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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:3/真偽はガラスケース越しに
83/113

ROG3-7/表裏凹凸

時計の音が耳にうるさい。自分の心臓の音はもっとうるさい。いっそ全部止まってしまえばいいのに……僕の中の僅かな非現実も、可能に出来るクロトが羨ましく思う。

「……格好付けてみたけど、本当やめとけばよかったなぁ」

別に、クロトの事を好きとは思っていなかった。僕は彼女……そう、澪に好意が伝わらない事につまらない怒りを覚えていた、それだけだ。

だから、男みたいに、誰でもいいから無性に傷つけてやりたかった。その対象になっただけだ。

どうやらクロトはそれを見抜いていたらしい。でも、何も知らない澪にそれを見られてしまった。

……凄く怖い。だって、好意を伝えても、彼女が好いているのは「寝無としての僕」だ。こんな僕には見向きもしないだろう。

……いや、それは後回しにして……起きたらまずどう言うかが問題だ。本当は女なんて言って信じてくれるだろうか……

「ん……」

膝の上でもぞもぞと動く感覚があった。そして数秒も経たないうちに彼女は目を覚まし、

「……バカ野郎」

起き上がったと思うと、何故か泣きそうになりながらそう吐き捨てた。

「バカ野郎……バカ野郎バカ野郎バカ野郎っ!!なんで、あたしの前でっ……あんな事してんだよっ!!あたしは……テメェの事好きだったのに……!!」

殴り掛かろうとしてきたので、どうにか脱力させるとそのまま抱く様な形になった。……恥ずかしい。

「……クロトに気があった訳じゃない。あと、凄く酷い事を言うけど」

深く息を吸った。それだけでは不安とか恐怖とかは全然収まらないけど、気休めにはなる。

「……僕は男じゃない。正真正銘、女だ」

「嘘、だろ」

認めて、くれないのか。

ああ、こいつがこんなんなら、いっそ僕も全部出して教え込んでやろうか。結果がダメだろうがどうだろうが、もう知らない。

……知りたくもない。

「誰のせいでこうなったと思ってんのさ、いい加減認めたらどうだい!?僕は……あんたみたいに生きたかったんだ!!でもあんたみたいになれないから、あんたがあんたらしく生きるための手伝いがしたかった!!」

「は……?」

「昔からお父様に酷い事されてたんだよ!!身体中いじられて……犯されて!!それでもあんたがいたから、耐えようと思ったんだ!!あんたがずっと正しく生きてくれるなら、それでいいって思ってたんだ!!」

澪が何か言っても気にしない。自分がぼろぼろに泣いてたって構わない。偽りを……正常をやめたヒトは、何よりも強いのだ。

「だから男のフリして生きてたんだよ!!でもココロは女のままだった!!女のままでも__」


「僕はあんたが……澪が好きだった……!!」

指の震えは止まっていた。こいつの近くにいられる世界が崩れない限りは、どうなってもいい。そう思っていた。

「くそっ……分かったから……泣くなよバカネム……!!テメェ、男のフリしてたんならもっと我慢出来るだろうが……!!」

「うるさい!!僕はあんたにっ、分かって欲しかっただけだ……っ!!」

「だから、分かったっつってんだろうが……バカ……」


結局夜が明けたって、全部が姿を現したって、何も変わりはしなかった。僕の知っている澪は、そのままでいてくれた。

明確な答えは返されてないけど……

__今は、それをココロから嬉しく思う。

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