてたけど……」
少し沈んだ顔になり、肩を落としてしまう由紀だが、すぐに気持ちを切り替え違う話題で盛り上がる5人。
そんないつものお昼休み、会話がはずんでいた時。廊下の方から怒鳴り声が学食に響き渡り。
話し声でざわざわしていたのが一瞬静まり返り、声が聞こえた方を学食に居た全員が見るが。
何事も無かったかのように、また学食に居た全員が話始める。
由紀、《なんだろう?》と、気になり、席を立とうとした時。
「行かないほうがいいよ」
声の持ち主が誰だか分かる明美は由紀を止めたるが。
「ちょっと見てくる……」
皆が行くんじゃないという顔をするのをよそに、由紀は席を立ち行ってしまった。
美里は、淋を見ながら、不安そうな顔して。
「どうしよう、行っちゃったよ……」
淋が呆れ顔でほっとけほっとけと言わんばかりに。
「大丈夫だろう、見に行っただけだし」
そう言いながら、目線は由紀のお弁当に向いた。
淋は席を立ち、ぐるっとテーブルを回って由紀の座っていた所まで行くと、食べかけの卵焼きを、ひょいと手で掴み口に放り込んだ。
「うめ~~」
幸せを感じるような顔になり、皆はそれを目にすると。
「あ……ずるい」明美と美里。
「あ……ずりぃ」武。
声を合わせて言う。
武は、まだ手を付けられていない、卵焼きを取ろうと体を前に出し、手を伸ばすが。
明美に、ハエを落とすような感じで、手をパチンと叩かれた。
「いてぇ~」手をさすりながら武は明美を見て。
「ひでぇ~~俺も食いたいのに……」
「駄目、私が食べるの!」
明美は武の顔を睨み付けて、卵焼きを取ろうとした瞬間、美里に後ろから羽交締めにされた。
「うわ……ちょっと、苦しい……」
手をばたばたさせ、美里の腕を叩く。
「私も食べたいのに卑怯!」
美里は食べさせないのに必死だが、フリーの淋は、ここぞとばかりに食べようとしたが、いつの間にか後ろに回っていた武に押さえ込まれた。
「げ………いつの間に、はなせよ」
「ぜってぇ~食わせね!一個食ったからいいじゃねぇか」
由紀がいない事をいいことに、皆は卵焼き一個に必死に取り合いをしていった。
由紀の作る料理はすごく美味しくて、滅多に食べられなかったからで。
「もう、ジャンケンしよ」取り合いに疲れた美里が言うと。
「誰が勝っても恨むなよ!」
淋が真面目な顔で言うと、皆はうなずきジャンケンをする。一方、皆がそんな事をしているとは知らない由紀は、廊下に出て声のする方に向かって行く。
その声は大学の学食がある方から聞こえてくる。
二十メートルくらい歩いて、廊下の角を曲がった時、由紀の目に男子高生が女子高生を殴っているかのような場面が目に飛び込んできた。
由紀は思わず駆け寄り男の手を取った。
「なんて事するの、女に手を上げるなんて最低!」
怒鳴られた男は手を止め、驚いた顔をして由紀を見た。
だが、助けたはずの女子の言葉に、由紀は驚いてしまう。
「ちょっとなんてことするのよ、あなた酷すぎない!?」
その女子は、由紀を睨み付けた。
由紀は、わけが分からなくなり、キョトンとした顔でその女子の方を見て。
「え? あの……」
実はこの時、男はこの女子に腕を無理やり組まれたのが、嫌で振り払っただけであった。それを最初からずっと側で見ていた、男子高生二人が、【何だ、この馬鹿女は】と、いった表情を浮かべて。一人は腰に手をやり、一人は頭を掻きながら呆れ顔で由紀を見ている。三人とも由紀より身長が15センチくらい高く、淋達とあまり変わらない。体格は武とかわらなくガッチリした感じで、男子二人が由紀を見下ろし、面倒くさそうな顔をしながら今までの経緯を説明すると。
「おまえさぁ……勘違いにも程があるぞ!もう少し状況を見て動けや」
「おい、お前いつまで和樹の腕つかんでるんだ?」
そう言われて、由紀は慌てて手を離す。
和樹と呼ばれた男子は腕をさすりながらじっと由紀を見ながら。
「お前、名前は?」
「月島です、あの………すいませんでした」
ふいに和樹に聞かれとっさに謝っていた。
和樹は一呼吸置いて、また由紀を見ながら、とんでもない事を言い出した。
「オマエ、今日から俺の女な、呼び出したらすぐ来いよ!」
由紀は何を言われているのか、わからなかったが。
「余計な事をしたのは謝るけど、どうしてそうなるの?」
不思議そうな顔を浮かべて和樹を見た。
「うるせぇ、口答えするな!」
詰め寄るように強く言われた由紀は、だんだん腹が立ち。
「そんな事、納得できるわけないじゃん!」
「お前は、俺のもんだって言ってるだろ!」
言い合いが始まり、大学の方で食事をしていた学生達が騒ぎに気が付き、次第に野次馬が集まってくる。
周りがざわめき、周囲の声が聞こえ始め。
「東郷さんに楯突いている女の人初めて見た」
「あの子何かやばい事したの?」
野次馬の声が聞こえ、由紀は入学して明美言われていた事を、思い出した。
目の前にいる男子、東郷和樹は両親が学校に多額の寄付金をしていて、逆らった生徒が両親からの圧力で何人も退学になっているらしい。
特に近づいて来る女性には、酷い事をしていると噂があるから気を付けた方がいいよ。
この高校は外から見るとエスカレター方式にしか見えないが、実際は学校が近くに有るだけで高校の右隣に幼稚園、高校から道路を挟んで中学校その隣に小学校、高校の奥(裏)に大学といった感じに。
高校と大学の間には塀はない。
高校から入学してきた由紀は東郷の事をよく知らないでいった。
まずいと思いながらも、どうしていいかわからない。
「月島!」と、急に和樹から呼ばれ、びっくりして黙っていると、メアドと携帯番号教えろと言われ由紀は戸惑いながらも教えてしまった。
その少し前、ジャンケンをしはじめた淋達。学食に慌てて入ってきた生徒の声が聞こえてきた。