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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:3/真偽はガラスケース越しに
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救済出来ないヒーロー

「……ん?八王子さん、こんな時間に外出ですか?」

「ええ、クロトに呼び出されたんですよ……もうここには帰って来れませんね」

「そう、なんですか……今までの事、本当にありがとうございました」



……ちょろい。

荷物とある程度の資料を集めて、手持ち無沙汰に見える様に相手を操る。勿論姿は今まで通り、男のまま。

無理があると思ったけど、案外すんなり出来た。

ここに来る前までは自分の容姿、後ノートなどの小物ぐらいしか上手く偽装出来なかったのだけど、やはりあの心臓のおかげだろうか。

とにかく、結果的に役に立ったと言えるのは確かだ。感謝しておこう。

「……よし、行きますか」

収容施設までは徒歩で数分。わざわざ車で行かずとも余裕だ。


カードキーを使って中に入り、見取り図で他の病室も見ながらクロトのいた部屋に向かう。


「……準備は出来てるみたいだねぇ」

「当然だ」

クロトはナイフと銃を持っていた。恐らく研究員から奪い取ったモノだろう。被験者全員に付けられる、識別と監視を兼ねたチップは粉々になり、原型を留めていない。

しかし気は抜けない。監視カメラがあるからだ。

僕の能力は、機械相手に通用しない。

自分の髪はここに来るまでに短くしているが、バレるかもしれない。

「……クロト、ジャミングって……」

「生憎機械には疎くてね。でも……」

クロトはゆっくりと僕に右腕を向ける。

次の瞬間、僕の真逆にあったカメラが物凄い音をたてて壊れた。

「『一瞬以上の速さ』で壊せば、問題ないだろう?」

……なるほど。バレた所でそれが何だ、殺せば良い話だろう、と言う事か。

「……えーと、僕の信用性が崩れるとか考え」

「どうせ逃げるなら何をしたって良いとは考えないのか?」

随分キツい即答だった。

「でも戻って訴えるための証拠品とか」

「なるほど、キミは死にたいんだな」

「……はい、諦めます」

断られている僕からしてもいっそ気持ちがいいほどの速さで、この王様はお答えなさった。

「わざわざ訴えて大事にする必要はない。全滅させればいい話」

「……追っ手とか来たらどうするの」

「殺す」

話は聞かない、おまけに脳が筋肉ときた。なんて子だ。

「僕の能力は機械相手には効かないんだよ、『この区域(くに)』はただでさえ機械が多い……」

「だから、壊せばいいじゃないか。本当はキミ、現状はそれしか思いつく方法がないんだろう?方法を考えてもまた人間に縋るだけだ。覚悟を決めろ、ここでボクに殺されるか、異能者側に寝返るか」

……お父様には、逆らいたくない。

でも、僕としては異能者側に寝返りたかった。

澪の様になれなくても、本当の姿で澪の側に居れなくても、自分なりに自分のやりたい事がしたい。


そう……なんと言うか、もう少し気軽に、人に嫌がらせしたい。

「……分かりましたよ、全く……」

強引な王様に恭しく礼をした。


そして、僕は歩き出す。

黒から、白へと。

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