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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:3/真偽はガラスケース越しに
66/113

記録:364

10月11日、9時。

僕が目を覚ますと、何故か昨日とほぼ同じ様な状況になっていた。

「おはようございます……えーっと、何で貴女がここにいるんですかねぇ……」

今の自分は上手く笑えている自信がない。もしかしたら、酷い愛想笑いでもしているかもしれない。

胸にあるのは困惑のみ。腹にあるのは……

死目のみ。

「ぬへへ……♪聞いてよ八王子君……ぬへ、ぬへへへ……♪」

目の下にクマを作り今にも倒れそうな彼女は、気持ち悪い笑い声をあげて迫ってくる。

「いやいやいや普通に!!普通に話して、どうぞ!!重いです!!」

「はいはい、茶番はここまでだね♪……さて、明日にはここを出る八王子君に大ニュースだ☆」

「……もしかして、クロトの事ですか?」

「流石八王子の子供だね、大正解☆10月11日、3時25分19秒……意識の回復を確認したのさ☆」

僕の腹から降りると、さも楽しげに彼女は笑う。その気味悪さは西洋の魔女そのものだった。

と言っても、死目の見た目はかなり若い。やや青みががった緑色の髪をピンで留めていたりもするし、遊び盛りの20歳みたいに見えた。

ちなみに実年齢は40歳らしい。死語に「美魔女」とか言うのがあったけど、まさにそれが似合う外見(……と性格)だ。

「で、お願いなんだけど……」


黒塗りのやたら高級そうな車に乗り、実験に成功した被験者が収容される施設に向かった。

今の僕は1人で、1階の一番奥にある部屋の前に立っている。

ドアは凹みに凹み、壁は所々崩れる寸前まで盛り上がっていた。病院の様な施設の静けさに、異様な雰囲気を纏わせている。

正直、かなりの危険を感じた。このまま足を踏み入れたら殺されるのではなかろうかと、微かな恐怖を抱いた。

……けど、相変わらず罪悪感は感じなかった。

緊張しながらドアを開ける。

「……失礼するよ」


不必要なモノは何一つ置かれていない空間。周りには、死んで間もない大人の死体が転がっていた。

古いモノと新しいモノ、おびただしい数の血痕が見られるベッドの上。


上体を起こして、震える少女(バケモノ)がいた。

「……動くな」

まるで刃物の様に、冷たく鋭い声が刺さる。

「……何もしないよ。僕はただ」

「何もしないなら、せめて説明ぐらいしてから帰って欲しいモノだね」

まだ幼い少女とは思えない声の主……クロトはベッドから降り、はっきりと僕を見据えた。

鮮血を思わせる紅い右目には、憎悪を宿している。

右腕は、ちゃんとあった。何故か禍々しい光を纏っている。それが永久機関の影響である事は一目瞭然だった。

両拳、そして白衣は血に塗れて、白い領域はほとんど残っていない。

そして、右手をこちらに向けている。……完全に敵として見られているらしい。

「答えろ。ボクは何でこんな所にいる?何で生きているんだ?ポルカに心配されるぐらいなら、ボクはあの時死んで、そのままにしておけば良かったのに!!」

異能者区域、その王に限りなく近い『人ならざるヒト』。

そんな名前を出す異能者は……

「……『塾』の出身かな?」

「聞いて何になる」

「僕は明日異能者区域に戻る。……だから、一緒に連れて行こうと思って」

流石に、ホイホイと人間共に侵略なんてさせてはいけない。

だから、彼女の生みの親同然である僕が連れて行く。そしてその力で、それなりの地位を獲らせてあげる。

最大の目的は、異能者区域を守り抜く事。

彼女らに罪悪感はないけれど、知識なら、情報ならある。

ただ悪い人だと思われてはたまらない。

「甘言には乗らないぞ、人間……早く答えろ」

「君は人体改造もとい人型兵器の実験体となり殺された。そして約1年間の改造を経て甦り、実験に成功した異能者が行く施設に送られた、と言う訳だ。後、僕は人間じゃなくて異能者」

「……何で、人間に協力してる」

「利用されてあげたから。もっと詳しく言うと、これ以上汚されたくないから」

嘘をつく理由もないので正直に言うと、クロトは目を見開き、すぐに伏せた。

「……ごめん」

「謝らなくていい。それより、どうなの?君は外に出たいの?」

「出たいじゃない。『出なきゃいけない』だ」

意志が強い子だな、と思った。きっと復讐をするつもりなんだろう。

自分を殺した異能者に。

この「ジェノバ機関」に。

「で、そちらこそどうなの。……なるべく早く、出来るなら今日にでも……ここから出してくれるなら、ひとまずボクはキミを殺さない事にしておく」

そう言えば、自分も散々あいつらのせいで汚されたんだっけ。


だったら。その仕返し、この身が真っ黒になるまで手伝おう。

……それが僕の、「罪滅ぼし擬」だ。


「いいよ、じゃあ今日の夜にでも行こうじゃないか。君の望んだ事ならば」


そう言って、施設のカードキーを見せびらかした。

険しい表情のままだったクロトは、少しだけ笑った。

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