ROG:3-3/界蝕者(コネクター)
「……『界蝕者(コネクター)』、って何?」
寝無……もといネムは、少し考えてからボクの質問に答えた。
「……人造異能者、に近いかな。人工的に造られた世界、そこに存在する生き物や物体に身体の一部、もしくは全てを『接界(コネクト)』させて戦う。千絋ちゃんの能力と同じ様なモノだと思ってくれていいよ」
人造異能者、『界蝕者』か……それにしても、何のためにそんな人間を造っているんだ。
一番考えられるのは侵略か。異能者区域を侵略するつもりなら、絶対無理に決まっている。「ミズガルド連合」のリーダー……ポルカは互いの土地を侵略する事を禁じていて、それを破る行為は絶対出来ないハズだ。
しかし、それは人間と異能者だけの話。
界蝕者がボクの思う通りの存在なら、侵略も可能かもしれない。
疑いを確信に変えるために、あるいは疑いを深めるために思いきって聞いてみた。
「……それって、人間の身体に細工した奴?それとも完璧な人工物?」
ネムは待ってましたとでも言いたそうにニヤリと笑った。人間を化かした後の狐を思わせるその笑みは、女の子になってもなお本当に鬱陶しい。
「両方……かな。僕は前者しかよく分からないけど、人造人間は造ろうとしてたみたいだよ」
「……そう」
元が人間なら問題はない。しかし、ネムの言った事は数年前の話だ。なんせ、人間に掛かれば科学の進歩は恐ろしく早い。疑似的に世界を造るぐらいなんだから、人造人間なんて容易く生み出せるだろう。
……待てよ。
「そんなモノを造るんだから、当然侵略が目的なんだよね。一般区域も、土地を増やすためにはかなりの費用が掛かりそうだしさ……でも、その人工世界に移住するって選択肢は無かったのかな?」
「ああ、無理みたいだよ。最初そのつもりで人工世界を5つも造ってたみたいだけど、結果は全てバケモノの蔓延るトラップハウスでねぇ……しかも、入れる人が全然いない。何故か分からないけど、バリアが張られてるらしいって死目から聞いた」
「……それで、界蝕者?」
「そう。存在しても意味のない世界なら、今までの研究は全て無駄になる。だったら利用しよう……そういう訳で、すぐさま界蝕者の開発が進められたって訳」
「じゃあ、ネムが一般区域に行った理由って……実験体になってもらうためじゃないの?」
「……親の病院は計画に協力してて、収容された患者の死体を提供しては高額の報酬を受け取っていた。生きた患者も、だ。今もきっとそうだろうねぇ。あちら側もかなり信頼してるらしくて、見ての通り優秀な僕を計画に協力させれば更に金がもらえると思ったんだろう。それで研究のための人手が足りないからよこせって言われて、僕が送り出されたのさぁ」
長い……いや、これはかなり長過ぎるだろう……髪をいじりながらふっと笑う。
……意外にナルシストなのかな?
「……今ナルシストとか思ったでしょ。しかし親が大層な美男美女でねぇ。『自分の容姿は最大限利用しないとやってけないぞ』って小さい頃から耳にタコが出来るぐらい聞かされたから、それを守ってるだけさ。
さぁ、長話はさておき、続き……しようか」
静かに笑うネムの声は本当に綺麗で、眠ってしまいそうなぐらいに優しかった。




