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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:3/真偽はガラスケース越しに
59/113

記録:1

『持ち物検査はなんとか凌いだ。

じいやから聞いた通り、建物も部屋の設備も人の心も何もかもが黒い。今が秋なせいか、余計寂しく思える。機関の研究施設と、僕が割り当てられた部屋だけが白い事には何となく安心感があった。

この大型浮遊都市……もとい一般区域は何を浮力にしているのだろうかと考えたが、答えが出ない。

……とにかく、明日から忙しくなりそうだ。今日はゆっくり寝よう。』


どうやら、昨日の僕の選択は間違っていなかったらしい。6時から会議室に通され、白衣を渡された後僕が配属された人体研究部門……通称「曖昧作り(ハーフメイカー)」がよく使う機械の操作について長ったらしく説明された。

「……君の担当する実験体、そして我々の最終目的の説明はこの資料を参考してくれ。くれぐれも外部の人間、異能者の前で口を滑らせない様にな」

サングラスを付けた黒服の男は、ありがちなセリフを淡々と言った。

「了解しました……えっと、僕の担当研究者の人って」

黒服は一瞬固まり、深いため息をついた。サングラスからは、僕を哀れむ様な目がわずかに覗いている。

「……『死目 東(しにめ あずま)』。ジェノバ機関1の技術を誇る機関のリーダー……で変人だ。君も災難だったな。あいつは今日一日寝ているらしいから、手伝う事は何もない。……観光したいなら、今のうちにしておくといいさ」

「……はい」

「では明日から頼むよ、八王子君」

高そうな椅子から立ち上がると、黒服は会議室を出ていった。

しかし、僕の前を通り過ぎる際に「あの野郎リーダーならまともに仕事してくれよなぁ……」と小声で文句を言っていたのがどうにも気がかりだ。

仕事をしないのなら、かなり忙しくなるかもしれない。

少し憂鬱になって、自室に戻る事にした。


「観光って言われてもなぁ。行きたい所なんて無いんだけど……」

渡された資料を机の引き出しから出し、ページをめくる。


『__第一実験体、死々王クロト。

死亡時の年齢は8歳。機関側の異能者「死々王夜夢」によって殺害に成功。複数の能力を持ち、これまでの異能者を遥かに凌ぐ身体能力、精神力を持つ。良い結果が期待されるものの、『魔力閉鎖症候群(クローズ・シンプトム)』による永久機関移植時の暴走も懸念される。失敗した際のリスクは大きいが、成功すれば我々にとって大きな一歩となるだろう。

なお精神は不安定気味、快楽的殺人者になる可能性高との事。


追記:完璧な……の『界蝕者(コネクター)』、……開発の基盤としての身体検査、……も検討せよ。ただし女の子で頼む。 死目 東』


追記の所だけは所々黒い線が引かれていた。残念ながら、僕の非科学的な能力でも、残留思念と言う非科学的なモノは見れない。「ただし女の子で頼む」、とはどう言う意味なのか。ぜひとも詳細を知りたいモノだ。

……他にもあるみたいだけど、面倒だし読むのはもう少し後で良いだろう。

胸ポケットからメモ帳を取り出し、気になる事を書き留めて少しだけ仮眠する事にした。


全部読んだら……観光、してみるかな。暇だ。

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