炎天下の牙獣達
この話には真夏の夜っぽい要素があるっぽいー、気をつけて欲しいっぽいー!
意識を取り戻すと共に、蒼い光が消える。
「……何だよ、これ」
久しぶりの家の前は、野太い怒号と血が飛び交う闘技場と化していた。
「反乱派は結構な数いたみたいだねぇ」
「……これじゃあ救出も出来ないな」
どうした事やら、と二人で肩をすくめている。こんな事態なのに、何でそんなに余裕があるんだ、とあたしは頭を抱えた途端……
「「そこのアンタら、ちょっと待ったー!!」」
高い声が響く。振り返ると、妙な2人組がいた。
一人は女。少し焼けた肌にアホ毛が生えた黒い短髪、丸っこい茶色の目。……犬みたいだ。茄子がプリントされた黒いTシャツ、ライオンワッペン付きの体操ズボンを着ている。そしてあろう事か両手には水滴の滴るアイスティーを握っていた。身長は……あたしより頭ひとつ分小さい、ってな感じか。
で、もう一人も女。青い長髪をポニーテールにしている。悪そうな笑みを浮かべて、黒い目を細めていた。
白い軍服を着ていて、腰のベルトに刀を釣り提げていた。
「……なんだよ、てめぇら」
流れであたしが聞くと、短髪の方がぴょんと跳ねた。
「お ま た せ !悪の味方、野獣沢千羽(のけもざわ せんぱ)!!」
「悪のパシリ、龍哭寺奏(りゅうこくじ かなで)!!」
続いてポニーテールが空中でバク転する。
「「2人合わせて『こういう場面で強敵として立ちはだかりたいコンビ』だ!!」」
そしてありがちな決めポーズを決めた。
「……バカだね。後その野獣沢って名字凄い可哀想」
絶望野郎が鼻で笑う。
「……愚か者め、中ボス……いや雑魚が龍と名に刻むのは失礼だ」
絶対王が首を振った。
「なんだとぉ!?お姉さんの事本気で怒らせちゃったねぇ!!」
「お前先輩になんて事……ってワイも馬鹿にされてるっ!?」
こういう場面で……長いから雑魚コンビにしよう……は、2人して馬鹿みたいな反応をした。
「雑魚特有の挑発ありがとナス!!」
「今からおみゃーら!!」
「「ぶっ飛ばす!!」」
「ぶっ飛ばされるのはどっちの方だか。クロトは手を出さなくてもいいよ」
「雑魚をいたぶるのは嫌いじゃない。ボクがやろう」
絶対王は笑って、妙なコードがついたメガホンを取り出した。
……もう割って入れる状態じゃないので眺める事にしよう、とあたしは松の木に隠れた。
「あったまきた……喰らえぇ、必殺」
「……『fire』!!」
「「ぎゃああああ!!」」
絶対王がメガホンに向かって叫ぶと、2人の服が激しく燃え始めた。
「お兄ちゃんやめちくり~!!」
「本当すいません!!許して下さい!!なんでもしますからぁぁ!!」
龍哭寺が泣きながら言うと、火が消えた。
「……今なんでもするって言ったねぇ?」
「なら答えてもらおうかな、反乱一派のリーダーの名前。ボクの言う事も『なんでも』聞いてくれそうだしね?」
絶望野郎と絶対王は、2人して腹が黒い奴特有の笑みを浮かべた。その悪魔の様な姿に、雑魚コンビは震えあがる。
「……」
流石のあたしも、哀れみの目で見る事は出来なかった。




