ROG4-1/不完全円卓会議
カッターシャツのボタンを全部閉めて、ネクタイを結ぶ。
赤黒く汚れた黒いトレンチコートを身に纏えば、「喪服」の完成だ。
この格好をするのは年に一度だけど、今夜は重要な会議とやらに出席しなければならないらしい。もしかしたら、その後に何かあるかもしれない、と言う訳で着替えた。
ボクがこういう格好をしている事を、組織の皆は知らない。知られたら大変な事になるだろう。
非常口から飛び降り、外に出ると緊急転移パスを転移術式にかざした。
光が消えると、目の前には赤い電灯に照らされた空間があった。モニターや監視カメラが無数に張り巡らされ、中央には円卓が置かれている。
円卓を囲む椅子には、著名な方々(……と言っても知り合いが大半だったりする)が勢揃いしていた。
「……久しぶりですね、クロトさん」
最後に会った時より少し背が伸びたらしいポルカが、暗い目でボクを見ている。相変わらず部屋着みたいな格好だけど、両肩と胸には物々しいプロテクターを着けて、鎖のついた杖を傍らに置いていた。
「……そうだね、何年ぶりだったかな……」
考えていると鋭い殺気を感じたので、身体を逸らした。
さっきまでボクの首があった所には、赤い槍の穂先があった。
「ハハハ、驚いタぞ暇人王!!オマエがまダ鈍ッていナかッタとはナ!!」
そしてボクはと言うと、コンバットナイフを界人の首に突きつけている。
「……ただのおしゃべりで数少ない幼馴染みが死ぬのは御免だよ」
「ただのおしゃべりではありません。お二人とも、早く席について」
「「……はーい」」
界人は帽子を脱いで手元に置くと、見るからに高級そうな椅子に腰を下ろした。ボクもその隣にゆっくりと座り込む。
「ポルカー、この椅子どこのメーカー?」
「もう、少しは場をわきまえた発言をして下さい!ジョーグラン社です!」
もうこの席を立ちたくない、と思うぐらいにはふっかふかだった。
「全ク、オマエと言ウ奴は……そウ言えバ、1人足りない様だガ、どうしタ?」
ポルカは何も答えない。……嫌な予感がした。
「こほん……では、会議を始めようと思います。今回ここに呼び出された理由は皆さんご理解していると思いますが、その前にもう一つ話す事があります……」
彼女が息を吐き、界人とボク以外の出席者はごくりと唾を飲んだ。
「__黒光(くろみつ)イマリ、つまりフリストルのリーダーが……一般区域にて惨死体で発見されました」
とうとう最終章です。グログロしてきますよ……




