理由なき暴力
「……よし、この辺だ」
2階は1階と間取りは変わらず、コの字型になった廊下に病室(外観は病院みたいな施設なのでそう呼ぶ)が並び、両端に階段があるだけだった。
しかし広さはなかなかのモノで、暗闇の中で彼女がいる部屋を探すのに時間が掛かった。
なんせ監視カメラが夜間灯以外の光を全て怪しんで、光源が消えてもなお追跡してくる仕様だったのだ。気づいたクロトに片っ端から壊してもらったけど、それでも監視に見つかりそうになってジギーが数人殺す羽目になった(本人は喜んで血を浴びていたが、クロトが心配なのでそう言う事にしておいた)。
軽くノックをして戸を引く。やはり質素な部屋だった。
「……起きてー」
ベッドに声を掛けるが、彼女は起きない。仕方なく布団を剥ごうとすると、肩をぐいっと掴まれた。
「……誰だよアンタら……オレの千絋に何するつもりだ」
背丈が僕と同じぐらいの、黒い短髪の男の子だった。やはり被験者の着る白い服を着ていて、目は千絋ちゃんのそれを逆にした白黒だった。
疲れているのか、目元にはクマが見える。
彼も改造の過程で失明したのだろうか。
「……千絋ちゃんの知り合いかい?」
「だから何だよ。……オマエら、この間オレの事失敗作って言ってただろ。殺すならオレを殺した方が良いんじゃねーか」
睨みつけてくる男の子にどう言えば良いか悩んでいると、いきなりクロトが彼に斬り掛かった。
「っ!?」
そして身体に傷をつける事なくチップを破壊する。僕達が唖然としていると、
「救出しに来ただけだ。ボクを忘れたか?……時紅(じぐ)」
むすっとして胸ぐらを掴み上げた。
「……おー、クロ。久しぶり……なんか強くなってねーかー……?後話し方もおかしいし……」
さっきまで威圧感があったのに、炭酸の抜けたコーラの様な話し方になった。知り合いか、友達か。忘れていたぐらいだから前者だろうなー、と思いつつ再び布団を剥がそうとする。
「どいてろ野郎。オレの役目だ」
押し出され、代わりに彼が布団を剥がした。
薄々予想はしていたけど酷い。同性同士、しかも相手は一個下なんだから何もしないのに。
「おい、起きろ千絋……おーい」
「ん……!?え……じ、時紅、何でここに?」
頭をぽんぽんと叩くと彼女は目を覚まし、すぐ近くにあった時紅の顔を見ると真っ赤になってあわあわとしていた。
「クロが助けに来てくれた……逃げるってよ」
「……無駄口を叩いている暇はない。早く行くぞ」
右手で恒例の監視カメラ破壊を行おうとすると……
『不審者発見!不審者発見!警備員、警備ロボ、直ちに出動せよ!』
__夜間灯の光が点滅し、けたたましい警報が発令された。




