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考える。

 あの大イノシシとの戦いから3日が経過していた。


 その間、彼は樹上に陣取り、ずっとそこを動かなかった。


 時折、迷い込んで来たタヌキや猫を狩って食べてはいたが。自ら動いて狩りに出る事は無かった。


 木の上で、刺突結界を張り巡らせ、監視の目を行き届かせ、完全な防御体勢を組んでいた。



 率直に言って。彼は、おびえていた。



 死んでも動いていたあの大イノシシの命の火が、彼を心底、震えさせていた。


 もしも、大型生物というものの大半が、あんな特徴を持っているのであれば。


 もう、戦いたくない。


 体は確かに成長した。堅い骨も、頑強な骨格も、強靭な筋肉も、発達した神経も、全て学習出来た。


 それでも、あの執念は、分からなかった。



 3日もの間。


 彼は恐怖に塗り潰された心のまま、身動きが取れなかった。



ちゅんちゅん


 クソが。良い気なもんだな、こいつら。



 彼は、その身の上で巣作りを始めた鳥類に悪態をつくのが日課になってしまっていた。


 まあ、数羽が集まった時点で美味しく頂いているので、文句を言う筋合いでもないが。


 飛行生物はその見た目に反して、容易く捕獲出来た。


 奴らは確かに飛んでいる最中は、捕らえられない。が、止まってしまえば、話は逆になる。


 と言うか、彼は今、樹上生活をしている。しかも、その腕を四方八方に伸ばして。


 即ち、鳥は彼をカズラのように、植物の一種として捉え、全く無警戒に彼自身に営巣しているのだ。中には穴を開けようとする者さえ居る。


 図らずも、彼は罠を仕掛ける事に成功していた。怪我の功名というべきか。



 メシが途切れないのはありがたい事だが。



 彼は、自分から動こうとしない自分自身に対して、鬱屈した気持ちを抱えていた。


 罠。


 合理的で効率の良い、効果的な戦略だ。


 木に擬態している以上、他の捕食者にも狙われにくく、かつエサから近付いてくれる。


 昔の彼なら自画自賛しつつ、このまま生涯を終えたかも知れない。



 だが。


 あのイノシシと出会った。


 あの生き様を、全身で味わった。



 4つ足の器官は全て覚えた。飛ぶ奴らの機構も把握した。羽ばたきには、おれの重量が勝ちすぎるが、滑空だけなら出来るだろう。


 更に陸上のおれら・・虫・・の特性は、陸を生きるのに大変役立つだろう。



 それでも、あのイノシシを再現出来ない。


 あいつの、あいつの。



 彼は、それが何か、まだ分かってはいなかった。


 一般的な生物を超越した彼をして畏怖させる脅威。


 それをこそ、命と呼ぶのだと。

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