ACT:4-4/レッドスケール・マイワールド
赤い劇場で赤い椅子に座って、赤が9割を占める映像を眺めていた。
犠牲となったヒトの赤か、ココロが流した紅か。何を示しているのか、ボクには分からない。分かりたくもない。
そうだ。ボクは、バケモノなんかじゃない。人間の一人さえも殺せない、ただの臆病者だ。心底憎んでいた父親も、千絋に「親殺しのバケモノ」と言われるのが怖くてジギーに殺してもらった。彼(女性的な一面をあれから見る事がなかったので、男と考える事にした)にやらせた行為が積み重なり、それと同じ大きさの善行をやってのけたボクを混ぜた結果……世間の言う「絶対王(バケモノ)としてのボク」がいると言う訳だ。そんなモノになんか、なりたくもないのに。
こんな力も持ちたくて持ったんじゃない。時間を止められても、未来を見る事が出来たとしても、千絋との距離は一向に縮まらない。それどころか、彼女のココロは自分より弱い時紅に傾いている。
「ボクなら、一生側にいてあげられるのに」
呟いた言葉が耳に入る事はなかった。
この空間には音と言うモノがない。赤色だけを楽しみたいのであれば最適な空間だ。最も、そんなおかしな考えのバーサーカーがいるのか疑問だけど。
……赤は人を昂らせる色と言うけど、赤にまみれたここはやけに落ち着く。それは多分、この劇場から離れられない事を知っているからだろう。自分で言うのもなんだけど、ボクは環境への適応力がそれなりに高いのだ。
ここで無声映画を眺める事なんか、2回目になればもう慣れていた。
「ほう、こんな所にいたのか」
音がないハズの空間に、ハスキーな声と靴音が響く。
「なっ……」
「隣、いいか」
声の主はそう言いつつも隣の席に座る。赤と青の目、先に行くにつれて黒くなる白い髪、左右非対称な袖のコート、一言で言うなら「特徴的の集まり」。
……ボクをそのまま大きくした様な姿だった。
「やぁ、境の巫女よ。私と会うのは初めてだったかな」
驚きのあまり声が出なかった。……いや、口はさっき動いていた。動いても聞こえないんだった。
「自己紹介を必要としているらしいな、私の名前は黒徒。まぁ、お前と同じ名前だ。そしてこの世界、つまりお前の主である」
……環境への適応力はあるけど、こんな状況への適応力はない。
目の前に自分とそっくりな女の人がいて、ここの理なんて無かったかの様に話し掛けてきて、しかも世界の主などと言っている。
こんな状況をすんなり飲み込める方がおかしいだろう。
「……で、ボクに何の用があってここに……」
ボクには聴こえていなくても相手には聴こえている様で、ふっと笑った。
「重要な事を伝えたかったのだよ。……お前は、この後ココロが壊れてもおかしくない様な事をいくつも経験する。そして私の目によるとお前は最後に負けて死ぬ。次にお前が死ぬと、今度こそこの世界は破滅を迎える」
「ちょっと待ってよ、ボクが死ぬって」
「『世界を壊す者』がここにも来ているのだ。奴はお前をしつこく狙うあまり、とうとう輪廻転生の理を自由に捻じ曲げる力を得た」
「は、はぁ……」
そんな事を言われても現実味が無さ過ぎる、と思うボクの気持ちを、果たしてこの人は理解しているんだろうか。
いきなり自分がこの世界そのものだとか何とか言われても、そう簡単に信じられるモノじゃない。
「……最後に言っておく、よく聞いておけ。お前が望むのであれば、この世界に起こりうるあらゆる事象はお前に味方するだろう。
お前は、『奇跡でさえ創れる存在』なのだから。
__ではな」
彼女は話すだけ話すと席を立ち、どこかへ消えてしまった。後を追い掛けようとしても、ボクは動く事さえ出来ない。
……なるほど、最後に言っていた事は嘘ではないらしかった。
ボクは、バケモノになる事を望まない。
最後の方なーんかどっかで見た事ある台詞だなと思ったらFFCCRoFでした。FFCCのDSシリーズ大好きです、両方死ぬほどやり込んだ記憶があります。




