行動する。
結局、分からなかったな。
彼は木から木へ移りながら、あのイノシシを忘れようとしていた。
考えた所で、分からないものは分からない。知識が足りない。
日の出と共に周囲の木の水分を吸い上げ、朝食の鳥を食べ。そして移動。水分の無いものだと思っていた水草は、実は水を内蔵していた。嬉しい発見だ。彼の肉体の成長により、そこまで切れるようになったための発見である。
そろそろ大きな獲物が欲しい。もっと成長したい。
現在の身体サイズは、体高50センチを上回り、体重は20キロを超える。
しいて言えば、飼い犬並みの大きさだ。
戦闘能力は、そのレベルをはるかに超えているが。
そして彼の特殊な能力としては、身体の大きさを自由自在に変えられる事だ。伸び縮み自由な複数の腕部を瞬時に形成可能。更に強度も自身の肉体組織に応じて、好き放題。
その代わり、恐ろしいほどのエネルギーを必要としている。
彼の能力の全てを発揮してしまうと、一瞬で全エネルギーを消耗するのだ。
あのイノシシ戦も、そうだった。
すぐさま食べられる大量のエネルギーが死んでくれたから良かったものの、そうでなければ、自滅していただろう。
全力を振るう必要があれば、そうした方が良い。でなければ、死ぬ。
しかし、あまりにも力の使い方を粗末にすると、それはそれで危険だ。
元のアメーバに戻ってしまう。
良かったと言うべきなのか?
あの大きさの生き物に出会えない。
希少生物だったのかな・・。
飛ぶのも小さいのも美味い。
でも、デカいのに会えない。
どこに居るんだ・・・。
根本的な問題として、彼は元水生生物。
地上の生き物に関する知識が、あまりにも欠如していた。
ゆえにあてどもなく旅を続ける羽目になっていた。
・・・。
・・・・あいつよりやばい奴に会ったら、どうしよう。
考えてなかった。やべえ。
腕を囮に逃げるくらいしか、発想が無い。
どうすっかなー。
イノシシ以外の事を考えようと努めていた彼は、より手強い存在をイメージしてしまった。
体高数メートル、体重数トン程度の生き物を。
そして困った事に、彼のイメージするような生き物は、実在している。
キリン。
体高5メートル。体重2トン近く。陸上生物中、最強の一種である。
唯一の幸いとして、日本国には野生のキリンは居ない。彼が戦闘に及ぶ事は、まず無い。それだけは幸運であった。
ブオン
?
聞いた事のない鳴き声。何者だ。
キッ
これは鳴き声のようだが。足音かな。砂などの地面の音も混ざってた。そして先の鳴き声から察するに、めちゃくちゃデカいな。しかもこれだけの大音を立てながら、闊歩出来る生き物。
ここらの主か。
距離は数十メートルあるが。どうする。
殺るか。
・・行こう。
おれは。
彼は、少しだけ震えていたが。
それでも、己を試しに前に進む。




