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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:3/真偽はガラスケース越しに
62/113

記録:4

施設はどこも薬品臭いが、極秘研究室はその倍薬品臭く、更に胡椒の様な臭いも混じっている。ずっとこんな所にいると体調を崩しそうなので、支給されたガスマスクを付けた。


案内された先にあるのは、非常灯に照らされたガラスの水槽の中でもとりわけ大きいモノだ。赤い液体で満たされたその中には、背面に取り付けられた装置から伸びる無数のプラグやコードに繋がれた少女がいる。

頭頂部から飛び出した毛と、毛先に行くにつれて黒くなるセミロングの髪が特徴的で、8歳らしい凹凸の少ない体型をしていた。

静かに目を閉じて水に漂うその姿は、眠っている、と言うよりは何かに祈っている様な感じに見える。

「やっぱり……この子は、死んでるんですか……?」

何故か分からないけど、僕はいつ見ても生きているんじゃないかと思いそうになる。

しかし彼女にはあるはずの右腕が無く、やや黒ずんだ断面が、切り取られた事を示しているだけ。他にも背中や首筋、太ももにも縫い目があった。相当酷い殺され方だったのだろう。

「決まってんじゃーん、昨日も言ってなかったっけ?それがワタシのお気に入りさぁ♪」

歌う様に言って、死目は女の子……クロトの入った水槽を撫でる。

その目は愛しい人を見る目そのもので、少し嫌悪感を覚えた。

彼女が「それ」と言っているのだから、やはりクロトは死体なんだ。

「で、今度は八王子君にこの子の肉体改造をやって頂きたいのね♪DNA改ざん装置の使い方は習ったよね?後ろに引っ付いてるから♪」

「……ええと、すみません」

「何?」

金属製のテーブルに置いた資料を開き、肉体改造についてのページを見せる。

「僕、資料を見せてもらって思ってたんですけど……ここに書いてある通りのやり方でやっても、彼女の強さを充分に発揮出来ないと思うんです。……僕の様な部外者が口出ししても、無駄だとは分かっていますが」

僕の意見に、どういう訳か死目は深く頷いた。

「いいねぇそれ、上の奴はへっぴり腰だし、人間性も命令も中途半端だからワタシも飽き飽きしてたんだ♪じゃあ資料の奴は訂正。ドメイン強化レベル、及びDNA改ざんレベルは3倍!!後は千切れたとこだねぇ。んーと……」

しばらく頭を抱えて、死目は目を輝かせた。

「そだ、あれにしよう。失敗しちゃった第6世界のクリーチャーと、こっちの世界のクリーチャーを融合させた奴……ええと、『刃蝕彗皇(アスラ・レギオン)』だったっけ。あれを永久機関にするのさ♪」

遊びの計画を考える子供の様な声音に、身の毛もよだつほどの狂気を感じた。

永久機関とは、迷宮(ラビリンス)の礎となる強力なクリーチャーの「迷宮と共に消滅してもまだ魔力として存在し、地面、あるいは周囲の生命体に憑依しその性質を発現させる」と言う特性を活かしてただの死体を兵器に変える「臓器の様なモノ」だ。

どんな風に死んでも、永久機関に内蔵された身体情報を元に身体を再構成し、復活させる。


つまり、不老不死と言う事。

それだけではない。永久機関は武器としても機能する。底無しの魔力を持ち主とリンクさせ、現代魔術は撃ち放題、しかも身体に収まらない膨大な魔力による肉体強化効果で、全てを塵に変える破壊者へ仕立てあげるのだ。


しかしそうなると言うのは完全に移植出来た際の仮定であり、移植成功率は10%にも満たない。成功しても力を発現させないまま自我を乗っ取られ、様々な精神疾患を引き起こす場合がほとんど。失敗すれば身体を蝕まれ、クリーチャーと化す。完全な移植に成功したのは、これまで実験体となった183人中1人だけ、その内失敗したのは179人だ。


彼女はそんなおぞましい事を、遊び感覚で実行しようとしている。

マッドサイエンティストとは、皆一様にそんな者なのだろうか。

無邪気に、それでいて不気味に笑う死目を、僕はただ眺める事しか出来なかった。

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