ROG:4-6/モノノケミカル
「は……はははハは」
明らかに様子がおかしい。どうしようかと考えていると、
「こーら、何しようとしてやがる」
咲の頭に何かが振り落とされ、彼女は机に伏せる形で動かなくなった。
「おう、千絋だったか。このアホッタレはなーにしてんだか……大丈夫か?」
どうやらテトさんが止めてくれたらしい。刀身に「相談永久無料」と彫られた木刀を振り回して、呆れた顔をしている。
「あ……はい、大丈夫です。ありがとうございます」
頭を下げると、苦笑いされた。
「お前の話し方は何度会っても変わらんな。どうにかならねぇか?」
「いえ……親からこういう話し方をしろと教わったもので」
「へぇ、そりゃまた一段とかたっ苦しいな。若いうちからそんなんじゃあ人生つまんねぇぞ、敬語は大人になってからでいい」
目を細めたテトさんの言葉に、首を振った。
「今となっては、家族がいたと言う証拠は教わった事しかありませんから。……妹が生きていたなら、少しは変わっていたのかもしれませんが」
「……そうか、悪りぃ事言ったな」
ばつが悪そうな顔をして、彼女は咲の隣に腰を下ろした。
「で、何か話してたんだろ。この時期になるとあいつはおかしくなるからまともに話せやしない。それにあんな奴がリーダーじゃおかしい、ギルドの責任者名があいつの名前でも、うちがここのリーダーだ。用件はうちに言え」
白目を剥いてぴくぴくと痙攣している咲をばしばしと叩き、テトさんはそう言った。
……正直、咲にもテトさんにもあまりリーダーらしさを感じられない。創作者達はいつも3人で互いを支え合っている、と言うのが俺の考えだ。
この組織(ギルド)にリーダーなんていない、いや要らないのではないだろうか。
「な、何笑ってやがる!!おい千絋、バカにしてねぇでさっさと用件を言いやがれ!」
「すみません、バカにしたつもりはないですが……あの、しばらくこちらに匿って欲しくて……」
勝手に和んでいると、顔を真っ赤にしてバシバシと頭を叩かれた。澪さんが寝無さんに暴行を働くのに似た感じか、と冷静に考える。体質上、この程度では何の痛みも感じない。基本的な性質はあの人と同じだが、入れられたモノが違うと色々変わるらしい。
ぼんやりと思い出して苦いモノが込み上げてくると同時に、テトさんが口を開いた。
「お前バカ言うんじゃねぇ。ここは貧乏ギルドだぞ、3人でギリギリだ。お前らんとこみたいに、ぽんぽん業績なんか上げられねぇんだからな」
……やはり何年経っても現実は厳しいまま、か。
「そう、ですか。無理を言ってしまって申し訳ありませんでした。……では」
「待ちな、無理とは言ってねぇだろ。ここが貧乏なのはこのアホッタレが変な本やらゲームやら買い漁ってんのが原因だ。それさえ止めれば毎日肉と野菜と米は食い放題、スペースの事を考えなきゃ7人泊めるのは楽勝だ」
「え?」
「お前が皇龍から離れるって事は、相当な理由があんだろ?ちゃんと手伝ってくれんなら、いくらでも匿ってやる。だがちゃんと理由は言えよ、言える様になったらいつでも聞いてやる。……分かったらほら、ボンクラの部屋の片づけでもしてこい。遠慮は要らねぇ」
「あ……ありがとうございます!!」
テトさんはにっと笑うと、これで面倒な仕事が減ったや、と伸びをしながら外に出ていった。




