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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:3/真偽はガラスケース越しに
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外界に王の影はない

「……うぅ」

「……あー……何と言うかー……」

「……むごいねぇ、これは」

全てが終わった後、僕達の辺りには無数の紅い華と肉塊、むせ返る様な死の臭いだけがあった。

色々と経験している僕とクロトはいいけど、千絋ちゃんと時紅はかなり気分を悪くしたのだろう、口元を押さえていた。

気分を落ち着かせる魔術ぐらいは使えるので、嘔吐(リバース)する事態はなんとか避けてもらった。

「……ありがとうございます」

「お安い御用だよ。……それにしても、クロトにそんな能力があったとはねぇ。『お見事』だったよ」

「……お見事と言われても……能力を使ってる間は、寝ていて記憶が全然ない。『復元させた』のを初めて使ったから、どう言う事をしたかは、ジギーに教えてもらわないと分からない。多分処刑だと思うけど……ボクは、何をしていた?」

「……『走れメロス』って読んだ事ある?」

「あるけど」

「それの王様がもーっと怖くなって女子供関係なく、誰これ構わず断罪!処刑!……って感じ」

「……なら良かった。ちゃんと、イメージ通りだ」

淡々と言って、クロトはふらふらと歩き出した。

……が、その先は行き止まりだ。

「そこ、出られないよ。……ほら、ついてきて」

「……」

びくっ、としてこちらに戻ってくると、クロトは僕の手を握った。

「いやー、僕も好かれたねぇ……」

「うるさい、ふらふらしてるだけだ……このヘンタイ」

しばらくの間、クロトが僕と顔を合わせてくれる事はなかった。

ちょっと前まではあんなに感じが良かったのに……なんか猫みたいだなぁ、と思う。

……いや、猫そのものか。



「あの、質問なんですけど……」

「何?」

「仮に出られたとしても、どうやって異能者区域に戻るんですか?」

非常口へ進む途中、千絋ちゃんはおずおずと尋ねてきた。

なるほど、口調が堅苦しいのは元からか。本人は丁寧に話しているつもりなのだろう、でもなんだか怖く見える。……失礼だけど……せっかくの見た目なんだし、もう少し口調も女の子らしくした方が美人っぽいなぁと僕は思……

「……寝無さん?」

「あ、いや。……ここは「ギフ」って所で、異能者区域の近くなんだよねぇ。もし僕が信用出来ないなら、飛び降りたらすぐ『いける』って事を教えておくけど?」

「……遠慮します」

それから押し黙って、時紅の手を握ると後ろをちょこちょことついてきた。

「……なんか、ひよこみたいだねぇ」

「あ?」


「……すみませんでした、許して下さい、何でもないです」

「千絋を困らせるんじゃねぇぞドヘンタイ」

軽く咳をして、ネクタイを直す。

ちょっと千絋ちゃんをからかっただけでこのザマなんて……もうこの人怖い。

……ああそうだった、忘れていた。非常口はどこだっけ。

端末の地図を見ながら、慎重に進んでいく。

さっきの騒動は何だったのか、と思うぐらいに静まり返った廊下には、4人分の呼吸と足音。何だか、妹の肝試しに付き合っていた時と同じ様な気持ちだ。

……こっちの方がよっぽど怖かったけど。

とにかく、この外に出ても追っ手が来るのは避けられないし……どうしよう。ああ、簡単か。殺せば良いんだ。


段々クロトみたいな考え方になっていた。このままではいけないなぁ、と自戒するために頬をつねる。勿論痛かった。

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