無関係、情報求む
野獣沢だけが縄で縛られたのを見ると、あたしは表に出た。
「……さて、野獣沢……反乱一派のリーダーの名前は?言えるよね?」
絶対王が野獣沢に迫る。何も知らない人が見れば、殺人事件にしか見えない事だろう。それぐらいの迫力があるのだ。
「知らないんで離して下さい、オナシャス」
「はぁ!?じゃあアンタ、何で僕達襲ったの!!」
「いや、なんとなく……?あっ、そうだ、龍哭寺!!お前なんか知ってるだろ!!」
「ワ、ワイですか!?」
「……キミはまだまともそうだな。何か知ってる事はあるか?」
逆らうととんでもない事になるのは分かっている様で、彼女は絶対王の問いに大人しく答えた。
「……ええと、よく覚えてませんけど……青い髪の男でした。ワイと野獣沢先輩はお師匠様……テト様を守ろうとしたけど、何か妙な機械で追い出されたんです。それで目の前にあなた方がいたんで、罠かと思って……」
「妙な機械?」
「はい。ワイも仕事の手伝いで最先端の機械に触れる機会はありますが、異能者区域じゃあ見ない奴でした。……あ、証拠もありますよ」
龍哭寺は腰に付けていたポーチを漁って、小さな黒い塊を取り出した。
「……一般区域で開発中の、転移装置だ。こんなに小さいの、よく奪って来れたね」
「いえ、複製(コピー)です。オリジナルには劣りますけど、多少は使えますよ」
「クロト、知ってるの?」
「ああ」
絶対王は短く返すと、顎に手を当てて小さく唸った。
「……なんでわざわざ一般区域のモノを……異能者なら、異能者区域のモノを使えば良いのに……」
「あっ、思い出した!!思い出したゾ~!!」
足をじたばたさせながら、野獣沢が喚いた。
「何っスかいきなり……」
「青い髪だけど、青い髭もあった!」
「はぁ!?」
……それって、ウタニの事じゃねぇか。
あいつが、親父や師匠をぶっ殺そうとしてるのか。
「羽谷だっけか。やっぱりあいつなんだねぇ、悪い事しそうな顔してたし」
「とりあえず、片っ端から叩きのめして聞き出すしかないっスね……」
「あ、その必要はないですよ。複製はオリジナルの場所を察知出来ます。転移先をそこに設定すれば、一発バヒュンですよ!」
龍哭寺は意気揚々と拳を振り上げてみせた。
「それで決まりだな」
「でもこれ、ワイが咄嗟に作った奴なんで性能が不完全ですよ。おかげで2人しか突入出来ないんですよね」
龍哭寺が言い切ると同時に流れ弾が飛んできた。突っ込んで切り伏せる。
「あたしが行く」
「じゃあ僕も行きますかねぇ。羽谷とか言うのに聞きたい事もあるし、クロトが言った事ちゃんとやらせないと」
「それは決定事項だ、安心しろ」
……絶望野郎がついて来るなんて気持ち悪い。絶対王の方がまだマシだ。あんな弱っちいのは戦力にすらならない。
「じゃあ、すぐにお嬢と全身真っ白な奴を転送しますよ。ほら白いの、一応武器の準備しといて下さい」
「なんで僕ばっかこんな扱いされるのさ……クロト」
「はいはい。四次元リュック、卍鎌(まんじがま)!」
絶対王はリュックから大きな鎌を出すと、絶望野郎に手渡した。
「ボクも脅迫なり何なりして、キミ達の所に向かう。……絶対に死ぬなよ」
「死ぬ訳ないっスよ。んじゃ」
にっ、と笑って拳をぶつけた途端、赤い光が広がる。
「「グッドラック!」」




